書庫(捧げ物2)

□子一護と二人
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一護の内なる世界、曇が多いのは一護の不安の象徴。
その雲の下、横に伸びるビルの上で斬月と朔護が一点を見つめ困惑していた。
普段から無表情で感情を露にしない斬月と、自分と一護至上主義でそれ以外などどうなっていようと眉一つ動かすのも面倒だと態度で示す朔護。
二人とも困惑する様な自体など起こる筈が無いと言っても過言では無かった、いま目の前にいる主の事以外は…。
見下ろされている一点、そこには橙色の愛らしい子どもが座り込んでキョトンと二人を見上げている。


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事の始まりは朝、何故か知り合いが集まっている開発局に一護が遊びに行ってしまった事だろう。
かなり仲の良くなったマユリの所に来て見れば見慣れた面々、首を傾げた一護に数人が片手で挨拶を
してくる。
どうやらマユリと数人の隊長が言い合っているようだ。
「どうしたんだ?」
顔馴染みの阿近に聞けばため息と共に状況説明をしてくれた。
どうやら崩玉に関する資料を開発局で集めていた所、過去に勝手に増設されたと思われる研究室(物置に近い状態だったらしいが)を見つけたらしい。
此処ならば破棄された筈の研究のデータも残っているかもしれないと、マユリが捜索権限を全面的に自分にくれるように山本の許可をとりにいった。
しかしマユリの性格では肝心なデータを全て取り出すまでにどれだけ掛かるかわからない、そう判断した山本が他の隊長数名と一緒に、と命令したがその数名が決まらず、隊長格が集まってしまった。
その上初代開発局長の個人的な研究室とあって野次馬も集まり、見物に現世メンバーが全員揃っている始末。
一通りの説明を受けて一護は今日は別のところに行くかと背を向けようとして…誰かとぶつかってしまう。
「うわっ」
「ああッ!!!!」
ガシャッッ!!!
ぶつかった拍子に相手の持っていたフラスコの中身が一護に掛かる。
余りにも大きい悲鳴に全員が振り返り…固まった。
「…?」
液体が瞬時に煙に変わり、それが晴れた所には鮮やかな橙色の髪の、幼い子供が立っていたのだ。
大きな瞳をパチクリとさせて、子供は目の前にいる大人たちを見つめた。
『マジかよ…』
子供の内から響く声、声は一護以外には聞えなかったがほぼ全員が心中でハモったのは間違いない。
幼子は声の主を探して周りをキョロキョロと見渡すが、見知らぬ大人ばかりで声の主は見当たらない。
声の主は子供の内、つまり朔護が漏らした呟きで、子供は間違いなく一護だった。
見知らぬ大人、しかも囲まれていて心細くなった一護は途端にその大きい琥珀の瞳を潤ませる。
「「「「「〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!!!!」」」」」
殺人的な可愛さに大半が鼻を押さえ悶絶している。
『とりあえず』
『逃げるべきだな』
この状況には驚いたが自分達にとっては主が第一、混乱しつつもとるべき行動を決め行動に移る。
「一護」
「……?」
「「「「「あッ!!!!」」」」」
瞬時に姿を現した斬月に一時泣く事を止めた一護を迷う事無く抱きかかえ瞬歩かくやというスピードでその場を離れる。
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