書庫(捧げ物3)

□雨のち凪のち暴風雨
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一護が特例として入隊してから数年。
やちる程だった背は冬獅朗と並ぶまで伸び、隊長達に教わった鬼道や剣術は既に隊長格並と言われる程。
三席として一護は絶大な実力と人気を誇る九番隊のマスコット的存在となっていた。
「一護さん!」
「何?」
今日とて仕事で歩いていた一護は呼び止められ、時間は無いかと尋ねられる。
「届けた後でなら手合いに付き合うくらいは出来るけど、どうかしたのか?」
書類を持ったまま首を傾げれば、相手はそれならばと諦めて引き返していく。
大した用件ではなかったのだろうと一護もそれ以上は考えず、仕事へと意識を切り替えて再び歩き始めた。
それを遠くで眺めていた数人が、苦々しげに一護を見送る。
「年上のお誘いにも格下なら願い下げか?」
「いいご身分だな、隊長達に気に入られているからと高をくくってるんだろ」
「学院にも通えない餓鬼が」
一護には圧倒的な人気があるが、一方でよく思わない少数派がいた。
流魂街出身の者達は一気に三席まで上り詰め隊長達に寵愛されている事への僻みや妬みを持ち、貴族の者達は学院にも行っていない子供だと嘲りその人望を羨んだ。
一護は普段から霊圧の制御装置を付けており、それは阿近の作った紐状の目立たないブレスレット型。
その上、周りの者を気遣い霊圧を調節している一護。
故に隊長達や手合いをした事のある者達、それを見た事のある数人だけが一護の実力を知っていた。
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