書庫(捧げ物3)

□勇ましき姫君=麗しき剣士?
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現世へと帰還し、平穏な日々に仮面の軍勢という乱入者が入ってきた。
「折角、護廷には誤魔化しきったってのに」
また変なのが、と一護は風呂に入りながらも溜息をつく。
護廷での戦闘で数度、夜一や花太郎に手当てを受けた一護。
その時には何とか斬月と朔護の力で隠し切ったが、現世派遣の死神に加え平子達まで警戒しなければいけない。
「マジ面倒臭ェ……」
はぁ、と溜息をつきながら湯船から出た一護。
その胸は豊満で形の良い膨らみがあり、体全体も普段よりは丸みを帯びていて何より鮮やかな橙の髪は腰の辺りまで伸びている。
一護が極少数の人間以外に隠している事実、それは一護が本来女という事だった。
「あ〜〜、お姉ちゃんお風呂一緒に入ろうって言ったのに!!」
「一姉、私も一緒に入りたかったんだけど」
ガラリと風呂場から脱衣所に移動した一護の目の前に飛び込んでくる遊子と夏梨、二人とも自分が濡れるのも構わず一護の細い腰に抱きつく。
「そろそろ一人で入れって言ってるだろ?それにそんな大声で呼ぶなよ;」
呆れを含んだ声音で注意しつつ、髪を拭き始める一護。
それに頬を膨らませつつも、二人は離れて自分の服を脱ぎ始めた。
「他の場所で口を滑らすようなドジは踏まないって。それより一姉、最近騒がしいけど大丈夫?」
「あ〜…、まぁ何とか。俺は大丈夫だからお前らもちゃんと気をつけてくれよ、俺の事だけじゃなくて虚の方」
「うん、お姉ちゃんに心配かけるようなことはしないもん!」
長い髪をタオルで高く括り、一護は軽くパジャマにしているシャツを着て出て行く。
男用のトランクスとシャツだけで出てきた一護に大仰に鼻を押さえつつリアクションする一心、それに呆れる一護の胸へとコンが飛びついた。
「これこそ俺の求めていたモノだ〜〜〜〜vvvvvv!!!」
「…毎日飽き無ェな、お前;」
高速で顔を胸に頬擦りしながら言うコンに、一護はやれやれと頭を撫でてやる。
部屋に住んでて隠す事の無理なコンには一護が女である事は教えてあり、ルキア達にも隠す事を条件に一護の部屋にいる事を許していた。
「んで、娘の風呂上りの姿に何時まで鼻を押さえてんだ手前ェは」
胸に張り付いているコンをそのままに、呆れた視線を投げかける一護に一心も頭を掻きつつ立ち上がる。
「日に日に成長するんだ、もう少し位服に気を使ったらどうだ?」
「んな事したら性別がバレるだろ、この状態なら誰か来ても直ぐに体つきだけ男に戻せばいいし」
髪を拭き始めた一護とやりとりする一心、体を乾かす間はどうしても女の体のままになってしまう一護にとってそれ以外は男で統一していた。
「そりゃ、まぁそうだが…」
「それより、何処まで絡んでんだ。仮面の軍勢」
言葉に詰まる一心に不意に真剣な眼差しを向け、一護は厳しい声音で問う。
「……さぁなぁ、俺も浦原と繋がってはいるが全部知っている訳じゃねェんだ」
あいつらも犠牲者だって事は聞いたけどな、と一心は呟いた。
「そっか…まぁいいや、適当にあしらう」
お休み、そう残して一護は自室へと引き返した。
程ほどに乾いた髪と体を確認し、一護はコンを引き離すとシャツを脱ぎサラシを巻いて髪も頭へと巻きつけてしまう。
きつく巻かれたサラシのお陰で平たくなった胸と頭に鬼道を掛け、一護は男の体へと変わった。
「…やっぱ胸邪魔」
年々大きくなる己の胸恨みつつ、男の体になった苦しさに慣れようと息を吐きながらも眠りにつく。
『一心も使え無ェな』
『ほとんど何もわからないままか』
やれやれと溜息をつく朔護と斬月、それに苦笑を返して一護は二人に夜の事を任せた。
コンの手前親子として話していたが、一心と一護の血は繋がっていない。
一護は王族の娘であり、高い霊圧ゆえに他の霊王の後継者達に狙われ実の親が殺された。
その一護の両親は前もって危険を察知し友人であった一心と真咲に一護を託していた、その為一護は性別を偽り霊圧を封じて生きていたのだ。


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次の日、現世の友人の中で唯一事実を知っているたつきと話していると平子達と遭遇した。
一先ずたつきと別れると、一護は平子を睨みつける。
「何の用だ」
「言ったやろ、俺らはしつこいって」
「アタシらの所に来ぃ、一護」
厳しく睨む一護に平然と返す平子とひよ里。
「何してやがる」
「一護から離れろ」
そこに現れたのは冬獅朗と恋次、話がややこしくなると一護は額を押さえた。
「話してただけだ、そうカリカリすんなよ; 平子たちも、俺はちゃんと断ったぜ」
じゃぁな、そう一護はいち早くその場を離れる。
「まだ話は終わってないで!!」
「手前らの話は終わっただろ!おい一護、俺らから何で逃げるんだよ!!」
「お前ら全員しつこいからに決まってるだろ!!!」
全力で走りつつも何とか振りきろうとする一護、しかし追って来る四人との差は縮まらず距離も開かない。
「一護さ〜〜ん!!何してるんですか〜?」
「何でお前まで来るんだよ?!」
「面白そうですからv」
「ッいっぺん死んどけお前!!」
ヒョイと横を並走し始めた浦原にキレながらも一護は走る事は止めなかった。
その上、夜一やルキア達も加わり一護は苛立ち始める。
(……斬月、朔護、頼めるか?)
『無論だ』
『りょーかい、我らが姫なる主君』
ムカつきがピークに達した一護は最終手段として内なる二人に言葉を掛け、頼み込んだ。
曲がり角で一瞬だけ追ってくる者達の視線から外れると、一護の姿は結界により消え代わりに朔護が一護の姿でスピードを上げて走り出す。
一瞬で行われた入れ替わりに霊圧の変化もなく、追手は気付く事なく朔護の方を追っていった。
「…後は頼んだ、暴れてくれるなよ」
人間の姿のままかなりのスピードを出せる朔護に向けて呟くと、一護は避難の為に先ほど分かれた幼馴染の家へと急ぐ。
数分後、見事に全員を撒いてきた朔護に内に戻ってもらい一護は一息ついた。

まだまだこの騒がしい日々の先は長い。


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数日後、一護は破面の襲撃に会い深手を負った。
しかし相手の撤退には少しばかり疑問を抱いた一護だったが、内なる二人に口を揃えて気にする事ではないと言われ考えるのを止めている。
ただそれ以上に厄介なのが、浦原の事だった。
(勘付かれたよな、多分;)
治療しながら一瞬だけ眉を顰めた浦原に冷や汗をかきつつも気付かない振りをした一護だったのだが、なんらかの引っ掛かりを覚えた浦原が何かしないとはいえない。
『一応俺らも気をつけるけどちゃんと警戒しとけよ、一護』
『その方が良いだろうな、奴は抜け目が無い』
(…そうだな)
相棒二人の忠告に素直に頷き、一護はベットに体を沈めた。


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翌日、妙にそわそわしているルキアに呼ばれたが丁重に断ると帰りを急ぐ一護。
(嫌な予感がしやがる;)
『もう策を練ったか』
『その無駄な労力を藍染の対抗策に費やせっての、あンのボケ帽子(怒)』
次々と現れる死神達の態度に違和感が多く、どれも一護をどこかへと誘うもの。
それをかわしながらもどうするか考える一護だったが、不意に悪寒が走り咄嗟にその場からバックステップで離れた。
「流石じゃのぅ、一護」
「いきなり何だよ、夜一さん;」
白打もかくやという打撃を浴びせ様とした猫姿の夜一、余りの躊躇い無い一撃に一護の背筋に嫌な汗が流れる。
対し夜一は笑うばかりで、漸く笑いを収めると口を開いた。
「一護、お前に何か術式が掛かっている疑いがあるのじゃ。万一藍染に掛けられたモノでは困る、検査を受けるんじゃ一護」
「そーだぜ、浦原さんの検査ってのは落ち着かないだろうけど受けとけよ」
「…何かあったら困る、腕は確かなんだろ?」
「そうだぞ一護!!浦原の奴は変態だが技術力はあるはずだ!」
「黒崎君…」
「…ム」
「………;;」
総出で迫ってくる面々にどうすべきか一護が言葉に詰まる。
(誤魔化しきれると思うか…?)
『徹底的に検査されたら無理、此処で逃げ切れ』
『…この際、一心の事だけバラせばそれで済むかもしれんが』
(その案のった!!)
『主に同じ、俺が呼んでくるから何とか検査は免れとけよ』
内心で冷や汗をかいていた一護にそれぞれ言う朔護と斬月、斬月の言葉に同意を示すと瞬間的に結界を張ってバレずに朔護が走っていった。
「…浦原さんの所まで行けばいいんだろ、行けば」
でも夜一さんと浦原さん知ってただろ、と呟きつつも一護はゆっくりと歩を進める。
呟かれた言葉に繭を顰める夜一、しかし素直に浦原商店に向かう一護に何も言わない。
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