書庫(捧げ物3)

□子猫就学中(作成中)
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とにかく可愛らしい、第一印象はその一言に尽きた。
時折、流魂街の外れには虚が出る。
しかし此処のところ反応が出た途端に消えるのだと幼馴染から夜一は聞いていた。
幼馴染で開発局の局長である浦原は最初故障かとも思ったらしいのだが、現地を調べると痕跡は残っているらしい。
誰かたまたま近くにいて始末したのだろうか、その程度しか二人は考えていなかったのだが興味本位で夜一は流魂街に散歩に出かけた。
暇な日が続いている事もあり、仕事を抜け出すこと数回。
今日も外れかと思いつつオヤツの事を考えていた夜一の眼にそれは映った。
年齢は二桁に届くかどうか、その子供は酷く愛らしい容姿と輝かんばかりの橙色の髪を揺らし歩いている。
(ッなんと愛らしい童じゃ!!//////)
らしくもなく顔を赤く染め、夜一は足を止めてその子供を凝視した。
見ればその子供の着物は余り良いモノとは言えず、膝の辺りまでボロボロになって細く白い足が覗く。
手に持たれた刀は身を守る為だろう事が伺え、手に持ったままテトテトと夜一の前を横切って行った。
かなり距離が離れている事もあり子供は夜一に気付いていない、それを良い事に夜一は気配を消し子供の後を尾行し始める。
子供は何の迷いも無く森を進んで行き、その身軽な身のこなしに思わず夜一は感心した。
手馴れた様子で果物や食べられる野草を集める子供。
やがて背の高い木の上に落ち着くと収穫した物を洞に隠し果実を一つ齧り始めた。
まるでドングリを隠すリスや小鳥の様だと笑いを抑えつつ観察する夜一、両手で果物を待つ姿に癒されつつも尾行を止めない。
やがて果実を食べ終わると皮や芯の部分を木の根の部分に埋めて川で手を洗う子供。
ついでに喉を潤すとまた移動を始めた。
今度は何処へ行くのだろうか、そう逸る気持ちを抑えつつも夜一は尾行を続ける。
と、子供は不意に動きを止めて辺りを見回し彼方を見遣った。
表情を険しくして驚異的な速さでその方角へ走っていく子供。
子供が走って行く方向には虚の霊圧があり、夜一は慌てて子供を追いかけた。
幾ら出遅れたとはいえ夜一は護廷隊の中で最も速いと謳われる瞬神、直ぐに追いつく事は出来たが再び眼にした子供の姿に驚愕し瞬間的に虚を意識の外に出してしまう。
夜一が子供に追いつく刹那、子供は刀を鞘から引き抜くと同時に死神化し、共に姿を変えた大刀を持って更にスピードを上げたのだった。
しかも夜一が驚愕している間に虚を両断し、刀も己も元の姿に戻してしまっている。
消えいく虚を眺める子供の姿は凛としていて、幼いながらも戦士たる気迫を備えていた。
驚愕にその場で立ち尽くす夜一、その姿に気付いたのか子供が夜一をみる。
「死神…?」
刀を持たない夜一に首を傾げて呟く子供。
どうしようか、とやや困った様な表情で夜一をみつめた。
「ッき…!!」
「 木?」
「気に入ったぞ童!!!ワシの子供になれ!!!!」
「…… は??」
突然手を握ってきた夜一に眼をパチクリさせると、子供は首を傾げる。
「名は何と言う?!わしは四楓院夜一といっての、死神をしておるが主も相当の実力者じゃな気に入った。養子となってくれれば直ぐに入隊させ席官に据えてやるがどうじゃ?!」
「へ?あ〜……うん?」
猫の様な瞳を見開き矢継ぎ早に捲くし立てる夜一に、子供は只々瞬きを繰り返すばかり。
余りの気迫に圧されて思わず疑問符を付けたまま頷いてしまう。
「よぅし、そうと決まれば山本に直訴じゃ!!」
「ちょっ、待っッうわぁ!!!」
ヒョイと子供を脇に抱えて疾走し始めた夜一、疾駆しているスピードに驚いた子供が思わず動きを止めたのを良い事に更に加速して一番隊隊舎を目指した。
「山本!!!この子をわしの子供にするから入隊を許可せんか!!!!」
「……随分とまぁ愛らしい童じゃな、どこから攫って来たかは知らんが一度降ろしてやってはどうじゃな?」
執務室のドアを蹴破る勢いで突入してきた夜一に子どもを突きつけられ、一先ず色々と突っ込むのを後回しにした山本が指摘する。
その言葉で一旦落ち着いた夜一も子供をソファに降ろし、まだ余韻でクラクラしているらしい子供の隣に自らも座った。
「それでどこから攫ってきおったのじゃ四楓
院」
「攫うとは人聞きの悪い、先に本人に養子になってくれる事を快諾させてあるわ」
話を元に戻した山本にフンと鼻を鳴らすと夜一が胸を張る。
しかし山本が子供に視線を向けると、なんとも言い難そうな顔と眼が合った。
「…ちゃんと承諾を得ていないようじゃの;」
「う〜〜ん…、返事、しちゃったって言えばしちゃったけどさ……」
言いたい事がわかったのか微妙な表情をする山本に子供も苦笑いする。
「頷きはしたろうが、撤回は認めんぞ」
「無茶を言うでないわ四楓院、そもそも主の押しに勝てる輩など数える程しかおらんのじゃぞ」
「つーか死神になれ云々は突っ込みなしか爺さん;」
承諾したかしないかの口論をする二人に突っ込む子供、呆れかえっているその口調に顔を見合わせると二人は笑い出した。
「まあ入隊自体は実力を見てからと思うての」
「童の実力なら席官は固いからのぅ」
容赦なく突っ込む度胸のある子供に内心で感心しつつ髭を撫でる山本、その目の前でしたり顔の夜一も当然と笑う。
「……童じゃない、黒崎一護だ。 それと俺は剣術しか使えないから出来ればいきなり入隊は遠慮したい」
色々と諦めたのか名前を名乗って一応の意思表明をする一護。
そういえば名がまだだったと笑う夜一に山本共々呆れの視線を向けた。
「では中央霊術院への編入許可という事で構わんかな?」
「死神の学校だっけか、その方が俺は良いかな」
軽く話しを進めて行く一護と山本、その横で夜一も口を開く。
「まあ良かろう。しかし山本、一護は先ほど雑魚とはいえ虚を一撃で両断しおったぞ?」
「なんじゃと?」
「だから即入隊許可を出せと言うたのじゃ。一護自身の希望とあらば仕方ない暫く待つが、席官クラスとみて間違いないからこそ家ではなく此処に連れてきたものを」
夜一は言葉をすぐさま聞き返してきた山本へ聊か不機嫌そうに返した。
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