書庫2

□記憶は遠く、鮮明に
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隊首会、それに集う面々は最早馴染み。
その中で特に仲が良いのは浮竹と京楽だ、他の面々が互いに距離を保つのを他所に二人は顔を合わせると並んで歩きつつ喋った。
「ねぇ浮竹、この前も思ったんだけど一護さんって不思議な人だよねぇ?」
最近はもっぱら謎が多い一護の事、今日も広間に向かいながら二人で話す。
「浮竹君の所の副隊長もお世話になったそうだけど、どうなんだい?」
その会話に紛れ込んだのはいつも通り笑みを湛えた藍染。
「小さい頃からあのままだったと聞いたが…」
「朽木君の曾お祖父さんってのには驚いたけどねぇ」
「それが兄らと何の関係がある」
最近発覚した事実に京楽が笑えば、不機嫌そうな声で白哉が割って入ってくる。
「驚いたって話しだよ、そんな怒らなくたっていいじゃないか」
肩を竦めておどける京楽に白哉が眉根を寄せるが藍染と浮竹は半笑いだ。
丁度広間にも着き、それぞれの位置へと立つ。
「では、これより隊首会を執り行う」
定期的なそれにうんざりとした顔をする者数名、しかしほとんどの者は表情に出さず佇んでいる。
「なぁ総隊長はん、大体決まってる事の確認作業なんやし、少し割愛していただけまへん?」
「…では市丸、貴様は何を言いたいのじゃな?」
会の半場ほどで中断させて何をしたいのかと、全員の視線が市丸に集まる。
「一護はんの事、同期やから総隊長はんならよう知ってはる思うて。あない元気で強いお人が何で引退したか気になってしゃあないねん、ボク」
いつもの飄々とした、しかし真剣な問いに今度は全員の目が山本へと向いた。
「主ら、知らんかったか」
あくまで確認として問い返す山本、全員が頷く。
「世代が移り変わるのは当然だっつてたがな」
どこか遠くを見て、剣八が呟く。
「身体の具合ですか?山田七席が心配していましたが…」
元々あった気がかりを口にする卯ノ花。
「ふむ…まぁ話しても良かろう、文献にも正式記録として残っておる事だろうしの……」
それぞれの言葉に頷き、山本が懐かしむような、どこか悲しげな口調で話を始めた。
「奴はな、それこそ今よりもずっと、強大な力を持っておった。今の主らが卍解で全員で挑んで、ようやっと対等という程のな…」


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『なんだあのデカさは!!!!』
『速い!!早く救援をッああ!!!』
血に染まる戦場、まだ死神達の力が隊長格ですらメノス相手に梃子摺っていた時代。
その中でも、アジェーカスクラスが時折現れた為に被害は甚大だった。
『重國、悪いが結界頼むぜ』
俺、鬼道使えないの知ってるだろ?そう言って戦場には不釣合いな明るい笑みを見せると、一護は地獄絵図の只中へと突っ込んでいく。
『死傷者を急ぎ運べ!!、あとは奴とワシで片付ける!』
一護が作った一線で、若き山本は指示を飛ばし結界で味方が逃げていくのを待つ。
ギリアン十数体、アジェーカス数体の大軍勢。
それを瞬く間に消していく一護、アジェーカス数体を残し斬月でなぎ払い終わっている。
味方の撤退も終わり、山本も一護の傍へと瞬歩で移動した。
『一気に片付けるぜ!』
『当然だ!!』
同時に卍解して正面の敵を蹴散らす二人。
漆黒の刃と輝く橙の髪、そして煌々と煌く炎。
然程掛からずアジェーカスを掃滅してしまう。
『…今日も多くの同胞が死んだな、重國』
帰還し、報告書を纏める傍らで一護が呟く。
酷く辛そうなそれは、気丈にも悲しみを伝えるだけで怯えなどの弱音は一切含まれていなかった。
『余りに未熟なままに戦場へ赴く者が多すぎるんだ、訓練さえ積めれば…今はその暇すら惜しまれている。もっと、組織として整えれるだけの兵力が要るんだ。現世でいう学校を作れれば…!!』
山本は静かに吐き出した、今までの思いと、己の考えを。
『なら、お前が作れよ重國!このままじゃ何時か死神が死に絶える、その前に力をつける場所を作れば今は弱い護廷だって強くなる!!』
楽しげに、一護は山本の方を向いて一護は提案した。
『しかしその間護廷はどうする?!一人でも戦力を減らさぬようにと上は躍起になっておるのだぞ?』
只でさえ厳しい現状だ、簡単に許してくれる筈も無いと山本が困惑する。
『お前の分まで俺が働いてやる、重國。体力と霊圧だけが俺の取り柄だ』
これ以上無駄な死を積み上げる訳にはいかない、それは二人が常に思っていた事。
だから二人は、その日からそれぞれに動いた。
働きながら、同志を募った。
多くの仲間の賛同を得て、構想を練った。
死神になる為に必要な事をまとめ、今までは我流や口伝だった鬼道を集めて回った。


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