書庫(捧げ物)

□初めての誓い
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「我、黒崎朔護は黒崎一護隊長に永遠の忠誠を誓う」
跪き、恭しく手を取って甲に口付ける。
口付けられた一護は、頬を紅潮させつつもじっとして朔護が手を離すのを待ち、離したのを見てから踵を返した。

「まったく、何度やりゃ気が済むんだ…」
「何度でも誓うさ、お前が俺の忠誠を疑わなくなるまで、な」
「お前のそれは忠誠じゃねェだろ!!!」
怒って執務室から出て行く一護。
さっきの誓いは、一護と執務室に戻ってくる途中の廊下でされたモノ。
一護は部屋に戻るなり文句を言ったのは、話の流れからいきなり跪く朔護に呆れた為、だった。
朔護は何故かよく一護の前に跪く、他の者に見せ付けるように。
一護は他の者に跪かれるのを嫌い、儀礼以外ではさせない。その為、見せ付けるには丁度良いといえば丁度良い。その上、朔護が跪くのは一護と、一護と共にいる時の儀礼のみだから意味合いも深い。

(いつからだっけか…)
『跪いて周りに見せ付ける事か?』
(ああ)
己の相棒、白牙に答えつつも記憶を辿る朔護。



「何しやがる!!!」
広場に響く子供特有の高い声
「別に?邪魔だったから、なぁ」
「「「ああ、邪魔したそいつらが悪い」」」
少し背の高い、いかにも悪餓鬼が言うと、後ろの餓鬼共も賛同する。
「うるせェ!こいつらが先にいたんだろうが!!」
先に怒鳴った、鮮やかなオレンジ色の子供が後ろの幼い子供を庇いつつ喧嘩腰になる。
どうやら先に広場で遊んでいた子供達を餓鬼共が殴って追い出したらしい。
「黙れ!!俺達は貴族!特別なんだ!!」
「「「そうだ!!さっさとどけ!!」」」
好き勝手に言う貴族の餓鬼共。
「だからなんだ!!そんなの理由になんてなんねェ!」
その餓鬼共に怒鳴り返す子供。
「一護!そんな奴らほっといて一緒に来い!お前も一応貴族だろ!!」
リーダー格らしい餓鬼が嫌らしい笑みで、今まで怒鳴り返していた子供…一護を呼ぶ。
「だからそんなのカンケー無いって;」
いい加減に怒鳴るのに疲れた一護。
「なら、俺達が勝ったら従え!!」
そう無茶苦茶な事を言いつつ殴りかかってくる4人。
「メンド」
そう一言言い捨てると、4人を相手にし始めた。

「二度とくだらねぇ事やんなよ〜」
「「「「うわ〜ん!!!」」」」
幾つか傷を負っただけで全員を倒した一護が、泣いて逃げる奴らに言いつつ自分も家へと向かった。

「どうしたんだ?一護」
家で軽く手当てをしていた一護に、後ろから声がかかる。
「あ、お帰り朔護。いつもの奴ら、今日は俺だけだから仕掛けてきた」
簡単に話す一護。
「ふん、いつも戦わねェからなめられたんだよ」
不機嫌になる朔護。

次の日、昨日の奴らがまた来た、しかも、貴族仲間を引き連れて。
「今度は負けねェ!!」
「…;」
一護はもう呆れて何も言わない。
「朔護がいねェと腑抜けだな」
朔護に負けっぱなしの奴らが笑う。
普段の喧嘩は全て朔護が買い、圧勝していて、それを一護は常に見ていたからだった。
「さっさと終わらせたいから早く来い」
どうでも良さげに一護は言った。
「「「「「な!!!」」」」」
餓鬼共は簡単に挑発に乗り、殴りかかってくるが、やはり軽く負けた。
「な、いつもは朔護の影に隠れてるくせに!!!」
負けを認め無いように言う餓鬼。
「隠れてねェ」
と、横から蹴りが飛んできた。
「なにしてんだ;朔護」
来たのは朔護だった。
「コイツは俺より強ェー、戦った事が無かったくせに好き勝手いってんじゃねェよ!」
言いつつまた蹴る朔護。
「おい;いい加減やめろ;」
流石に止める一護。
「今回はたまたま負けただけだ!!」
最初(昨日)喧嘩を売ってきた奴が言う。
「俺にも勝った事ねぇくせに…」
「お前より強いなんてわかんねえだろ!!」
諦め悪く言ってきたその言葉に、朔護は少し考え、一護の前に立った。
「? 朔護?」
訝しがる一護を余所に朔護は
「これなら分かるだろ」
と口の端を上げ、跪いた
「おい?!」
慌てる一護を無視して朔護は口を開く。
「我、黒崎朔護は黒崎一護に永遠の忠誠を誓う」
そう言って一護の手を取り口付けた。
「「「「「な!!!!」」」」
「俺は俺より下の奴に跪くようなことはしねェ、つまりコイツは俺より上だ」
驚く周りをよそにそう言って、
「わかったな」
と、まだ驚いている一護を連れて行ってしまった。
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