宝物庫

□恐怖(うしおととら)
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 とらが何処かへ出かけており、うしおは久々に一人でぼんやりしていた。

 日が暮れ始めると、とらの帰りを持ちわびるかのようにうしおは鳥居の前で座った。

「とらぁ……」

 空を見上げ、今か今かと待っていると、いきなり獣の槍が鳴りだした。

 慌てて獣の槍を手に取り戦闘態勢に入るうしお。静かに周りの気配を探る。

 風の音。木々のざわめき。鳥の鳴き声。遠くから聞こえる人の声。

 獣の槍を使い、研ぎ澄まされたうしおの五感が様々な音を聞きく。その中で、一つだけ不自然な音を聞
いた。

 風もないのに揺れる茂みの音。

 斜め後方の茂みに妖怪の気配を感じたうしおは、そこへ向かって獣の槍を突き出す。

 それでしとめられるはずであった。敵が『赤い布』を持ってさえいなければ。

「なっ!」

 獣の槍に絡みつくそれは、以前キリオが使ったものと同じ布で、獣の槍を封じた。

 重くなった獣の槍にうしおが気をとられていると、敵の妖怪はうしおの首に手刀を振り下ろした。

「………!」

 うしおはぼやけた妖怪を視界に捕らえ、そのまま気を失った。

「これが獣の槍の少年か……」

 思った以上に簡単に倒せたことに、少なからずその妖怪は驚いていた。

 妖怪はうしおを肩に担ぐとゆっくりとした歩幅でその場を去っていく。

「あなた一人を倒しても面白くないですからね」

 不気味な笑みを浮かべた妖怪はとらに居場所がわかるように妖気を振りまきながらねぐらへ帰っていった。
  
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