宝物庫
□輝く橙色の光
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輝く橙色の光
すべてはこの一言から始まった。
「暇っスねぇ、夜一サン」
瀞霊廷の一角、双極の丘地下にある巨大な練習場。
そこに、十二番隊長、浦原喜助と隠密機動総司令官、四楓院夜一はいた。
二人とも、この時間にここにいることはありえない人物なのだが…。
二人にはそんなこと、まったく関係ない。
「喜助……おぬしが暇なわけないではないか。今頃あの気味の悪い副隊長がそなたを探しておるぞ」
「夜一サン、失礼っスよ……。やることが無いんじゃなくて、やりたいことがないんスよ。私は。」
「仕方のないやつじゃのう。そなたの副官の苦労が目に見える」
ここで一緒にサボっている夜一も、人のことをあまり言えないだろう…と浦原は思ったが、あえて口にはださない。
しばらく二人で話していたが、飽きてきたのか、だんだん口数も減っていく。
と、そのとき寝転がっていた浦原が、突然起き上がる。
驚いた夜一が問う。
浦原の答えは単純明快だった。
「現世いきましょう、夜一サン!!」
呆然としていた夜一は、半ば浦原に引きずられる形で穿界門をくぐったのだった。
その頃の瀞霊廷はといと…………
「まったく、どこに行ったのカネ!?あの変態腹黒隊長は……見つけたらミンチにして、実験用の餌ダヨ!!」
「夜一様〜!!どこへ行ってしまわれたのだろう…まさか、また浦原喜助と…許せん!夜一様に近づく不届き者め!雀蜂で塵にしてくれる!!」
いつものように賑やかな瀞霊廷であった。
浦原と夜一は、現世、空座町に来ていた。ちゃっかり義骸着用済み。
「さぁて、どこ行きましょうかねぇ。久しぶりの現世っスし」
「いろいろ見て周りたいのじゃがのう……喜助、見てみい」
そう言って夜一が差し出したのは伝令神機。
「虚っスかぁ。最悪のタイミングっスね」
浦原は忌々しげに伝令神機を睨む。だが、仕事なのだから仕方がない。
二人は仕方なしに、虚退治へ向かう。
伝令神機が指し示す場所へ行ってみるが、そこには何もいなかった。
しかし、こちらの様子を伺っている気配を感じる。恐らく、この虚はかなり魂魄を喰った虚なのだろう。並の虚とは格が違う。
始めは虚のほうからでてくるのを待っていた二人だが、まったく現れる
素振りを見せない敵に、夜一が切れた。
「ええい、さっさと出てこんかい!こっちは、久しぶりの現世なのじゃ。
早く片付けたいというに…!」
半分以上八つ当たりで、夜一が霊圧を上げる。その霊圧に釣られて、
ようやく虚が姿を現す。
「ようやっと出てきおったか。喜助、そなたはさがっておれ、これは儂の獲物じゃ。儂を待たせたこと、後悔させてくれる…!!」
浦原は夜一の迫力に思わず一歩さがる。今の彼女に下手に関わると、
自分まで粉々にされるかもしれない……背中に冷や汗が垂れる。
夜一が攻撃の構えをとる。そして、まさに攻撃を仕掛けようとした、その時。
夜一と浦原の視界に、鮮やかな橙色。その色が消えたと同時に、虚の姿が
消える。何がおきたか、わからなかった。
「どうゆう……ことじゃ……!?」
呟くと同時に、背後から感じる、圧倒的な霊圧。あまりに強大なそれに、
二人の全身から汗が吹き出る。
振り向いた二人の視線の先には………………………子供。
「子供………じゃと……!?」
ありえない。この巨大な霊圧が、こんな小さな――3〜4歳の子供から
発せられているというのか。
しかも、子供の背にあるもの……あれは、斬魄刀ではないのか。
子供は明らかに死覇装と思われる着物を着ている。
背に背負った不釣合いなほどの大きさの刀。
瞳は光を放つ茶色。
そして髪は…………鮮やかなオレンジ。
唖然としている二人をよそに子供は、唐突に口を開く。
「お兄ちゃん達……死神??」
なぜこの子供は、死神のことを知っている??さっきのあの虚……
あのレベルの虚を一撃で倒したのか、この子供が。
夜一より早く立ち直った浦原は、震えを押し殺しながら、子供に聞く。
「さっきの虚………君が倒したんスか……?」
子供は事もなげに頷く。
「それが………どうかしたの???」
僅かに首を傾げる仕草は、これ以上ないほどに愛らしい。
こんな状況でなければ、問答無用で抱きしめていたかもしれない。
「君は………死神?」
こくん、と小さく頷く。護廷隊に、こんな子供はいただろうか?
この霊圧と髪だ。いたなら嫌でも目立つ。
だが、この子供は見たこともない。
「君の名前は……?」
「…………くろさきいちご」