書庫(捧げ物3)

□勇ましき姫君=麗しき剣士?
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「いらっしゃい、お待ちしてましたよ一護さんv」
「今速ッ攻で逃げたいんだけどダメか夜一さん」
「…;」
店先で早々に一護の手を掴む浦原にスッパリと夜一に聞く一護。
その言葉に返す事も出来ず夜一は無言で浦原に蹴りを見舞った。
仰け反りながらも尚手を離さない浦原に一護は溜息をつき手を振り払う。
一先ず全員で店の中に入り、広い地下へと移動した。
「言っとくけど、この鬼道は俺がチビの時にかけられたモンだ。検査で解かれたら困る」
手を伸ばす浦原から何気なく避けつつも言う一護に、一同が怪訝そうな視線を投げかける。
「子供の頃…?」
「何故お前に鬼道などかけるのだ、嘘をつくな!」
「嘘ついてどうすんだよ、夜一さん達は心当たりがあるだろ」
首を傾げるルキア達の前で嘆息すると、一護は浦原と夜一を見やった。
一瞬顔を見合わせた二人だったが、入り口からの衝撃音に全員が驚いて一斉に振り向く。
「悪いな浦原、扉壊しちまった」
『間に合ったか』
(お帰り、ナイスタイミングだったぜ朔護)
ヒョイと土煙から出てきてズカズカと歩み寄ってくる一心、しかしその姿は死神で肩に羽織の名残があった。
それを余所に内へと戻ってきた朔護に礼を言うと、一護は一心と浦原達を眺める。
「…一心さん、バラしてあったんッスか」
「いんや、お前と話した夜にバレてな。ついでに言うと一発食らった」
「そーいや浦原さんにはまだだったよな、殴らせろ」
声も出ない面々の中で一人渋面で問う浦原に快活な笑みのままで答えると次いで一護が言い腕を鳴らす。
「っへ?ちょっと待ってくだッッ」
ドガッッ!!!
「あ〜、すっきりした」
「おぉ!!だいぶ飛んだな」
「「「「「…………;」」」」」
浦原が反応する前に思いっきり殴り、晴れ晴れとした表情の一護と感心している一心。
その一部始終を見ていた面々は最早口を出す事も出来ない。
「どういう事だ…?」
「現世派遣か、俺は昔護廷隊士でな。引退して現世で暮らしてガキが出来たが遺伝で霊圧が高かったんで封じた、一護に掛かってる鬼道は俺のオリジナルだからお前らにとって不思議なのは仕方ないこった」
疑問をぶつける冬獅朗にアッサリと答え、一心は全員を見回した。
「コイツは封じたままでも霊圧が抑え切れてないんだ、悪戯に解かれたら困るんで止めに来た」
わかったか、そう言うと一心は一護を伴って戻っていく。
「どう見る喜助」
「つじつまは合いますし、何より一護さんを連れていかれちゃいましたしねェ…」
上手く一護を連れ出された事に溜息をつくと、浦原はまだ呆然としたままの面々をサッサと追い出した。
面々も腑に落ちないままだが一応はそれぞれ戻って行き、その場は解散となる。

しかし、その件はそれだけで終わってはいなかった。
数日後、現世の様子を伝令神機で定期報告していた冬獅朗は思わぬ指示を受ける。
思わぬそれに眉を顰めながらも、冬獅朗は指示通り現世派遣を全員集め浦原商店で通信機を繋げてくれるよう頼んだ。
「本当はアチラさんと繋げるの嫌なんスけどねェ…」
「そういう指示なんだ、すまないが早くしてくれ」
大型のモニターを設置し調節しながらも文句を言う浦原、それを急かしつつも冬獅朗は謝る。
「しかし、死神全員に通信とは何事かの?」
首を捻る夜一は人型で壁に寄りかかり、ルキアや恋次達も不思議そうに待っていた。
冬獅朗に指示されたのは現世派遣全員を浦原商店に集め、浦原の協力を得て夜一と二人を含めた全員で護廷の指示を仰ぐ事。
なにやら重要な案件が出てきたらしく全員に指示を聞かせる必要があるとの事だった。
「繋がりましたよ」
「…モニターに異常なし、音声も問題ないようだネ」
双方の科学者の顔が互いに映り、画面越しに山本の姿が見える。
「スマンの、浦原喜助」
「そー思うならちゃんと代金をお支払い下さい、それなら文句言いませんので」
「それでなんの用じゃ、山本。ワシらまでもは珍しい」
最初に協力した浦原に山本が労いを述べると、横から夜一が先を促した。
それに一つ頷き、口を開く山本。
「実はな、上の方々が動かれてしもうた」
「「「「ッッ?!」」」」
「珍しい事もあるの、王族特務は護廷が滅びでもせん限りは動かん筈じゃが」
「ですよねェ…、何か理由でもあるんスか?」
珍しく困惑したような声で言った山本の言葉に驚愕する現世派遣のメンバー、それとは反対にどこかのんびりと二人が聞く。
「左様、藍染の事はまだ直接攻め込まれるまで手を出さんそうじゃ。動く理由は他にある……
死神代行、黒崎一護の霊圧が行方不明の王族のモノと一致したそうじゃ。捜索隊が現世に降り立ち行動するゆえ補佐せよと霊王より直々に命令が下された」
異例の事態じゃ、そう重々しく山本は締めくくった。
余りの事に全員が絶句し、部屋には沈黙が落ちる。
「ちょ、ちょっと待ってください。数日前に一護さんの親である一心さんから自分の子供だって聞いたばかりですよ?!」
「それは確かです、総隊長。俺達全員が黒崎一心から…」
「一心じゃと?!」
慌てて言う浦原とそれに同意する冬獅朗だったが、山本が驚愕したことに驚き口を噤んだ。
「ご存知、なのですか…?」
「…ああ、知っておる。護廷総隊長になる直前に王族特務へ引き抜かれ特務長になった男じゃ、主らが敵う相手ではない」
驚く冬獅朗に更に言い募ると、山本は頭を緩く振る。
「あの人、そんなに実力があったんスか;」
「一護が、王族…?」
「嘘だろ…;」
呆然と呟く浦原や恋次達、しかし山本はもう直ぐ捜索隊が其方に行くと言って通信を切ってしまった。
そしてその言葉通り、外には巨大な霊圧が十数個。
慌てて外に出た冬獅朗達の前に一小隊と思われる集団が下りてくる。
「現世派遣、日番谷隊長とお見受け致します。我らは王族特務の第三小隊、霊王様より命を受け王宮第十四宮の一護様をお迎えに上がりました」
案内を、そう慇懃に頭を下げる小隊長。
それと同時に小隊全員が霊圧を押さえ込み、ほとんど感知出来ない程になる。
一先ず霊圧を辿って、帰宅途中らしい一護を見つけ全員で向かった。
一人歩く一護を見つけてあれだと冬獅朗が示すが、その瞬間に小隊が一護を囲い鬼道を掛ける。
「ッッぐ、何ッッしやがる…!!」
「ご無礼をお許し下さい一護様、霊王様の命により捕縛させていただきます」
「ちょっと待ってくれ!!お前達は一護を探しに来たんじゃないのか?!捕縛なんて聞いてないぞ!!!」
鬼道に耐えようとする一護に益々力を込める小隊、それに冬獅朗が慌てて問うが命令だと突っ撥ねられてしまう。
「ッあ…!!!」
流石の一護も突然の鬼道には耐えられず気を失い、体の力が抜けて体が傾ぐ。
「退がれ、触るな」
ガッッと斬魄刀が小隊の一人の足元に突き刺さり、囲っていた鬼道が破られる。
その隙間に割り込み、一護の体を地面に激突する寸前で抱えると一心は小隊を睨み付けた。
バサリと一護の髪が地へと流れ、何時の間にか長い髪が一護の顔を覆い隠している。
それと同時に今まで以上に大きい霊圧が一護から溢れて、溜息をつきながら一心は一護を抱え直した。
「「「「なッ………!!!」」」」
横抱きにされた一護の胸は疑いようの無いほど豊満で、制服のボタンを外さんとばかりにその形を主張している。
状況を忘れて見蕩れる面々、しかしそのすぐ目の前では一心と小隊が睨み合いを続けていた。
「姫君をお返し下さい、元特務長一心様。霊王様は実力行使も厭うなと仰せです」
「随分と見くびられたもんだな、俺も。一度でも長の名を頂いた身だ、たかが第三小隊如きに遅れを取る気は無ェぞ」
片手で一護を支えながら斬魄刀を構える一心、ビリビリと霊圧で威嚇しながら小隊を威圧する。
それに圧倒されかけながらも退かない小隊、それぞれに刀を構えて臨戦態勢を取った。
「ん……」
「気がつかれましたか、一護様。遅れをとり申し訳ありません」
長い睫を震わせ、瞬きをした一護に今までとは打って変わって丁寧な口調で謝罪する一心。
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