宝物庫

□恐怖(うしおととら)
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 地面に叩きつけられたうしおは、目の前にいる妖怪が恐ろしかった。

 今、妖怪はうしおの身体にまたがる態勢であった。ある意味、さっきの態勢よりも嫌なもので、うしおは妖怪をどかそうと、手で必死に押した。

「うし……!」

 そんな所に、運悪くとらが現れた。

 ボタンが外れ、服がはだけ露出された肌。倒れているうしおにまたがる妖怪。それを必死に押し返しているうしお。

「てめっ……!」

 この状態を見れば、とらでなくともそういうことを連想するだろう。

「とら……!」

 とらの姿をその目に捕らえたうしおは、とらの名前を呼が、とらは答えなかった。

「おや、ようやく来ましたか。良かったですね。この子が食べられる前で」

 とらの考えを読み取り、逆上させるようなことを言う妖怪。その言葉が命取りになる。

 とらは何も言わず、妖怪を木に叩きつけた。

 ようやく自由の身になったうしおは、とらから獣の槍を渡されたが、その場から動けずにいた。

 あまりにも静かで、重く、恐ろしい殺気がとらから放たれていたから。

「……っく!」

 何とか立ち上がった妖怪の身体に爪を刺す。雷を放ち、風を呼び、爪を振るう。

 妖怪の黒い毛皮が心なしか血で赤く染まっていた。

 そんな様子を、うしおは少し離れた所で見ているしかできなかった。はじめて見るとらの姿に、立って
いることさえできなくて、その場に座り込んでいた。

 黙ったまま妖怪を攻撃するとら。いつしか妖怪は姿を消していた。グチャグチャに磨り潰したら妖怪は
死ぬと言っていたとらの言葉に間違いはなかったのだろう。

「……………」
  
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