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□黒板に書かれた相愛傘
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季節は巡りに巡り、俺とゆらが出逢ってから三年の年数が過ぎた。


けれども俺の隣にゆらはいない。
何故ならアイツは実家のある京都にいるからだ。




預けて修理をお願いした愛刀を届けに来るときに会えると思ってたのに。

やって来たのは、いけ好かないゆらの兄竜二で。

「…あ、届けてくれてありがとうございます。その……ゆらは…」

「あ゛?何でてめぇがゆらを呼び捨てにしてんだよ。第一…」

「ははは…」

竜二のウザったらしい話を苦笑しつつも聞く昼の俺は凄いと感心するが、ちったあ夜の俺も見習ってほしい。
あの強気で任侠な性格の夜を…


が次に竜二が発する言葉は夜の俺も 苦笑というか強気になれなくなっただろう


「……言っとくがなゆらは二十八代目花開院秀元を正式に継ぎやがった。
だからアイツはもう誰かが他に継がねえとあの地を離れられねぇよ。」


それだけ言い、竜二は帰って行った。

俺はその場に立ちすくすくことしかできなかった







その後、俺は先生からゆらは京都に戻ったと知らせをうけ、竜二のあの言葉は真実だったのだ、と改めて実感した。





*********



そして何度目かの春。巷では別れが訪れる。



昨日、三年生の卒業式があった。
今日、この一年間過ごした教室を卒業する終了式があった。


「……いい加減に俺も卒業してもいいかな」

ぽつりと呟き向かったのは、

先程クラスの奴が綺麗にしていた黒板の前。



「…でも最後くらいいいよな」


チョークを手に取り、古いし、恥ずかしいと思い書かなかった物をすらすらと書いていく。

今まで躊躇していた自分が阿呆らしい。



「……できた」


白いチョークで書いたソレは緑色をした黒板によく映える。

出来上がりが良く(自分が思っているだけだが)自らの想いを全て注いだのがよくわかるものだと思った。


「…こんくらいの出来映えなら何も悔いは残らないな…」


消そうと思い黒板消しを取ろうとするが何故か手に取ることができなくて。

そんなに未練があるんだと自分を恥じ、なかなか進まない自分の手に呆れ、黒板はそのままにし学校をでた。





学校を出て数十分、俺は誰も知らないであろう桜の木の下にいた。
この桜は中一の頃、ゆらと行こうと約束したっきりこれなかった場所。


桜の木をぼんやりと眺めていると誰かがくる気配がする


―誰だ…?



次の瞬間、俺の目には女が映る。


「!!奴良くん!!」


「えっ!!?ま、まさか……」


(リクオくん知ってる?
誰もいない教室でね、黒板に今どうしても逢いたくて逢いたくて逢いたくて、どうしようもなく好きな人と結ばれたいと願う時はね、)


(綺麗な黒板に相合い傘を書くといいんだって)


(そしたらね、逢えるらしいよ、好きな人に)





逢いたいと願ったのは先程迄の誓いを尽く貫き通したくなかった訳で。




(ゆら…っ!!!なんであの土地離れなられないんじゃ…)

(なんや、その事か…。大丈夫や。影武者がおっからなぁ…。それに兄ちゃんらがなぁ…)


(…?そうか、とりあえず
お帰り!!)














(110324)
Title:yua

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