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□君に負けた
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始まりはこの娘の一言。



「なぁ、奴良君とこクリスマスパーティーせんの?」



12月25日。

世間はクリスマスシーズンで浮かれまくっている。

女子会だのカップルで過ごすだの、友達同士でパーティーをするだの。まぁ一人で過ごす人はあまり居ないだろう。

そんな楽しそうな雰囲気に彼女も入り込みたかったのが、

何を隠そう、花開院ゆらその人。

しかし、彼女の友達の殆どは彼氏とデートだの。家族と旅行だの、で。

けれども、シングルベルだけは嫌!と思っているゆら。

ならば実家に帰ればないじゃないか、とツッコミたいがゆらが今居るのは東京。実家は京都。帰省すればいいのだが、生憎帰省資金がない。

そこでゆらは考えた。

わいわい騒げてて、楽しそうな雰囲気があり、そして何てったって、



―――ご馳走がある所。



これらを踏まえた所がただ一つ。


「そーや!奴良君とこなら!!」



思い立ったら即行動!が基本のゆらは奴良組へと向かった。

まぁ向かった迄はいい。


着いた途端ゆらのテンションは一気に下がる。

なぜなら。


「な、何でクリスマスやのに!そこらへんの家にあったイルミネーションとかっ!リースとか無いん!!?なーーーんー――でやぁぁぁぁぁぁあッツツ!!!!!」


その叫び声に反応したリクオに雪女、元総大将ぬらりひょんは、ゆらの元へ駆け付けた。

「どうしたんだ?ゆら?きゅーに叫んで」


そうリクオが問いた後に言った台詞が冒頭の逸れである。
多少なりともぶすっとした表情だったが。


「クリスマスパーティ〜?」

「そーや!友達みんなしとるし!私一人シングルベルなんて嫌やったから、此処ならしとるやろーおもて来たら…、なんでしとらんの!!!?」


もう泣きそうである。その証拠に瞳は潤み、声は呂律がまわらず、そんでもってゆらに泣きつかれたリクオは顔が真っ赤かである。


「////…そんなにしたかったのか?パーティー」

顔を俯かせているがゆらの頭は確かにコクンと頷いた。


…何?この超可愛い小動物////


ゆらの身体を抱き寄せ頭に手を置きくしゃくしゃにしたリクオは(珍しく嫌がらなかったのはそこまでゆらがへこんでいた証拠だろう)笑みを浮かべる。


「よし、やるか!クリスマスパーティー!」


その瞬間ゆらがいきなり顔を上げた。

「ほんまっ!!?ほんまにするん!!?奴良君!!」


「ほんまほんま」


「〜〜おおきにッ!!奴良君っ!!」


と笑顔で言いながらリクオに抱き着いた。


「いいだろ?ジジィ」

後ろにいたぬらりひょんに問いただす。

「いいに決まってるだろォ!ゆらちゃんの泣き顔なんて見たくないからのぉ!!!」

「だなっ!!オーイっ!聞いてただろう!てめぇらぁ!!!!クリスマスパーティーすっぞ!準備しろーっ!!!!!」


「「「おーーーっ!!!!!」」」





「ほら。ゆら」


「ん?なんやの?その手」

「いつまでも此処に居ちゃあ、さみぃだろ?だから入ろーぜ」

「手」

「繋ごーぜ♪」

「…今日のお礼やからな…」


差し出された左手を握り返す。

「つめてーなぁ…。さっきまでのか弱いゆらちゃんは何処に行ったんですかね〜?」

「う、煩いわっ!もーいいっ!」

繋いだ手を離そうとするがびくともしない。

「そーはいくかよ。ばーか」

とムカつく笑みを浮かべたリクオはきっと上機嫌なんだろう。


ムカつく。いつもコイツに負けている自分がいる。

今日こそは、と思っているのになぜ勝てない?


よし、やるか!


「準備出来ましたよ〜〜♪早くおいでください〜」

雪女の声が聞こえる。

「だってよ。行こうぜ」

「まって!」

歩みを速めそうになるリクオを呼び止める。


するとリクオの頬に感じる温かく柔らかい感触。


「なっ!!」

舌を出したゆらはリクオの顔を見て満足げに皆が居る方に先に行ってしまった。


一人残されたリクオの顔は真っ赤かで。

先程ゆらの唇が触れた頬に手をあてている。


何が起きたかわからないようだ。

あまりにも突然すぎて。


「…どうせなら口にしてほしかったなぁ〜」





君に負けた気がしたが悪い気はしない
けれどやっぱり口がいい。



















(20101225)


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