話。君と僕。

□先生と僕。
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教室の机を一つ挟んで、向かい合わせに座った。


生徒会の雑務で、今度の集会で使うパンフレットをひとつひとつホッチキスで閉じていくだけ。


ただそれだけの単純作業なのに、こんなにも手元が狂うのは何故なんだろう。


……答えなんてわかってる。


オレの向かいに座る人のせい。


爽やかで、優しくて、でもそれが嫌みでないこの人をオレは苦手としている。


オレの持ってないものを全て持っているような気がして。




「塚原くん、どうかした?」




「!?あ、いや………別に、なんでもない、です」




「そう? 疲れたら無理しないで休んでいいからね」




「………」




オレの仕事、なんだけど。




にこりと微笑まれて、オレはどうしていいかわからずに顔を背ける。




ほら、




こういう所が苦手なんだ。








♂♂









事の始まりは数刻戻る。




『……東先生』




『手伝おうか?』




放課後1人で残って雑務をこなすオレを見かねたのか、先生はオレの返答を待たずに椅子を逆向きにして教室の机一つを挟んで向かい合わせに座った。




『や、えと……大丈夫です』




『いいからいいから』




オレの言葉は耳に入っていないようだ。




(お節介だ…)




パチン、パチン、と規則的に響くホッチキスの音の中でオレは思った。


お節介だ、お節介だ。


パチン、パチン、と響くのは先生の鳴らすホッチキス。


オレはといえば手元が狂って不規則な音が響いている。


……いつもは、こんなことないのに。


先生がいると、調子が狂う。





…………だから、お節介だ。





向かいに座る先生は、そんなオレの気持ちを知るハズもなく、ニコニコと笑いながら世間話をする。


授業の話とか、オレの周りの…友だちの話とか、自分自身の話とか。


オレはその話に、

「はあ」

とか

「そうですか」

と気の抜けた返事をする。


だってそうでもしないと気が散って仕方ない。


先生は話をしながら器用にパンフレットを閉じる。


正確に、規則的に。


その器用さが、まるでオレのことなんて気にもとめていないようで悔しかったり、悲しかったり。


オレばかりが気にしてるのをバカみたいに思ったり。


……いや別に、気になんかしてないけど。






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