緋色の欠片小説

□遙想
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――十数年後――

「真、お母さんは?」
「えっ?まだ中に珠生と弘紀といるんじゃない?」
「まぁだ準備してんのかよ。」
「パパァ!!」
「僕が先!!」
「あっちょっ弘っ押すな!!」
珠生と弘紀…やっぱりいつもの通りか。ったく……
今、俺は3人の子に恵まれている。
ここで妹と弟を傍観してんのが7歳になる長男の真。
こいつは祐一や大蛇さん、それに慎司、美鶴にも面倒をみてもらったせいか、俺と珠紀の子とは思えない位の落ち着きがある。外見が昔の俺なのにと珠紀はよく笑ってるな。
で弘紀に押され、転び、泣きそうだが必死に堪えてんのが5歳になる長女の珠生。
こいつは見た目は俺の目と珠紀の口元をにそっくり…らしい。性格はやっぱり女の子だからか珠紀に似ているな。
あとはここで俺に抱き付いてんのが3歳になったばかりの次男の弘紀。
こいつは末っ子だからか、俺の子だからか、元気なヤツだ。まぁ珠生と真はだいぶ大変そうだがな。(特に珠生…)

「珠生?!」
「あ…珠紀…悪い…弘が珠生を倒しちまった。」
「そう…弘!!珠生に謝りなさい!」
「やだもん!!」
「やだもんじゃないの!もう!!…パパからも何か言ってよ。」
俺か。……パパか……やっぱりいいな。
「パパ?」
「えっ?!…あぁ…弘紀、お前押さえて転んだら嫌だろ?」
「やだけど〜」
「嫌なら謝んなきゃな!!」
「ねっ?弘いい子だもんね?」
「……パパとママがいうなら…お姉ちゃんごめんなさい。」

すっげぇしゅんとしちったなぁ。泣かなきゃいいんだけどよぉ…。
「いい子!珠生、弘もごめんなさいって言ってるから許してあげてね。」
「うん。」

さすが珠紀だな…。二人とも泣かせずに終わらせちまった。…微妙に珠生は目に涙貯めてやがる。やっぱり痛かったからか?それでも泣かないのはやっぱりそうゆう強さが珠紀に似てるからなんだよな。
「よしっ珠生こっち来い!」
「僕も!」
「弘はこっちおいで。」
……弘紀は真の言う事はちゃんと聞くんだよな…やっぱりお兄さんだからか?
「お母さん、弘、帽子かぶってないけどいいの?」
「えっ?!本当だ!弘おいで。珠生と真はもう少しパパと待っててね。」
「おう!早くな。…よっと」
おお。珠生もだいぶ重くなったな。

「パパ!!あのね!!珠生ね。お姫様になるのよ?」

「うん?お姫様かぁ!!良かったなぁ!!」

「ホントだよぉ?!」

「おう!!」

珠生?

それ分かって言ってんのか?おまえはホントに・・・

「お母さんが…僕と珠生だけには話してくれたんだ…玉依のことについて…」

…………え?

珠紀のやつまだ幼いこいつらに話したのか…。

「…真…理解した…のか?」

「…少しかな?」

…やっぱりこいつなんか……祐一に似てないか?

ホントに理解してそうで怖いんだけど。

「だから珠生はお姫様って言ってるんだと思うよ」

…真のやつなにげ俺の反応見てんだよな。俺が珠生の台詞に不思議そうな顔したの…気づいたんだな。

それにしても珠紀、俺に一言もそんなこと言わなかったのに…。

「……お父さん、僕から訊いたんだよ。巧から訊いたんだ。なんか…僕らは玉依ってものに関わってるって。」

巧が?…拓磨のやつ巧はまだ6歳なのにそんなこと話したのか。

………………………………………………。

「ゴメンね…勝手に話しちゃって、まだ弘紀には話してないから………」

………………………………………………。

「ママ?どうしたの?どっか痛いの?ママ?!」

珠生!痛い!暴れんな!

……珠紀……元気ないな………そうだよな…珠紀だってさんざん迷って話したんだよな。俺だったらきっと話せなかった。あんな運命背負ってたことなんて話せるはずないよな…。

「いいよ。悪い…お前に全部任せっちまって。」

「ううん。……」

………………………………………………。

………………………………………………。

「あのね!!お父さん!!僕ね!お父さんの事いっぱい聞いたんだよ!!」

真…?

「辛いこともいっぱいあったって!!……でもねお母さん何回も何回も『あなたのお父さんはすごいのよ。』っていってたんだよ!!」

真?いきなりなんだ。急にむきになって。滅多に大きな声出さないこいつが。

「ね?珠生!?」

「うん!!あのねパパぁ珠生ね、祐貴お兄ちゃんのパパも珠生のパパはすごいって言ってたんだ!」

祐一が…?…意外だな。

「巧のお父さんだって僕のお父さんは小さいけどすごいって言ってた!!」

……小さいは余計だ!!…でも拓磨も俺を…?

「皆真弘『先輩』はすごいって言ってた。強いって。勿論遼も…」

かなり意外だ!!??狗谷が?!…気持ち悪いな。

ってか今真弘『先輩』って…なんでこいつらの前で今さら。

「あのね…真弘先輩?私は真弘先輩を昔も今も信じてます。…きっと私たちの血は真と珠生、もしかしたら弘紀にも発現してしまうかもしれないです。…でもそれでも私はこの子たちを絶対に守ります。……だから真弘先輩も…。」

「一緒に守って欲しいってことか?」

「はい。」

珠紀…もしかしてこいつらが自分達の血で不幸にしちまうとでも思ってんのか?

………馬鹿だな。

「バーカ!!守るに決まってんだろ?でも…」

「でも?」

「俺たちはもう二度とあの忌まわしき輪廻を打ち砕いたんだ!!こいつらを不幸にする原因は何一つ残してないだろ?!」

絶対こいつらは不幸にさせない。こいつらに俺達と同じ思いなんかさせない。絶対!!
「真弘……先輩……」
珠紀……
……………………。
「………皆見てる。」
「……えっ?!」
「お父さん………」
「まっまっまっ真!!」
うわぁ!!そうだった!!こいつら皆側にいたんだった!!つーか俺、珠生抱きっぱ!!…やっべぇ珠生キョトンとしてやがる。当たり前だよな。珠生にはラブシーンなんて早過ぎる!ってか真にも早いっつうの!!
「わっ悪い!!」
「……もうパパなんだからもう少し考えてよね?」
あ…パパに戻った。…大体珠紀が『真弘先輩』だとか言うからあの頃に意識が戻っちまったんだよ!!
「…お母さんもお父さんも元気になったね!」
「「真……。」」
「ありがとうね。」
真…ゴメンな。お前にばっかり苦労掛けちまってるな…ホント駄目なお父さんで…。
「パパぁ?」
「お父さん!!せっかくさっき元気になったのに!!珠生も弘紀も勿論僕も元気なお父さんが好きなんだよ!お母さんもだよね?」
「うん。」
珠紀。真。珠生。弘紀。皆…
「……そうだな!!俺は元気じゃなきゃ全部が沈んじまう!!」
そうだよな。俺が沈んでても何にもなんねぇだろ!!
……もし……もし…こいつらに何か不幸が来って絶対に血の運命なんかにこいつを殺させない。
絶対に守ってみせる!どんなことからも!
「珠紀、真、珠生、弘紀、今度あいつらも一緒にどっか遊びに行くか?」
「皆って巧とか祐貴?!」
「あぁ!真、嬉しいか?」
「じゃあ慎也君も聖お兄ちゃんも?!」
「勿論!!」
「進お兄ちゃんは?」
「弘、進君知ってるの?!」
進……って大蛇さんとこの……か?弘紀…お前いつの間に進君と仲良くなってんだよ。初耳なんだけど俺…。っつーかなんか珠紀も初耳っぽいな。この驚き様………親として悲しくなるな。
「…進君は弘にお菓子あげたんだよ、お父さん。」
「お菓子ぃ?!」
それでどうも懐いてんのか……間違いなく俺と珠紀の子だな。
「………あぁ!!進君も一緒に行くか!!」
「ホント?!パパありがとう!」
「おぅよ!」
なんか………まぁこいつらが楽しけりゃそれでいいか。
「珠紀…ありがとうな。」
「何いきなり?」
そんなクスクス笑うな!確かに変なタイミングな気もするがよ。
「日頃の礼だよ!!」
……今まで側にいてくれてありがとう。
これからも家族5人仲良く生きていこうな。絶対誰一人と欠かさないからな。死ぬ運命なんて珠紀と俺がいたら変えられる。


だから………



珠生

弘紀

そして珠紀

永遠に……


好きだぜ…………









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