緋色の欠片小説

□遙想
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運命なんて変えられないと思ってた。
どうせ変えられないなら、それまでを楽しく生きようと思った。
…でも心の何処かで俺の運命を変えてくれる誰かがいると願っていた。
それでもやっぱり俺の運命は変えられないと思っていた。
お前に会うまでは……


-*--*真弘先輩 Side Story*--*-


鬼斬丸、鏡の事件が片付き、ようやく俺は平穏な日々を過ごせる様になった。
祐一は都会の大学へ行っている。俺はと言うと、後輩達と受験勉強の真っ最中。しかも試験まで1ヶ月をきった。
例によって珠紀の家で集まって勉強している日々を過ごしていた。そんな中珠紀が突然言い出した。
「ねぇ!」
「「「なんだぁ?」」」
一応1ヶ月先に試験を控えているため、皆それなりに勉強に集中していた。
「これからの1ヶ月なんだけどね?皆自分の家で各々勉強を進めない?」
…いきなりなんだ?!思わず持っていたシャーペンを落としちまったじゃねぇか。
………取り敢えず、理由が知りたかった。隣を見ると後輩共も同じ様な反応してやがる。
「なんでだよ?!」
「俺達と一緒じゃ不満か?!」
ったくもう少し平常心保って言えよ。
とは言っても俺も少し平常心じゃない気がする。
「べっ別に不満なんかじゃないよ!!だって皆苦手科目とか違うじゃない?だから集まってやるより、その集まる時間も勉強したほうがいいと思って!!」
……なるほどな。確かに一理ある。珠紀と俺の家はそんなに離れてはいないが、確かに移動時間はあるしな。
「そんな時間…勉強したって変わらねぇよ…」
拓磨…その考え、1ヶ月後に泣きを見るぜ。
それにしてもこの後輩共は本当に嫌そうだな。そんなに俺の珠紀にベタベタくっつきたいのかよ。
まぁ俺は会おうと思ったらいつでも会えるからいいけどな。
「珠紀…どうしてもか?」
「そんなに嫌なのかよ?!」
…さっき違うって言っただろ。学習能力が無いヤツだな。それに拓磨、お前すっげぇ縋ってる様に見えんだけど。いい加減その行為なんとかしろっつぅの。
「だから違うってば!!本気だよ。私本気でヤバイんだよぉ〜」
「だからこそ教え合いだろ!!」
「赤頭に教わったら逆に珠紀の成績下がんだろ!!」
「なんだと?!灰色頭に言われたくないね!!」
「どーゆー意味だ?…」
「そのまんまの意味だ馬鹿!!」
「てめぇ……」
また始まったか……。はぁ…進歩の無い後輩だ。
「ストップ!!!はいそこまで!!喧嘩なんかしないでよ!」
結局いつものパターンかよ。
「真弘先輩にも迷惑でしょ?」
「「「えっ?!」」」
……しまった。急にふられて思わず……。
「……迷惑ですよね?」
「えっ……そうだな。」
「何が『そうだな』だ。てめぇだって毎日の様にロゴスのガキと飽きずにそれも大人気なくからかわれてたじゃねぇか!!」
「いっいつの話持ち出してんだよ!!」
「つい最近です。」
「半年位前の話だろ!!大体からかわれてたってなんだよ!!俺が!この鴉取真弘先輩様が!あのガキと親切に遊んでやったんだよ!!」
「そうは見えなかったな。」
「あぁ見えなかった。」
なんだこいつら!!二対一かよ?!
「俺が遊んでやった!!」
「「からかわれてた。」」
「ってめぇら…さっきか…」
「ストップ!!!!」
げっしまった………こいつらのせいで、なんかすっげぇやな予感すんだけど…気のせいか…?
「真弘先輩!!せっかくさっきは喧嘩に混じって無かったのに…」
「だってこいつらがよぉ!!」
「だってじゃないです!!」
しょうがないだろ!って言うか絶対俺悪くねぇだろ?!明らかに後輩共がわりぃだろ!!……すっげぇ理不尽。
「拓磨も遼も!!もう試験近いのに!」
「わっ分かってるよ。」
「まぁ俺が落ちるなんて事はねぇな。」
なんかすっげぇムカつく。そのニッて感じの笑い。
「遼!そんなこと言ってると落ちるよ?」
そうだそうだ!!
「受験生に落ちるなんて言うんじゃねぇよ!!」
「あっ…ゴメン。」
ウィナー狗谷?珠紀言い返せよ。ったくよ。


こんなやり取りがあったものの結局は2人共承認して、今、俺は自分の部屋で窓から空を見上げてる。
「青いな……。半年位前は暗くて仕方なかったのによぉ…」
暫くの間ぼーっとしてるとなんか珠紀の顔が浮かんでくんのは何でだろうなぁ。あいつちゃんと自分で勉強出来てんのかなぁ。実は拓磨や狗谷に邪魔されてたりしねぇかなぁ……。そういえば2週間はあいつに触れてねぇな…。キスもしてねぇ……。
「ばっ!!何考えてんだ俺!!落ち着け!!…落ち着けよ!…落ち着いて…今俺は何考えたんだ?!」
………何慌ててんだ俺。いいだろ!珠紀にキスしたいと思ったって。
あいつは…俺の…あっ愛…愛する人なんだからよぉ。
「なんで冬なのにこんなあちぃんだよ。」
俺だけか…?
「………………………」
やばいな。勉強が手につかねぇ…。
「………………………」
あいつ本当今何やってんのかなぁ。
「……………はぁ…珠紀に会いてぇな……」



いつの間にか入試当日になっちまったな。でもまぁ俺は珠紀にも会わず勉強頑張ったんだ!落ちてたまるかよ!!ここまで来たら後は全力を尽くすだけだろ!!よし!!
………珠紀??
「……どうかしたか?」
僅かだが震えてるな。
「真弘先輩……はい!!大丈夫です!!この日のために頑張って来たんですから頑張りますよ!!」
珠紀…言ってる事とやってる事が違うだろ?大丈夫って明るく言うんなら震えるはず無いだろ。
珠紀…俺はお前になんて言えばいいんだ?なんて言えばお前は心からの笑顔を見せてくれる?
「真…弘先輩?」
「俺も一緒だから…その…っっお前も大丈夫だ!!」
ゴメンな…。今の俺には手を握ってやる位しか出来ないんだ。
でも…もしお前がそれで安心出来るなら試験が始まるギリギリまでこの震える手を握っといてやるよ。
俺はどんな時でもそばにいてお前を守るからな。
入試の前にこんな恥ずかしいこと口には出せねぇけど……珠紀…俺はいつだってお前が好きだよ。お前が本当に好きだから。だから…頑張れ。お前は大丈夫って信じてるから。
「…………珠紀…」
「……よし!!大丈夫です!!ありがとうございます真弘先輩!!」
…震えが止まった?
珠紀…俺の気持ち伝わったのか?
っやばいな俺が今ちょっと不安定。なんか顔が赤くなっちまった気がするが…珠紀のことだ、気付いてないな。
「た……珠紀!!」
「はい?」
「その……2人共合格したら……はっ話があんだけどよ……そのっ…俺と会ってくれるか?」
「…えっ?いいですよ?」
「まっマジか?!」
「はい!!合格したらですね?私頑張りますよ!」
……その笑顔……可愛いな。
「あぁ!頑張れよ!!なぁに大丈夫だ!!この鴉取真弘先輩様が大丈夫って言ってんだ!!心配することなんてねぇよ!!!」
「はい!!」
……ちょっと位いいよな…頬に軽くキス位構わないよな…?
「珠紀…」
「は………」
…………………………
「がっ頑張れよ!!じゃあ後でな!!」
うわっ試験前に俺……
やばい珠紀も心なしか頬が赤いな。
まぁ元気でたみてぇだし……いっか。



試験も終わってようやく合格発表の日になったな。
「珠紀…」
「大丈夫ですよ!!私も真弘先輩も受かってますって!!」
「そうだな……そうだよな!!」
「はい!!」
「よしっ!!見るぞ!!」
…………………………………………………何処だ??…………………結構いっぱい受かってんだなぁ…………………………………………………あっ…
「……珠紀……お前…どうだった?」
「…先輩…は…?」
なんか微妙な間があるな。もしかして…いやいや!!そんなことぜってぇねぇよ!!
「せーので言おうぜ?」
「分かりました。」
「…………せーの!!」






「「合格!!!!」」






…………………………







「やったな!!」
「はい!!……これでこれからも真弘先輩と一緒にいられるんだぁ。」
えっ?……おいっそんなこと普通にっ…!!てっ照れるだろ。俺もすっげぇ嬉しいのに言わなかったのによぉ。
「真弘先輩?」
「た…まき…この後…季封村戻ったら俺に時間貰えるか?」
「分かってますよ!!約束でしたもんね!!」
覚えてたのか。嬉しいな。

「かっ帰るかぁ!!」
「帰りましょ!」



あと少しで季封村か。どうすっかなぁ…着いたらすぐ切り出すか?それとも皆に報告してからにするべきか?
うーん………
「よしっ!!決めた!!」
……しまった…思わず声に…。
「真弘先輩?」
「いっいや……そのっ…」
「先輩っもう着きますよ?」
「えっ?!もうそんなとこかよ!!」
見たら周りもう知ってるし……。大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫。緊張なんかすんな。……無理だろー。
大丈夫か?!大丈夫だ!!
………自問自答かよ……。ホント大丈夫か…俺?
…………
「先輩?着きましたよ?降りないんですか?」
「えっっ?わっ悪い!」
やばいバスから降りた途端、心臓が…音が聞こえる位緊張してる。
「珠紀………」
「はい?」
「今時間貰うな。」
「………はい。」
「その……え…」
どうした俺!!
「だからよ……」
何言ってんだよ俺!!
「その…大学卒業したら……」
もう一息だ!!言い通せ!!
「大学卒業したら…俺と結婚してくれないか?」
……言った。
言えた。珠紀……
「……………真弘先輩……私……それに答えるんですか?」
「……返事は…欲しい…」
「真弘先輩…」
「ん?」
「言わなくても分かりますよね?」
珠紀…ずるいぜっ?それ。笑顔でそう言われるとマジこえぇな…
「言葉にしてくれ!!」
珠紀……頼むから間を開けんな。断ってもいいから間だけは開けないでくれ。
「真弘先輩?」
「なん……」
………なんだ?珠紀の顔がすっげぇ近くに見える。…唇にすっげぇ温かい……。珠紀からのキス…初めてだな…。目瞑ったら、駄目か?いいよな?

「お前……」
「私の答えです!!分かりました……よね?」
「あぁ……」
実感ないな。なんだろう。すっげぇ嬉しい!!珠紀が俺と一緒になって……それから………
「先輩?どうしたんですか?」
「いや……嬉しくて…っ悪い!!………やばい…マジで嬉しい…」
「私も……すっごく嬉しいです。」
「お前を絶対幸せにしてやる。」
「はい……真弘先輩?」
「ん?」
「一緒に………幸せになりましょう?」
一緒?……一緒……
「今までも一緒に頑張って来たじゃないですか!!私は真弘先輩のおかげで今ここにいるんですよ?」
お…れ………は……
違うよ珠紀。逆だ。お前がいたから俺が今ここにいるんだぜ?
お前がいなきゃ俺は死んでた。お前が俺の運 命を変えてくれたんだぜ?
お前は俺の全てを救ってくれたんだ……
「珠紀……」
「…………」
珠紀の頬温かいな。髪もサラサラで。
キス……していいよな?
「お前を誰よりも愛してる。」
「真弘先輩…ずっと愛してます…」
珠紀の唇……すっげぇ温かいな。お前の優しさが伝わってくるぜ?
珠紀…お前を愛してる。本当に愛してるぜ?
一生愛してるからお前も俺を一生愛してくれよな。
珠紀………
「愛してる。」
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