薄桜鬼SSL 沖田さんルート

□運命の転生(りんね)C 共通ルート
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一日に10人以上の死亡者が出た薄桜学園は今日、休校になった。
当然だと思う。
……あの後私は…私達は土方さんと原田さんに任せて帰った。だからあの惨劇をどうしたのかはわからない。
私は朝刊に目を通す、あれだけの惨事だったにも関わらず新聞に一行もそれらしい文章は無かった。
一体何が起こっているのだろう。
私の記憶の目覚めと共に歯車が廻りはじめた様に事件が起こっている。
居てもたってもいられなくなった私は学校側の『家で待機』を無視して外へ出た。




やはり無差別的殺人があったと連絡が回っているためか人の気配がしない。
「……どうしよう…」
勢い余って家を飛び出したものの、何をどうするかなど何にも考えていなかった。
宛ても無くただ街を一周するように歩く。
あれだけ歩いたにも関わらず誰とも会わない。
私はだんだん怖くなって来たが、ここで帰っても何も得られない。
駅前……
ショッピングモール……
考えれば行ける場所はいくらでもありそうな気がする。嫌だけど諦めるって言うのも選択肢の1つだ。
「……学校…」
そうだ。学校に行ってみよう。もしかしたら先生達はいるかもしれない。
私は思い立つや学校へ向かった。



学校に着いた。校門が閉まっていて中に入れないようになっている。
「………当然だよね…」
私は溜め息を付いた。ここまで無計画な自分が情けない。
鋭利な刃物での殺人だ。先生も当然自宅待機って訳か。私は勝手な解釈を行い学校に背を向けた時だった。
「……何やってんの?」
この声は…
「薫!?」
「…何やってんの?」
「薫こそこんなとこで何やってるの?」
「何やってんの??」
飽きれ顔だった薫はニッコリと笑った。その笑顔の奥でさっさと質問に答えろと言っている。
「…………ちょっと散歩に…」
「……………馬鹿じゃないの?」
薫は再び飽きれ顔を私に向けてきた。しかし実際馬鹿としか取れない行動のため何にも言い返せない。
「…言い返さないとつまらないだろう?……で?ほんとは?」
「……はい?」
「…………………まさか…ほんとに散歩?!」
今度は驚愕に変わった。そしてまた飽きれ顔。
「…意味わかんない…」
薫は重い溜め息を一つついた。
「僕はてっきり若変水を奪いに来たのかと思ったのに…」
……え……?今なんて?
私の耳が正しく機能してたとしたら間違いなく薫は『若変水』と言った。
驚いた表情のまま薫を見ると微笑を浮かべていた。
「……やっぱり目覚めているようだね?雪村千鶴?」
「何か知ってるの?!」
「……そうだなぁ…知っていると言えば知ってるし、知らないと言えば知らない。」
薫はまるで私で遊んでいるかの様な態度を取る。
「教えてっ!!」
「可愛い妹の頼みなんだけどねぇ…」
「お願いっ!!」
「……僕らは今は従兄妹でもあの時代は双子だった………でも…授けられた運命は天と地の差があったよね…」
何の事を言ってるかは分かってる。おそらく自分だけは南雲で不幸せな人生だったと言っている。
私が動揺を隠せないでいると薫は楽しそうに笑った。
「ははは……双子って凄いね!!………僕はお前を助けるつもりは無いよ!!」
「…っでもっそれで引き下がる訳にはいかないの!!」
「そうだよな…じゃないと沖田…僕が殺しちゃうかもしれないしね……」
薫の微笑が濃くなる。
背筋にヒヤッと寒気が走った。
「やめてっ!!彼はまだ!!」
私は必死に薫に食いつく。無防備な沖田さんを殺させる訳にはいかない。私が持てる力全てで皆を守らないといけない。
「……話くらい静かにさせてよ…」
そう呟いた途端――薫の手が彼の腰に伸ばされ刀が現れる。それは紛れも無い真剣――
殺されると思った私は手で自分をカバーする体制を咄嗟にとった。
しかし薫はその出した手を掴み自分に引き寄せた。
「えっ?」
ビュンっと刀を振るう音とビチャっと水が撒き散らされる音が聞こえた。
私はその音の正体を知りたくて身体をよじったがびくともしない。
「やっ!!何!?」
「死にたくなかったら大人しくしててよ…」
薫の声が耳元で囁かれる。
「…女の子が見るものじゃないからね……失せろ…」
再び繰り返される音の世界。しっかりと薫の胸で目隠しされて何も見えなかった。
しばらくしてようやく腕の力が緩められた。
「なっ何する…?!」
私は自分の目を疑った。
何故なら薫と私の身体が真っ赤だったから。オマケに血臭がすごくて吐き気がする。
「ちょっと早かったけど…今更だけどお前別に血くらい平気か…」
「なっ何これ…?!」
焦る私とは対称に薫は落ち着いてる。
パッと振り返ると屍の山が出来上がっていた。
「薫っ!!何を?!」
「………うるさいんだけど……大人しく見てなよ…」
薫は不機嫌そうに私に対応した。
そして次の瞬間――
「……え…?」
あまりにも唐突な出来事に脳みそがついていかない。
薫を見ると冷笑とも近い微笑を浮かべていた。
『さっきまであった屍の山が一瞬のうちに消えた』と言うのが正しい表現だと思う。
血臭も返り血もすっかり消えて無くなっている。
「…な…にが起こったの?」
私は薫を見る。薫も私を見返す。と溜め息を付いて刀を腰の鞘に納めた。
「さっきの全部南雲の人間だよ…」
「…南雲…の?」
「もっと正しく言うと南雲の人間だったかな?」
「えっと…?」
「理解出来ないの?……仕方ないな……ようするに僕が南雲を殲滅させた時の魂。幽霊だよっ!だから在るべき場所に返った。よってここには何も残らない!!分かった?」
話が唐突すぎて理解が追いつかない。最初、薫がからかっているのかと思ったがどうやら事実らしい。
じっと薫をみつめていると薫が首から目を逸らした。
「…別にお前を助けた訳じゃないから!!ただ南雲の幽霊は俺狙いだから、巻き込まれて死なれたら俺の気分が悪い。それだけ。」
その台詞で私は薫が私を庇ってくれたんだと気が付いた。言うか迷ったが一応礼を述べておく。
「……ありがとう…」
「……お前…さっきの話聞いてた?」
「…聞いてたけど…」
「ならっ!!…………いいや……で?」
「は?」
薫はイライラしながら私を睨みつける。腰に刀を抱えてるだけにちょっと怖い。
「だから!!巻き込んだお詫びに一つだけ俺が知ってる情報教えてやるって言っただろう?何がいい?」
……言いましたっけ…?
私は突っ込みたい気持ちを抑え、聞きたい情報を考える。今1番聞きたいことは…
「私達を襲っているのは何?」
「羅刹。」
薫の答えは短かった。私は愕然としていると薫がニッと笑う。
「…………って解答じゃ可哀相だからもう少し…まず沖田達を狙っている羅刹がいるのは分かってるよね?」
「うん…」
「結論を先に述べると襲ってくる相手は3タイプ。まぁ羅刹には違いないよ。ただしこれはこの世の人間を羅刹に変えたもの。当然刀で切ったら殺人犯ね。理由はわからないけどこの世の人間が羅刹化してるのは事実だしね。」
薫は指を折ながら説明を続ける。
「2つめはさっきみたいなこの世のものじゃない羅刹。これは切って常世に送るのが一番良策。違いは服装とかで分かるだろう?」
「…うん…」
「……これは怨恨って考えるのがしっくりくるか…さっきみたいに。……ふふ沖田に殺された人間はいっぱいいるからね……で最後…はっきり言ってこれが1番厄介。」
私は息をゴクンと飲み込んだ。薫の表情も本当に困っている…と言うより面倒くさいって感じの顔をしていた。薫が手をやいてるのは事実なんだと思う。
「パターン1の羅刹のパターン2型……まず見た目じゃわかんないし、1の羅刹は心臓打ち込めばとりあえずは動かないけど直ぐに死んじゃう。まぁ…たぶんこれも命令されての自殺なんだろうけどね。それで死んだ後のパターン2型……心臓打っても動き止まらないんだよね…」」
「えっ?!」
私は驚愕の声を上げた。それが面白かったのか薫の機嫌が上がった。
「いい声…続きね…むしろこの2型は心臓を打つと逆に強化する。こうなったらまず記憶が戻ってない沖田達は勝てない。こいつらは真剣で心臓一突きしない限り倒れないよ。…まぁむやみに竹刀なんかで心臓狙うと逆に強くしちゃうよって話。」
「…普通の人を羅刹にだなんて…誰がそんなこと……」
「質問は1つだよ。…………まぁそれには僕も答えられないんだけど…」
薫は1つと言いつつ答えてくれた。この人の思考はさっぱり分からない。
嫌いで殺したいなら情報なんか与えなきゃいいと思うのに…。もしかして全て逸話じゃないかと言う考えが嫌でも浮かぶ。
「……事実だよ…言っただろう?お詫びだって……お前なんかに貸し作っとくのはムカつくからね。」
薫はそう言って口角を上げた。
「……ありがとう…薫…」
「……死にたくなかったらさっさと家に帰りなよ…」
帰る…確かに十分な情報を得たと思う。だけどまだ昼過ぎ。行けるところだってあるはず。
薫が私をじっと見ている。
ここは…
「分かった。ありがとう。」
そう言っておく事にした。あんまり長居してもボロをだすと思ったから。私は足早々と薫の前から立ち去った。
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