Breaker ―破滅の使徒―

□第六章 双璧の交戦
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 羅衣は琉輝の顔をじっと見つめる。ふと琉輝が顔を上げると、バッチリ目が合った。
「琉輝、こっちにいらっしゃい」
 手招きをされ、素直に従う。羅衣の隣に置いてある患者用の椅子に腰かけると、グイッと左腕を引かれた。
「また怪我してるじゃない。頬とこめかみも……あら、脚も」
 どんな戦い方したのよ、と呆れた様子で、琉輝に上着を脱ぐように指示する。琉輝は言われた通りにすると、傷口に消毒液の付いた脱脂綿を当てられた。
「いっ……!」
「これくらい、撃たれた時に比べたらどうって事ないでしょ。我慢しなさい」
 羅衣は傷を一つ一つ丁寧に消毒して、絆創膏を貼っていく。その間、琉輝は黙ってじっとしているしかなかった。双子と凛華は何やら手遊びをしている。
「琉輝、ズボンの裾捲ってもらっていいかしら?」
「あ、うん」
 琉輝がズボンを捲ると、膝の少し下に銃弾が掠めた傷があった。
「これくらいなら、別に消毒しなくても……」
「ダメよ。小さな傷でも、嘗めたら痛い目に遭うわよ」
 消毒して絆創膏を貼り、一応治療は終わった。体のあちこちが絆創膏だらけで、何だか少し気持ちが悪い。
「羅衣、ありがとう」
「どういたしまして」
 治療も済んだので、琉輝は上着を着た。羅衣は道具を片付けながら、
「あなたの服、随分破れやほつれがあったわね。戦闘スタイルを無理に変えろとは言わないけど、自分を大切にしなさい。勝てばいいってもんじゃないのよ。戦闘時に受けた傷で、後々死に至る事も少なくないんだから」
 そう言われると、琉輝は言葉に詰まった。正面突破の特攻が、琉輝は一番得意である。というより、一人で戦う事が多いので、特攻というスタイル以外を知らないのだ。
「駆馬も一人で突っ込んでいくけど、あいつはまず攻撃を受けねぇからな」
 話を聞いていたのか、炉愛がこちらに混ざってきた。
「攻撃を受けない?」
 確かに、駆馬は二十人近く相手取ったの戦いでも、怪我の一つもしていない。琉輝にとってはかなり衝撃だった。
「そ。あいつは動体視力と脚力が人並み外れてるから、攻撃を避けるのは得意なんだよ。やられる前にやる、ってのがあいつのスタイルだ」
 すげぇだろ、と自分の事のように自慢気に話してくる炉愛。琉輝もそれが凄いという事は分かるが、そう言ってしまうと駆馬に負けた気がするので、何も言わなかった。
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