Breaker ―破滅の使徒―

□第一章 破壊の園
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 偵察兵は全部で五人。上手く戦えば勝てない相手ではない。それに、さっき集めた武器もある。
 ――ここは俺の方が有利だな。
 偵察兵たちが琉輝の表情を見て、小さく悪態をついた。それもそうだろう。たかが十七歳かそこらの青年一人が、五人の大人を相手にして余裕の笑みを浮かべているのだから。
「待て、お前ら」
 その時、一人の偵察兵が琉輝の姿をまじまじと見つめた。
「緑の髪に青いゴーグル……間違いない、こいつ……」
 その瞬間、琉輝は偵察隊に向かい走り出した。偵察兵たちは不意を突かれ、慌てて銃口を琉輝に向ける。しかし、琉輝の方が速かった。両手の銃から一発ずつ放ち、一人は肩、もう一人は額に命中し倒れる。琉輝は肩を撃たれた兵の顔面を蹴り、後ろの兵もろとも倒した。そして二人に銃を向け、止めを刺す。その顔には感情などない。
 残る二人は一気に三人も仲間を殺した琉輝が恐ろしくなったのか、引きつった顔で悲鳴を上げ逃げ出した。その後ろ姿には帝国軍の威厳などなく、顔に恐怖の表情を貼りつけ必死に瓦礫の上を走っていく。
 しかし、琉輝はみすみす二人を逃がす気などなかった。手榴弾を取り出すと栓を抜き、逃げる二人に向かって投げつける。当然、投げられた手榴弾の方が人間が走るよりも早く、あっという間に二人を追い抜き地面に落ちた。偵察兵たちは目の前に落ちた手榴弾から逃れようと慌てて向きを変えようとするが、それももう間に合わない。
 次の瞬間、琉輝の視線の先で爆発が起こった。爆風が彼の髪を巻き上げ、辺りに火薬の匂いが広がる。爆心辺りには偵察兵の肉片や骨が散らばっていた。弾けたような赤い飛沫が、そこに今まで人がいた事を示している。
 琉輝はふぅ、と息を吐くと、足元に転がる三人の死体から銃や爆弾を奪った。こんな事をしている自分を善人とは思わない。しかし、死なない為には戦うしかなかった。
 武器をバイクに積んだバッグに詰め込むと、琉輝はグッと伸びをする。これから何処に行こうか……そんな事を思いながらバイクに乗ると、エンジンを噴かしその場から走り去った。

 戦場にふらりと現れ、帝国軍を次々と潰していく青年。一人で一小隊を壊滅させる彼を、人々は『破滅の使徒』と呼ぶ。


第一章 破壊の園  END
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