Breaker ―破滅の使徒―

□第二章 瓦礫の花
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 戦闘兵たちはフンと鼻で笑うと、銃をしまった。反帝国集団の二人に歩み寄り、死体を蹴って道の端に寄せる。まるで人間ではなく、物を扱うかのような行動だ。
 反吐が出る――琉輝は二丁の銃を抜くと、戦闘兵たちに意識を集中する。奴らは反帝国集団を始末して油断している筈だ。その証拠に、戦場であるにも関わらず奴らは銃をしまっている。――これはチャンスだ。
 腰を低くし音をたてず、静かに戦闘兵に近づく琉輝。銃を握る手に力が籠もる。戦闘兵たちは完全に警戒心を解き、後ろから近づく琉輝にも気付いていないようだ。
 これは好都合……しかし、琉輝もまた子供である。後ろからコッソリ近づき攻撃するなんて、臆病者のする事……そう思った。
「オイ、お前らの敵は目の前だけか?」
 途端に戦闘兵たちが振り返る。琉輝の姿をその目に捉えると、ハッと息を飲んだ。
「『破滅の使徒』!」
 一人がそう叫び、銃を抜く。他の兵たちも同様に銃を構え、琉輝を仕留めようとした。
 しかし、琉輝は彼らよりも早い。両手の銃の引き金を引き、二人を同時に撃ち抜いた。弾を数弾受けた二人は、ゆっくりと地面に倒れ込む。残る一人が琉輝に銃を向け、弾丸を放った。琉輝は瞬時に地面を蹴り弾を避ける。が、弾は左腕に当たった。痛みと衝撃で左の手から銃が滑り落ちる。兵はしてやったりという笑みを浮かべていた。
 しかし、琉輝は全く動じていなかった。落とした銃を拾う訳でもなく、左手で腰に差した短剣を素早く抜く。すると、兵は驚いたように琉輝を凝視した。まさか、銃を持った相手に剣で挑むとは思ってもいなかったのだろう。
 兵は再び琉輝を撃とうと、引き金に力を込めた。次こそ仕留めてやる――『破滅の使徒』を倒した時、その手柄はきっと大きなものだろう。誰も倒せなかった奴を、それを自分が倒せれば……
 その瞬間、琉輝は一気に相手との距離を詰めた。思いもよらぬ行動に、兵は咄嗟に銃を撃つ。一発、顔を掠めた。右頬から血が流れる。しかし、琉輝は止まらなかった。右手の銃で兵の足や腕を撃ち、左手の短剣を力強く握り締める。左腕に痛みが走るが、歯を食い縛って走り続けた。
 兵は迫りくる琉輝を必死に狙ったが、地面ばかりを撃っている。彼の目に、琉輝の左手の短剣がいやに光って見えた。
 そして――
 赤い雫が宙を舞った。恐怖に顔を引きつらせる兵の頭が、瓦礫の上に落ちる。残った体は、ふらりと揺れて地面に倒れた。
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