Breaker ―破滅の使徒―

□第四章 迷宮の探索
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 ようやく行き着く事が出来た彼らの研究室は、まさに壮大としか言いようのないスケールだった。あの限りなく広がるような車庫と同じくらいの広さである。だが、巨大な機械や作りかけのバイク、車を分解した部品などが多く散らばり、少々狭苦しくも感じられた。壁という壁には黒い汚れがついており、彼らがどれほど真剣にここで作業をしてきたのかが分かる。
 炉愛と愛恋は床に落ちている細かい部品を踏み潰して歩き、奥に入っていった。
「琉輝、入りなよ。ちょっと汚いけど、すぐ慣れるからさ」
 愛恋に言われ、部屋の広さに呆然としていた琉輝は二人の後に続く。中を歩いて分かるが、本当に広い。二人だけが使うには勿体ないくらいの広さだ。
 キョロキョロと回りを見渡しながら歩いていると、琉輝はふと、車庫に置いてあった赤いバイクを思い出す。
「そういえばさ、車庫に置いてあった赤いバイク、お前らのか?」
 きっとそうだろうとは思いながらも、一先ず聞いてみたかった。すると、炉愛と愛恋は目を輝かせて振り返る。
「おおっ、やっと気付いてくれたか!」
「あれはあたしたち二人が出撃する時に使う、一番お気に入りのバイクなの!」
 聞いてもらえたのがよっぽど嬉しいのか、琉輝の手をそれぞれ手に取り、ブンブンと上下させた。肩が引き千切れるんじゃないかと思うくらいの勢いだ。
「あーもー、分かったから放せ! 腕がもげる!」
 すると二人はパッと顔を上げ、
「もげたら羅衣の所に行けばいいじゃん」
「くっつけてもらえよ」
 ニコニコと笑顔でそう言った。
「俺はぬいぐるみじゃねぇ!」
 冗談でも止めてほしいものだ。
 二人が手を放すと、琉輝は肩をグルグルと回してほぐした。あんまり動かされた所為か、肩の付け根が痛い。
「よし。改めて、ここが俺と愛恋の研究室だ」
 炉愛は琉輝に向き直って言い、ビシッと指差してきた。
「暇なら遊びに来てもいいぜ。掃除してくれると、なお嬉しい」
「知らねぇよ。掃除くらいお前らでやれ」
 あちこちに散らばる部品は、どうやら掃除されていないままらしい。
「今は新作を製作中だ。バイクにバズーカを取り付けようと思ってんだ」
 炉愛は作りかけのバイクを指差して言った。これまた、とんでもない発想である。
「そんな事出来んのか?」
「もちろんだとも!」
 今度は愛恋が答えた。
「だってあたしたち、天才だもん!」
 満面の笑みでピースをする愛恋……これも冗談だと思いたい。
「まぁどうでもいいけどよ……あそこにあったバイクとか車って、全部お前らが作ったのか?」
「そりゃそうさ。じゃなきゃ、誰が作るんだ?」
 作る以外の発想は無いのかと思ったが、それ以外では手に入らないのが今の現状だ。何処の店も戦火に巻き込まれ破壊され、他には作るか奪うかしかない。琉輝は奪う方だった――今まで使っていたバイクも、戦いに紛れて帝国軍から奪ったものだ。
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