この花の名前1

□サクララン
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時は、戦国時代。

ここは甲斐の虎と謳われし、風林火山の兵法で有名な武田信玄が治める甲斐の土地――躑躅ヶ崎館。


そこに、甲斐の虎若子と呼ばれし、日本一の兵、真田幸村はお館様である信玄と、いつものように、最早名物と化している殴り愛をしていた。

それを、真田忍隊隊長である猿飛佐助が、あきれたような表情を浮かべながら、巻き込まれないようにと、遠巻きに眺めていた。



「おやかたさぶぁあぁあぁあぁっっっ!!!!!!!!!!」

「ゆぅきむるぁあぁあぁあぁっっっ!!!!!!!!!!」



バキィッ



「Σぐはぁっっ!!!!!」



ドゴォーン



幸村と信玄の互いの名前を叫ぶ声がやけに大きく響く。

それと同時に、痛々しい音と共に、幸村は信玄によって思い切り殴り飛ばされた。

幸村の身体は、重力に逆らうことなく宙を飛んでいき、見事に勢いを殺す事なく壁に激突する。

いきなり幸村に激突された壁は、ガラガラと音をたてて壊れていった…。


「……はぁ。またこんなに壊しちゃって…」


自分の目の前で、無惨に壊れた壁を見つめながら、佐助は人知れずため息をついた。

いつもいつもこの二人が殴り愛で物を壊す度に、それを直すのは佐助。

その為、佐助は余計な仕事が増えた事に、げっそりとした顔で乾いた笑いを浮かべた。

そんな時だった。



「佐助ッ!!」


壁への激突から復活したらしい幸村が、いきなり切羽詰まった、焦ったような、叫び声に近い声色で佐助の名を呼んだ。

それに対して、佐助は浮かべていた乾いた笑みをしまってから、何事かと、幸村を見る。


「お館様がッ!お館様がッッ!!!」

「…大将が?」


切羽詰まった表情を浮かべる幸村が、必死に佐助に掴み掛かるような勢いで言う。

そんな幸村を見て、佐助は訝しげな表情を浮かべ、首を傾げながらも、信玄に視線を向けた。


「……は?え?大将?何で、動いてないの…?」

「ッつい先程まで、某と殴り合いをしていたと言うのにッ!!!何故このようなッッ!!!!!」


信玄に顔を向けた佐助の目には、まるで石にでもなったかのように、固まり動かない信玄が映った。

そんな信玄を見て、佐助は訳がわからないと言った感じに、声を上げ、目を丸くする。
幸村は己の拳をぎりぎりときつく握り締め、苦い顔をしながら、目を丸くする佐助に再び焦ったようにそう言った。


「動かんのは当たり前だ。なんせ、私が時間を止めたのだからな」


二人の間に、困惑な空気が流れる中、さっきまでは居なかったであろう、引きずる程に長い黒髪に、美しい深紅の瞳を持つ、なんとも神秘的な男性が、いつの間にやら二人の背後に立っていた。


「ッ貴殿は何故、お館様にこのような事をっっ?!!!」

「……時間を止めるだなんて…あんた何者?」


突然現れた得体の知れない男性に、幸村と佐助の二人は、信玄を守るように、男性の前に立ち塞がると、各々の武器を構える。

幸村は、


「……説明は後だ。一緒に来てもらおう」


二人の言葉を聞いた男性は、少し考える素振りを見せてから、そう言うが早いか、二人を眩しい程の光が覆った。

その光が消える頃、この場から男性を含めた幸村、佐助の三人の姿は跡形もなく消え去っていた。















人生の転機とは

いつ訪れるのか

誰にもわからない。


だからこそ、

面白く可笑しい

…のかもしれない。






サクララン‐人生の出発‐

(今がその時なのかもしれない…)



〜to be continue〜





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