「ただいまー」 誰もいない真っ暗な家に自分の声だけが響く。一人暮らしって寂しい。ひんやりした空気が体をかすめ、寂しさが増す。今日は朝から雨でジメジメしてたから、何だか心の中までどんよりするね。体も暑さでベタベタだしね。別に寂しくないもんね。家の中に入った時の冷たい空気に、人の温もりが恋しくなったなんてことないんだから。嘘だよ大有りだわ。寂しすぎて震えるかと思ったわ。まだ一人暮らし始めて一週間だからね、しかたない。 それに朝から晩まで毎日仕事で恋なんてする暇ないし。そろそろ恋したい。出会いがない。周りは夏だって言うのにイチャイチャしたカップルばっかり。あっつ、あっついんだよなあ!見るだけで体感温度が10度上がるわ。温暖化の原因これじゃないの?私もあつさで溶けてしまうわ。 「はあ」 つい大きなため息をつく。あ、幸せ逃げた。ヤバい吸っとこ。ダイソン並みに吸ったら勢い余ってむせる。苦しっ!ひどい仕打ちだよ! もう寝よ。明日も早いし、さっさとご飯食べてお風呂入って寝よう。それがいい 冷蔵庫から朝の残りの味噌汁を取り出し、温めず茶碗につぐ。今日の夜ご飯は白米とお味噌汁。もっとカツ丼とかガッツリしたものが食べたいな。めんどくさいから作らないけど。……このままだと女が廃る。ぬるい味噌汁を口に含みながら少し危機感を覚えた。 ご飯も食べ終え、お風呂に入る。最近はシャワーだけで済ますのでそろそろ湯船につかりたい。ゆっくり足のばしたい。と言いつつ結局今日もシャワーで済ます。明日は銭湯でも行こうかな。この体型を人様に見せるのは気が引けるが。いや、誰も私の体型なんて気にしない。そうは言っても気になる体型、このお腹回り。こうやって服を脱ぐのと一緒に脂肪も脱げないかな。 脱いだ服を洗濯機に投げ入れ、風呂場の扉をあける。すると、むあっとした熱気が全身にまとわりつき、少し顔をしかめてしまう。曇っていた鏡にシャワーで水をかけ、改めて自分の体型をチェック。 うーん、やっぱ危ないかも。 お風呂から出てお茶を飲もうと冷蔵庫を開けたら、お茶がない。あー、やっぱりないか。今朝見た時にあと1杯分しかなかったしな。仕方ない、出かけるか。 玄関を開け外に出る。念のためライブキャスターで話しながら行こうかな。 ライブキャスターをポケットから出し、ある人物へかける。呼び出し音が少しずれながら数秒響いた後、パッと画面にある人物が表れた。それを確認しあたしは早足で歩き始める。 「こんばんはナマエ!どうしたの?」 「こんばんはクダリさん。夜分にすみません。ちょっと怖いのでお話をしようと思って」 「怖い?」 「えぇ。怖いんですよ」 「何が怖いの?」 「嫌だなぁ、クダリさんたら」 「…ん?」 そこまで話したところで私は目当ての場所についた。実は初めての一人暮らしで不安だったため、ここのすぐ近くのアパートを選んだのだ。 「電話かけたばかりのところすみませんが、着いたのでいったん電話切りますね」 「着いたって何処に?」 「正義の味方の所です。では」 私はライブキャスターをズボンのポケットに突っ込み、通称正義の味方へと助けを求めた。 Where are you now? (あなたは今どこにいるの?) ――― ホラー難しい。 次のページには怪しい点を書いています。 2012.10.22 |