シリーズ

□獄寺
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『おはよう獄寺。突然だが今日は何の日?』
「あ?ホワイトデーだろ。ほらよ」
『お、ありがとう。あら、キャンディーにリボンつけるなんて獄寺乙女ー』
「なっ…!誰が乙女だ!」

いやだから獄寺、君だよ。獄寺からもらったのは、3つの棒付キャンディーがリボンでくくられたもの。まじ可愛い。あたしはてっきりコンビニ袋のまま渡されると思ってたから予想外の可愛さにびっくりした。これはすごく嬉しいんだけど、あたしがわざわざ獄寺に今日が何の日であるか尋ねたのには別の目的がある。

『獄寺、ホワイトデーは何の日でしょう』
「は?」

あたしの聞いている意味が分からないのか、獄寺はより深く眉間に皺を寄せる。痕ついちゃうよ。でも眉間に皺よってる姿もかっこいいよ。彼女の贔屓目とかなしに。

『ほら獄寺、よく言うじゃない。ホワイトデーのお返しは…』
「…3倍返し、か」
『あったりー』

そう、あたしが言いたかったのはそれ。お返しは3倍返しってこと。ステキだよね。あげたものの3倍返ってくるって。

「じゃあまた帰りに飴買ってやるよ」
『ちょ、違うよ獄寺。そうじゃないよ』
「あ?」

あたしが3倍で返してほしいのは物じゃないの。愛だよ愛。そりゃ物でも嬉しいけど愛情が3倍の方があたしは嬉しい。決して飢えてるわけじゃないよ。

『獄寺、あたしは君から惜し気のない愛情を注がれたいんだよ。キス然り抱き締めるの然り』
「なっ!」

あたしの言葉に顔を真っ赤にする獄寺。え、何この可愛い生き物。あたしから目を逸らしながら片手で顔を覆っている獄寺にときめく。きゅん。

「お前、そんなんでいいのかよ…」
『そんなんとは何だ、そんなんとは』

あたしにとってはこれ以上ない幸せなお返しだぞ。それをそんなことと軽く扱うのは納得いかんなぁ。どれだけあたしが獄寺のことを好きで、愛情を与えられることによりたくさんの幸せを得ているか、獄寺は分かってない。

「…女は物の方が嬉しいんじゃねぇのか?」
『なんだその偏見。他の女の子は知らんが、あたしは彼氏からの愛情が1番嬉しいのだよ。お分かり?』
「っ…」

ギュッ。突然抱き締めてくる獄寺。おぉ、やっと分かってくれたのか。

『獄寺、あたしは世界一素敵なお返しがもらえて嬉しいよ』
「…3倍だからな。名前から貰ってる以上のもんを返してやるよ」

抱き締められているため獄寺の顔は見えないが、恐らく真っ赤であろう。さっきより距離が縮まったおかげで獄寺の鼓動が早いのが分かるから。

『ありがとね、獄寺』
「…あぁ」


(あの、お取り込み中悪いんだけど…遅刻しちゃうよ)
(じゅ、10代目!名前、離れろっ)
(おいおーい、まだ3倍分返してもらってないぞー)
(ま、また放課後に返してやるから)
(むー、しょうがないなぁ。待たせる分ちゃんと愛情注いでよ)
(…っ、当たり前だ)
((ちょっとこのバカップル静かにしてくれないかな))


2012.03.14


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