「なまえ、トリックオアトリート」 『ん?あぁ、はい。飴』 「チッ、持ってたのか」 おお、こわ。舌打ちすんなよ。 今日は10月31日。そう、ハロウィンだ。別にあたし自身はハロウィンに興味がないのでお菓子なぞ持ち歩かなかった。去年まではね。今年からはちゃんと飴を持つようにした。その理由は目の前の男、綱吉に恐ろしい目にあわされたからである。 あれは去年のハロウィンのこと。放課後の教室、あたしは日誌を書き終え帰る準備をしていた。そこへ奴、綱吉が入ってきたのだ。その時は綱吉とは挨拶をかわす程度の関係だったので普通にばいばいだけ言って立ち去るつもりだった。だが突然綱吉がトリックオアトリートと言ってきたためあたしは立ち止まって聞き返してしまったのだ。あの時何も考えず立ち去れば良かった。今更後悔。で、お菓子を持ってなかったあたしは素直に告げた。そして綱吉にとんでもない悪戯をされる。 綱吉はお菓子がないなら悪戯だよと言い、悪戯とか知らんがなって思っていたあたしの目の前に来て、…ファーストキスを奪いやがった。 この一件以来あたしはハロウィンにお菓子を持っておくことを強く心に誓ったのである。 「お菓子持ってるとかつまんないな」 『つまんないのは綱吉だけ。しかも文句いいながら食べてんじゃん』 あたしのあげた飴を口の中で転がしながら文句を言ってくる。腹立つな。たまにはこいつをぎゃふんと言わせてやりたい。そうすれば去年の出来事に対しての怒りも少しは緩和されるだろう。 …そうだ。今日はハロウィンなんだよ。あたしだってお菓子をもらえる日だ。 『綱吉、トリックオアトリート』 「は?」 まさか自分が言われるとは思ってなかったのだろう。ポカンとした顔でこちらを見てくる。ふふふ、この様子だと恐らくお菓子は持ち合わせていないだろう。 『お菓子ないの?なら悪戯だ、』 「…ある」 なんだよ、持ってんのかよ。つまんないな。せっかく悪戯と称して命令やらなんやらをしてやろうと思ったのに。 『はぁ。あるなら早くちょうだい』 「…ん」 『……!っ!』 口の中に広がる苺の味。今あたしの口の中には飴玉が一つある。さっきあたしが綱吉にあげた飴玉が。 『ばかやろう!綱吉のばかやろう!』 「くくっ、顔真っ赤」 『う、うるさい!もういいもう知らない帰る!』 あたしは走って教室を出る。顔が熱いから肌にあたる冷たい風が気持ちいい。 ああ、結局今年も悪戯をされるはめとなった。調子にのるもんじゃないね。そのせいでまた一つハロウィンに深い傷がついてしまったよ。 Trick and Trick (何しても悪戯されるんならお菓子あげなきゃよかった) (まぁそれはそれで酷い目にあいそうだけどね) (…くそ、来年こそはぎゃふんと言わせてやる!) ――― ハッピーハロウィンですね。お菓子もらえるとかとてもステキな行事。でも綱様は悪戯してなんぼですよね(ぇ |