復活

□終わりは静かに
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「ただいま」


同盟ファミリーとの会合を終わらせ、疲れた体に鞭を打ちながら帰宅する。会合といっても不穏な動きをしているらしい同盟ファミリーの調査だけど。調査中そこの令嬢にベタベタとされてずっと気分が悪かった。何度咬み殺そうと思ったことか。僕には大切な妻がいるのに。それを伝えられないなんて。僕に近寄ることを牽制したいがために伝えたいわけではないが、伝えることで僕にベタベタ女が触らなくなるのならそれにこしたことはない。僕に触れていいのは妻だけだ。
最近は泊まり込みのこの仕事のせいでなかなか家に帰ってこれなかった。あぁ、はやく妻の、なまえの笑顔で癒されたい。

そう思い家に帰ったのだけど、僕のただいまの声に返事はない。明りもついていない。暗闇に僕の声はのまれた。
おかしい、いつもならまだ起きている時間のはず。最近帰れなかったから、僕を待つ必要もないし、1人の時ははやく寝るようにしているのだろうか。
不思議に思いながらも暗闇の中歩みを止めることなく、そのままリビングに行き、あかりをつける。

やはりそこになまえの姿はない。もう先に寝ているのかもしれない。
寝室へ足を運ぼうとした時、視界の端で何かキラリと光った。
そちらに目をやると、テーブルの上に紙が一枚と何か置いてある。晩ご飯は冷蔵庫の中とかそんなことが書いてあるのだろう、と軽く考えながらテーブルに近づく。キラリと光ったものがなんなのか、近づくにつれてはっきりと分かる。心臓の音が急にうるさくなり、じわっと嫌な汗が出る。
きらりと光るそれの下にある手紙に目を向け、そして僕は急いで寝室へと向かう。

そこで寝ていると思っていた。
あどけない寝顔で、待っていると。

なまえの姿はない。それどころかなまえの荷物もなくなっている。寝室にあるのは僕のものと、僕がなまえにあげたものだけ。


もしかするとトイレに行ってるかも。もしかすると少し出かけているだけかも。そう思いたいのに、そんな甘い考えはできない。

手紙に書いてあった一言、それと手紙の上に置かれていたキラリと光ったものがそうではないと語っていたから。


急いでなまえに電話をかけるも無機質な音が鳴り響くだけ。


恐らくなまえは僕が他の女と会っていることに気がついたんだろう。それが僕の本意でなかったとしてもなまえはそれを知る由もない。
だって僕は何一つ、妻に伝えていない。


仕事だったなんてただの言い訳。結局のところ、僕が招いたんだ。

暗い廊下を歩いてリビングへ戻り、もう1度手紙を読み返す。

綺麗な字で書かれた短い言葉。

僕は震える指でそれをなぞった。


(紙にはたった一言の)
(終わりを告げる言葉)
("愛していました")
(側に置いてあった指輪が)
(ぼんやりと光っていた)



2011.11.13

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