※雲雀成り代わりなので、ヒロインちゃん男。名字は雲雀で固定。 トラックに跳ねられたあたしはすぐに意識を手放した。 そして、再び目覚めた時…。 あたしは男になっていました。 どうやらあたしは雲雀恭弥になったようなのだ。あの中学生にして並盛の秩序である暴君風紀委員長に。所謂成り代わりというやつである。まさか前世で愛読していたリボーンの世界に来るなんて…。ところで何故あえての成り代わりなんだろう。しかも雲雀ポジション。あたしの命がいくつあっても足りないよ。 それでも雲雀の赤ん坊の時から成り代わっていたならあたしの好きなように人生を築いてこれたが、生憎始まりは中二から。すでに並盛を支配下においた後。一般人なあたしにどうしろと。 ぶっちゃけリボーンの世界に来れても嬉しくない。だって危険がありすぎる。肉まん買いにコンビニに行けば途中で不良に絡まれ、トイレに行こうと応接室から出れば先輩に絡まれる。…リボーンの世界がというより雲雀の人生が危険すぎるんだな。 幸い戦闘力は漫画で見た雲雀のままだが、あたしがそれを使いこなせるかは別の話。とりあえず手当たりしだいトンファーを振り回しなんとか倒してきたけど…。戦い方は非常に不格好だった。初めて戦った時、草壁さんが目見開いてたもん。すんませんね、委員長のイメージ壊して。 できれば戦いたくない。でも今まであたしに喧嘩をふっかけてきた人達はどうやら雲雀に恨みがあったらしいので、きっとこれからもいろんな輩に絡まれるだろう。困るなぁ。これまでの雲雀がやってきたことまで面倒みきれないって。あたしは雲雀であって雲雀じゃないのだから。 そんなことを言っていても周りから見ればあたしが雲雀で。今日も今日とて売られた喧嘩に対処する。流石にこれだけ頻繁に戦っているとトンファー捌きもかなり上達。自分で言うのもなんだがなかなかにイケてるね。あれ、イケてるって死語?いや、それはどうでもよくて。ほら、人間って上機嫌になると調子に乗ってしまう生き物じゃない。だからさ、今のあたしならなんでも出来るし!って感じでトンファー振り回してたらすっぽ抜けて…。それだけなら良かったんだ。喧嘩はすでに終わらせてたし。ただ、トンファーの飛んでった先には柄の悪い男達が群がってて。その中でも特に厳つい奴の頭にあたしのトンファーはクリーンヒット。何この漫画みたいな展開。あ、リボーンって漫画の世界だもんね。ってそうじゃない!自分から喧嘩を売るようなことするなんて…。有り得ない有り得ない有り得ない。どれくらい有り得ないかって、目の前の男の眉間の皺の深さくらい有り得ないのだ。すっげ、名刺とか挟めそう。……。あらやだ、いつの間に目の前に? 「おい、何してくれんだよ」 いや本当何してんすかね、あたし。謝ろうか。でもこの人、謝っても許してくれそうにないよね。 「シカトこいてんじゃねぇよ!」 シカトしたわけじゃないっすよ。いろいろ考えてたんすよ。だから変な言い掛かりはよしてください!そして大声もだすな!耳がキーンってなるわアホ。 「おい!」 『うるさいな!群れてるのが悪いんじゃないか』 「何だと!」 いやいや、何だとおォォ!今なんつったあたし。え、何、喧嘩ふっかけたの?バカか。ってわっふぉい!危ない!いきなり殴りかかるなんて卑怯だ! 「チッ、避けてんじゃねぇよ」 避けるわ!でないと当たるわ!…えぇい、しょうがない、諦めてトンファー振り回すか。右手のは飛んでったから左手だけで。利き手じゃないから戦いずれぇなオイ。 『……』 「ぐっ…」 『……』 「がはっ!」 喋らないんじゃないよ。喋れないんだよ。戦いながら喋るなんてそんな器用なことできませんから。必死なのよ。 「てめっ!」 『!』 お仲間が参戦。やめてくれ。女の子相手に3人がかりだなんて情けないぞ!卑怯だ!一対一の差しで勝負せんかい! 「うぶ!」 「かっ!」 「うぐぁ!」 『……』 君達はあれか、不良Aとかそういう脇役か。3分とたたず倒せるとか。そんな漫画みたいな。…うん、漫画だったね。ご都合主義万歳。 『次群れてると、また咬み殺すから。いいね』 …返事がない。ただの屍のようだ。 てか雲雀の決め台詞を言ってみたはいいけど、恥ずかしいねこれ。咬み殺すって…。言うんじゃなかった。 それにしても雲雀の戦闘力って本当すごいわ。あとトンファーの威力。まぁこんな固いもので殴られたら一溜まりもないよね。思ったけど素手相手に武器持ってるこっちの方が卑怯な気が…。いや、女の子だもん。大目に見てもらおう。 「あの!」 うおっ!…びっくりした。急に話しかけないでよ。まだ敵がいたのかと思っちゃった。 「ありがとうございました!」 『…?』 あたし君に何かした?君、ってかツナだね。これまでにツナとは絡みなかったはずだけど。 「雲雀さんのおかげで不良にカツアゲされなくてすみました」 あぁ、さっきの群がりってツナにカツアゲしてたのか。あたし良い事した。たまたまだけど。トンファーがすっぽ抜けただけだけど。結果オーライ! 『そう』 そう、って素っ気ないよ。…いやね、良い台詞が浮かばなかったんだ。べ、別に君の為じゃないんだから、の方が良かったかな?ツンデレ萌え。いや実際にツナの為ではなかったが。 「はい!本当にありがとうございました!」 『…また何かあったら呼びなよ。君なら助けてあげる』 少し微笑んでかっこつけてみた。男相手にかっこつけてどうすんだよっていうね。…でも効果は抜群だ。ツナ顔赤いぞ。さすが雲雀。容姿端麗。中身があたしってことが唯一の欠点だな。…何それ切ない。 『じゃあね』 「あ、」 さて、3人組の後始末は草壁さんがしてくれるしあたしは応接室に戻って寝よう。机の上に書類が山積みになってた気がしなくもないが寝よう。だって中学生がサインするような書類じゃないよアレ。荷が重いって。だから寝ます。草壁さんごめん。 草壁さんに心の中で謝りながらあたしは応接室へと戻った。 慣れからくる危険 (おい、ツナ。何ボーッとしてんだ) (雲雀さんかっこいいよな) (雲雀なまえか?) (うん。…オレのものにしたい) (…頬を染めながら言うんじゃねぇ) ――― 最後のツナくんの言葉は戦力的な意味合い。仲間に欲しいな友達なりたいな、ってノリだよ! 因みにこの話のツナくんは純粋だけど黒いんだよ(どっちだ 2011.12.30 |