復活

□仮定に葬る
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例えば私は綱吉に恋していて綱吉も私を好きで。両思いだから付き合うことになってドキドキしながら登下校を共にしたりデートしたり。初々しい二人の関係が少しずつ深いものに変わっていったり。幸せが滲みでる日常を過ごしたり。

例えばそんな幸せな二人を割く私に似ている女が現れて、私は泣く泣く日常を手放したり。私が悲しみに耽る中二人を割いた張本人の女が幸せそうな顔して笑ってたり。今まで私がいた場所を当たり前のように奪ったことに後ろめたさも感じてなかったり。何故か綱吉も満更ではなさそうだったり。

例えばそんな綱吉達を不審に思った私がいろいろ調べていくうちに綱吉に裏切られたことを知って絶望したり。その女が私に似ていたのではなく私が偶々その女に似ていたという事実を知ったり。最初から綱吉は私を通してその女を愛していたことが分かったり。

例えば心に傷を負わされた私が塞ぎ込むようになってよからぬことが頭を支配するようになって。物騒なものが私の机の中に溜まったり。入りきらなくなったそれらを手にとうとう私は女のもとへ足を運んだり。一面に広がる赤を見ても何も満たされることがなく物足りなさを感じたり。

例えば私の脳内で解決策が思案されてそれを実行に移すべく綱吉を夜の空き地に呼んでみたり。呼ばれた綱吉が訝しげな表情で私を見てきたり。私の握る凶器に驚き始めたり。逃げようとする綱吉を捕まえて押し倒して上に乗ってみたり。

例えば例えば例えば。全部ただの仮定。つまらない想像の断片でしかない。そこに真実が隠されているのか、ただの戯言なのか…。例えばに隠されたいくつもの話は少しずつ姿を露にしている。


例えば綱吉があの時私を捨てなかったら。

例えば私があの女に似ていなかったら。

タトエバ、私がこの手を振り下ろしたらその先は―。


仮定に葬る


(タトエバ)
(翌日重なった真っ赤な二人が発見されたり―…)

2012.05.14


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