フェンスに近寄り下を見下ろすと、…なっ!? 『うわあああ、幽霊じゃんよ!成仏、成仏してえええ!』 沢田くんが宙に浮いてる!呪いにきたのかこいつ!まじ怖い。南無阿弥陀仏!なんだっけ、幽霊払うの。りんぴょうとーしゃ、えーっと、なんだっけえええ! 「みょうじ、勝手にオレを殺すな」 『だって飛んでんじゃん、死んでんじゃん。霊体だろお前!』 「それよりみょうじ、付き合うって言ったな」 『言った言った言いました!だから成仏してお願い、怨まんとって!』 「だから生きてるって」 沢田くんはフェンスを乗り越え私の目の前へ着地した。やっべ、殺られる! 「みょうじさん、落ち着いて」 『変身解除!?死んでんのに!』 「何度も言うけど、オレ死んでないから」 『だって、飛び下りたじゃんよ』 「飛び下りて、飛んだんだ」 『ごめん、わけ分かんない。お前人間じゃないだろ』 「そんなことより、みょうじさん言ったね」 そんなことよりって。最後まで説明しろよ気になる。結局のところコイツは人間じゃないってことでオーケー?あ、でも変身してたから飛べるのか。プリ●ュアみたいなもんか。 「約束はちゃんと守ってもらうよ」 『何の。え?』 「付き合ってくれるんだよね?」 『いやいや、詐欺だ!』 だってプリ●ュアのノリで飛べたんだろ!私は沢田くんが死んじゃうと思って言葉を繕ったんであって!とにもかくにも私はハメられたんだ。 「自分の言った言葉には責任持った方がいいよ」 『うるさい』 「それと、ちゃんとさっきの言葉、録音させてもらったから」 『え?え?』 「何なら校内放送で流してもいいけど」 『君は何と言うか悪魔だな。とりあえず立派な詐欺師になれると思うよ良かったね』 「うん。ありがとう」 『あはは、褒めてねぇよ』 なんだコイツ、まじうぜぇ。詐欺に失敗して捕まってしまえ。 「で、この録音テープを校内放送で流されるのと、オレと付き合うの。どっちがいい?」 『それって二択あるようで実は一択しか選べるのないぞ、おい』 「はは、そんなことないよ。さあ、どっち選ぶの?」 どっち選ぶか分かってるくせに。ニヤニヤしやがって感じ悪いな沢田くん。 『……付き合いますよ付き合いますー。これで満足か』 「わっ、本当?嬉しいよ。これからよろしくね。よし、じゃあ帰ろっか」 やっと帰れる。帰れる代わりに大切なものを失った気がするけど。とりあえず帰ったらツイッターで今日の出来事を呟いて慰めてもらおう。呟くっていうより、ぼやくって感じだが。できれば解決策も一緒に考えてもらおう。脱恋人を目指して。いやまあ恋人になったつもりはないけどね。あははっ。 ……しっかり繋がれた右手が痛いなう。 本日、厄日なり (あ。明日の朝、迎えに来るからちゃんと待っててね) (来んな。朝くらいゆっくりさせてよ) (オレがわざわざ迎えに来るって言ってるんだよ) (わざわざとか思ってんなら来なくていいわ。迷惑) (そんなにこのテープ流してほしいんだ。みょうじさんって案外マゾなんだね) (是非迎えに来てくださいお待ちしておりますこのやろう) (あはは、始めから素直にしてればいいのに) ((生まれて初めて殺意芽生えた)) ――― 〈この胸の高鳴りを俺は知らない〉の夢主を女の子Verで書こうと思ったらこうなった。何だか長いね。 2012.10.22 |