「すみません。道を教えていただきたいのですが」 おっと困った。厄介なことに巻き込まれたぞ。どうしよう。 今日の晩ご飯はなんだろう。ハンバーグがいいなハンバーグ。あ、グラタンでもいいなあ。 そんな頭の中が晩ご飯パラダイスだった私をひきとめたお兄さんはどうやら道を聞きたいらしい。 それは別にいいんだ。道を教えるくらいなんともないんだが。厄介なのはこの手である。物凄い力で腕を掴んでこられたもんだから流石に怖い。 ちゃんと道案内してあげるから、細身なのに恐ろしく力の強いその手を離しておくんなまし。腕ちょんぎるぞ。 「どこに行きたいのでしょうか」 「そうですねぇ。ひとまずあなたの家までお願いします」 変質者が現れた。 ▽にげる …… にげられない!! まじかよ、逃げられないのかよ。HP残りわずかで他に手持ちもいなかったから仕方なく逃げるを選択したのに、にげられない!の六文字が表示されたあの絶望感よ。あれトラウマだからな。目の前が真っ暗になったからな。 それと同じ現象が三次元でも起ころうとしている。つまり相手はモンスターなのねそうなのね。仕方ない、いけっ!サザンドラ!はかいこうせん!!殺す気か。人に打ったら死んじゃう。例えそれが悪人でも。となるとあのマントは、いや、なんでもない。 「あの、何でうちなんですか?うちは関係ないですよね」 「何故って……それを今言わせるのですか。こんな公の場で」 公の場で言えない理由でうちに来たいってなんなの、犯罪予告されてるの私?こんな白昼堂々と犯罪予告されるなんて夢にも思わなかったよ。そんな人に腕掴まれてるとか死亡フラグじゃない?早急にはなせよコノヤロー。誰かこの人捕まえて。 「まぁどうしてもと言うのならお教えしますけど」 「いや、やっぱりいいです」 「遠慮しなくていいんですよ。僕はただ、あなたの家に行き男女の営みをしあなたを僕色に染めあげようと思ってるだけです。分かりやすく言うとセッ、」 「言わせねぇよ?!」 何これ電波?私はそんな悪質で破廉恥な電波は受信してません、18歳未満です。保護されています。 早急に帰りたい。もちろん1人で。あったかい我が家が待っている。だから帰らせて。 「さて、それでは行きますか」 「は?」 「おや、僕は理由を述べたのですからこれであなたが断る理由はないはずです」 断る理由しかなかったのだけど、やっぱりアダルトな電波だから子供はキャッチできないのかもしれない。意思の疎通が困難だもんな。 確かに帰りたいとは言ったが、こんなオマケはいらない。私単品で帰りたかったんだよ、ついてくんな。セット料金で安くなったとしてもいらない。私がほしいのはダブルチーズバーガーのみであって、ポテトやジュースは今お呼びでないの。ハンバーガーだけ食べさせて。 「さぁ、僕とあなたの愛の巣へ行きまゴフッ!」 「僕の並盛を汚さないでくれるかい」 「お兄ちゃん!」 笑顔で私の家に向かおうとしていた男をなぎ倒してくれたのは、我らがヒーロー、お兄ちゃんである。ナイスタイミングだよお兄ちゃん。ヒーローかよ。ヒーローか。ワンパンマンにも負けないワンパンっぷりだったよ。最高だよお兄ちゃん。 いつも誰彼構わずトンファー振り回すとかマジでやめろよご近所迷惑だよ、私が恥ずかしいだろ!!って思ってたけど、初めてそのトンファーに感謝したよ!殺傷力が高いって素晴らしい。ただ今日限りな。明日からは慎ましやかにいきてくれ。 「なっ!雲雀くんがお兄さんだったなんて……!」 「え、あれお兄ちゃんの知り合い?ひく……」 「ふざけないで、僕がこんなイカれ南国果実と知り合いなわけないだろう」 そうか、お兄ちゃんは並盛の秩序で有名だから一方的に知られているのかもしれない。もしくは今までに咬み殺した不良の一人で恨まれているとかね。 嫌だよそんな恨み買いまくってるお兄ちゃん。間違っても私を人質に取られないようにしてくれよな。戦地に赴くなら1人で行ってくれ。薄情な妹である。面倒ごとはごめんなんだ。 「つれないですねぇ。あんなに体を交えた仲ですのに」 「え……」 「ちょっと、変なこと言わないでくれる」 ちょっとディラン、この変質者さんとお兄ちゃんはそういう関係だったの?おいおいキャサリン、勘弁してくれよ。そういうって、そっち系のそういうだろ?そうよ、アダルトな電波に乗せちゃう系よ。フッ、お兄ちゃんに限ってそんなはずはないだろう? そうだよね、ディラン。そのはずなんだよディラン。でもキャサリンの言うようにそう言う関係としか私は思えないよディラン。頭の中のディランマッケイなだぎ武とキャサリン友近が私を余計に混乱させる。 え、だって確かに言ったよね、体を交えたって。それってつまりはあれでしょ、大人の階段五段飛ばしくらいで駆け上がった先にあるアレソレでしょ。 「クフフ。そういえば初めての時、僕が君の弱い部分を知っていたために君はすぐ倒れましたね」 「だから何?」 否定しないのかよ!そんな事実はないって否定してよお兄ちゃん! 初めての時からお兄ちゃんの弱い部分を知ってたとかもうそんなの……。相性抜群かよくそっ。前世からの因縁じゃねぇの、それ。エロ同人かよ!よかったな!!!よくねぇわ。冷静に自分をナンパしてきた男と自分の兄がそう言う関係って嫌だわ。まさか私に声をかけたのもお兄ちゃんに顔が似てたから??勘弁してくれよ、自分の顔を鏡で見るたび思い出しちゃうよトラウマだよ。 「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんが新しい道に踏み出しても嫌いにはならないから安心して。けどしばらくは近づかないで」 「は?」 「周りの目とかいろいろ辛いこともあると思うけど私は味方だからね。けどしばらくは関わらないで」 「なまえ、それってどういう、」 「そこの南国果実さんと末永くお幸せにっ!それじゃあ私、先帰るから」 「ちょっ、待ちなよ!」 「絶対ついてこないでさようなら!」 「あ……」 お兄ちゃんの恋人が男だったなんて。いや、偏見は良くない。愛し合ってるなら問題ないわ。それに南国果実さん美形だったしお兄ちゃんとお似合いだと思う。私は応援してあげなきゃ。 けどしばらくは夢見が悪いと思うのであと1ヶ月くらいはお兄ちゃんと距離を置きたいです。帰ったら鍵しめとこ。ひどい妹である。 道案内 (君のせいでなまえに変な勘違いされたじゃないか) (クハハ。見ていて面白かったですよ。ただ僕としては君なんかよりなまえと関係をもちたいのですが) (気安くなまえの名前を呼ぶな。それに君みたいな奴になまえは渡さないよ) (渡してくれなくて結構です。奪いに行きますから) (そんなこと出来ないように君はここで咬み殺す) (おやおや。怖いですねぇ。仲良くしてくださいよお義兄さん) (君にお義兄さんなんて呼ばれる筋合いはない) 2011.08.20 |