ゴツン! そんな音が辺りに響くと同時におでこに走る激痛。 階段で躓いたあたしは周りに掴むものがなくダイブ。落下地点には青いパイナップル。 あ、ぶつかる。 そして響いた音は冒頭のもの。 痛い。青いパイナップルが下敷きになったからかおでこ以外は平気なのだが、ピンポイントでおでこが痛い。われそう。 この石頭めが。頭じゃねえや、おでこだ。あれ、おでこも頭に入るのかな?まあ、どちらにせよパイナップル堅いんだよ。でも今回ばかりはあたしに非があるので一応謝る。 『ごめ、ん、よ…?』 いつもよりいくらか、いやかなり低い声。あ、普段のあたしの声と比べてってことね。 この声はあたしのものではない。聞いたことはあるが…。恐らく青パインのものだろう。目の前にあたしが居ることからしてあたしの声でないことは確かなのだから。 おーけー。分かってるよ分かってしまったよ。これはよくある俺がアイツでアイツが俺でってやつね。 んなバカな! 『おい、起きろパイン!いや、あたしの頭はパインじゃないけど。ん?今のあたしの頭はパインだ。ややこしいわ!パインパインってわけ分からん。…パイン?あれ、パインってなんだっけ』 パイン?あ、パインはアイツだ、変態のことだ。危ないところだった。パイン言い過ぎてパインの本来の意味を忘れるところだった。取り乱すなあたし。 「……」 『…。まだ起きないのか!この軟弱者!』 とりあえず肩を掴んで揺らしてみる。某赤い彗星の妹さんのようにひっぱたいてやろうかとも思ったがこれはあたしの体だ。大切に扱わなきゃ。 「…ん。……くっはあ!ちょ、揺らさな、痛い、頭痛いですから」 『遅いお目覚めだな。呑気な奴め』 ようやく目をさましたパインが頭の痛みを訴えてくる。知ってる。揺らしてるあたしの方も痛み増してるから。ばかやろう! ダメだ。錯乱してるよあたし。 「こんなに痛いとは…。なまえはとんだ石頭ですね」 『ナチュラルに話してますけど今の状況分かってます?』 「…おや、どこかで見たことある顔だと思ったら僕じゃないですか。ドッペルゲンガーですかね?」 『いらない。そういうボケいらないから』 ボケてる暇があるならこの状況の解決策を考えてほしい。 「クフフ。なまえのために場を和ませようと思ったのですよ」 『うん、そういう計いもいらないよ。そしてあたしの顔でクフフとか言うな』 「そうですね…これはなまえの体」 うわ、ゾワッてした。何かこう…うん。 『パイン、はやまるなよ』 「なまえの体は今僕の手中にある」 『落ち着け。いや、落ち着いてくださいお願いします』 「クハハハハ!ようやく手にいれました。これであなたを好きに扱える」 『触るな。変態。触るな!』 やっちゃったよ。こいつやらかしちゃったよ!そうだよこいつは変態パインですもの。そりゃやっちゃうわ。 「やはり僕の思ってた通りなまえはなかなかに胸が『召されろ!』クッ!」 奴があたしの胸をさわりながら何かほざいたのでおもっくそ頭突いてやった。もしかしたらこれで元に戻れるかもという願いもこめて。 「い、たいですよ、なまえ!」 『うるさい、痛いのはこっちもだ。だが仕方ない、喧嘩両成敗』 「違います、何か違います」 結果から言おう。戻らなかった。ただおでこの痛みが増しただけで、俺がアイツで以下略、な状況は変わらなかった。 まあ奴があたしの胸から手を離してくれたから良しとしよう。 『で、これからどうする』 「どうすると言われましても…。というか僕の姿で涙ぐまないでください」 仕方ないだろう。痛いのだから。 『あたしとしては非常に不本意だが戻るまで一緒に過ごさないとなって思うんだけど』 「ようやくなまえの口から結婚の話がでましたね」 『んな話してねぇよ』 めでたい頭だなこのやろう。とんでもない変換システムだなその脳は。 「僕も賛成ですよ。なまえと24時間イチャつけるのですから」 『イチャつかねぇよ。一緒にいるだけでも嫌なのに誰がイチャつくか』 「またまた、本当は僕と離れたくないくせに。クフフ、照れやですね」 『お前があたしの体に変なことしないか見張るんだよアホ』 さっきみたいにあたしの体に好き勝手されたらたまったもんじゃない。そんなことされたらあたしもうお嫁にいけない。 「いずれは僕と一つになるのですから、その時のためになまえのことを隅から隅まで知っておかないと」 『そんな時は一生きません。ですから知らなくて結構』 「恥ずかしがりやなんですから」 このおめでたい頭かち割わりたい。 ああ、なんでこいつと入れかわってしまったんだろう。他にも人はたくさんいるのに。よりによってのこの変態。 「運命、なんてベタすぎますかねぇ」 『ベッタベタのギットギトだよ!油汚れか!』 「ああ、油ものの洗い物が嫌なら僕がやりますよ。なまえのステキな旦那であり主夫になる僕が」 『勝手にやっとけ』 これからこの変態とどうやって過ごしていこう。 これが本当に運命だというのならあたしはこの運命を呪います。 ちくしょう。運命なんてくそくらえだ! 相手選びは慎重に (ぶつかる相手、明らかな人選ミスです) ――― 前に中編でぅpしようと思ってたもの。 でも中編が完結しないから短編としてぅpしてみた。いや、中編完結させろよっていうね。 2011.10.09 |