リク

□変態模様
1ページ/2ページ



「名前…」

『んー?』

「なんだかムラムラするんだけど」

『…は?』


応接室であたしと雲雀はおのおの好きなことをして過ごしていた。あたしはソファに寝っ転がり本を読んで、雲雀は中学校の風紀の仕事にしては病院絡みだったりと規模のでかい書類整理をしていた。その途中にムラムラするなんて言われても。


『雲雀疲れてるんじゃない?』

「そうかな。じゃあ疲れをとるためにご奉仕してよ。メイド服で」

大丈夫?


主に頭とか。恐らく大丈夫じゃないよね。唐突に欲求不満なのを訴えられて、あたしはどうすればいいんだろう。疲れてるとしてももちろんメイド服でご奉仕なんかしない。せいぜい肩をもんであげるくらいだ。制服のままでね。


『何で突然変なこと言いはじめるのさ』

「名前のせいだよ」

『あたし?』


あたしはさっきも述べたように寝っ転がって本を読んでただけ。雲雀に何かした覚えはないのだが。


「名前がスカートで寝っ転がるから下着が見えそうで見えなくて…」

『やめい!』


静かに書類整理をしながらそんなことを考えてたのか!びっくりだよ。


『変態か!』

「…失礼だね。僕は別に他の草食動物にはこんな気持ちにならない。ムラムラするのは名前だけだよ」

『嫌な特別だな』


あたし限定でムラムラされても嬉しくないよ。だって雲雀とは恋仲ではないしそういう感情も持ち合わせていない。今の関係はただ風紀委員会に所属している委員長と委員という関係だ。雲雀があたしを名前で呼んでるのはあたしと同じ名字の奴が風紀委員にいるから。特別な意味なんてこもってない。


「嫌じゃないだろう。素直に喜びなよ」

『嫌だよ。ムラムラするとか言われて喜ぶ人なんてごくわずかだよ』

「名前はその僅かな人間の1人じゃないか」

『ちっげぇ!』


こいつのある意味で素晴らしい頭をどうにかしてくれ。あたしにゃ手に負えない。


「名前のせいでムラムラしてるんだから責任とりなよ」

『無理。荷が重すぎる』

「大丈夫だよ。優しくするから」

『全然大丈夫じゃねぇよ!』


優しくって何を?!何ってナニをだよね、分かってる。ムラムラって言ってた時からそんな展開になるんじゃないかって薄々気付いてた。分かりたくなかったけど。…つーかムラムラって言い過ぎじゃね?


「じゃあ激しいのがお望みかい?」

『そうじゃない!激しくても優しくてもお断りだ』


こんなところで大切なものを失ってたまるか。あたし初めては好きな人とって決めてるから。いや、あたしだけじゃなく基本女の子は皆そう思ってるだろうけど。


「わがままだね」

『雲雀には言われたくないよ』

「まぁ名前の意見なんて、はなから聞くつもりはないけど。だから存分に楽しませてもらうよ」


そう言ってあたしの上に覆い被さる雲雀。えええ、ちょ、あたし危険。貞操が危険にさらされてるよ。


『雲雀どけて』

「言っただろう、名前の言うことは聞くつもりがないって」

『殴るぞ』

「やれるものならやってみなよ」


ガシっと雲雀に片手で両腕を掴まれる。なんとか離してもらおうと腕を動かしてみるがビクともしない。どんだけ力こめてんだよ。痛いよ。流石暴君風紀委員長だな。うわ、漢字の羅列すご。…そんな場合じゃないんだって!


「名前から誘ってきたんだからね。見えそうで見えない下着、スカートからのびる白い脚。…考えてたらまたムラムラしてきて下腹部が、」

『黙ろうか』


この変態どうしてくれよう。…今の状態だとどうすることも出来ないけどさっ。


「じゃあ遠慮なくもらうよ」


じゃあってなんですか。どういう話の流れでそうなった。そして遠慮しろ!慎め!

!!
ノオォォォ!雲雀の顔近いよ!まずい、あたしはファーストキスも好きな人とって決めてるんだ。雲雀になんかやらぬ!


『どっせい!』

「くっ…!」


雲雀が痛みに悶え力が弱まったすきに、拘束されていた手をどけソファと雲雀の隙間から脱出。よくやったあたし。


「…名前、やっていいこととやってはいけないことの区別がつかないのかい」

『その言葉、そっくりそのまま返してやんよ』

「僕はいいんだよ。…名前が今やったことは男には絶えがたいことなんだからね」


若干の涙を目にため、男の大事な部分を押さえ内股に座り込んでいる雲雀。そう、あたしは雲雀の大事なものを思い切り蹴り上げたのだ。手はばっちり拘束されてたけど足は自由。そりゃもう蹴るしかないよね。


『もとはと言えば雲雀が悪いからね。ムラムラなんかして…未遂だから許されるけどさ』

「何言ってるの。ムラムラさせたのは名前でしょ。それに事後でもちゃんと責任をとってあげるよ」

『結構だ』


こんな変態と生涯をともにするなんて無理。体力も精神も1日2日で底をつきそうだな。


「ひどいじゃないか。僕は真剣に名前を愛してるのに」

『雲雀…。…涙目で下半身押さえて蹲りながら言われてもときめかないよ』


せめて…せめて体勢直してから言いなよ。今の体勢だとときめかないどころか引くよ。うん。


「名前には分からないだろうけど、本当にこれ痛いんだからね」

『自業自得だ。これからも変なことしてきたら蹴るから。そして風紀委員やめるから』


今後も貞操をねらわれるのならこの委員会を辞めることが最善だろう。蹴り上げ続けるのも何か嫌だし。


「分かったよ。もうこんな痛い目にはあいたくないからね」

『ちゃんと学んだか』


改心するくらい痛かったんだ。少しばかり罪悪感が…。いやあたしは悪くないんだけど。まぁ、これにて一件落着かな。


「しっかり学んだよ。…今度はちゃんと足の自由も奪うからね」

『本日をもって風紀委員会、辞めさせていただきます』



変態模様


(変態事件、落着してないじゃないか!むしろ悪化…。そしてもう1度言うがあたしも雲雀もムラムラって言い過ぎ!)


→謝罪

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ