リク

□秘密の一時
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窓際の一番後ろの席。ここはあたしにとって特別な場所だ。

授業中、この席はあまり目立たない。みんなが熱心に課題に取り組む中、あたしはこの席で特別な時間を過ごす。

窓に寄り掛かり、生徒が問題を解き終わるのを待つ雲雀先生。先生はある程度教室内を周ったあと、必ずあたしの方へ来て窓に寄り掛かるのだ。
カリカリと鉛筆が紙に擦れる音だけが響く。その音に混じって先生はあたしのノートにくせのない綺麗な字で文字を書き込む。
書き込まれた短い文を見て、つい頬が緩んだ。緩む頬をそのままにあたしも先生の文字の下に返事を書き込む。
そうだ、友達にお昼を一緒に食べれないことを伝えなければ。きっと理由をしつこく尋ねられるだろうけど適当にいなしておこう。

先生はまた窓に背をあずけて生徒が問題を解き終わるのを待つ。その間も先生の視線はあたしに向けられたまま。あたしも先生の方を見つめ続ける。すると先生はチラリとクラス全体を見やってからあたしのすぐ側へ近付いてくる。何だろうと考えている間に先生の少し薄い唇が頬へ触れた。
ゆっくりと離れていく先生。
ペンを置く音が聞こえはじめ、問題を解き終わった人が手持ちぶさたにペンを回したり、机に突っ伏したりしている。
先生はそれを見て教卓へと戻っていく。

何事もなかったかのようにあたしと先生はクラスの空気に溶け込む。
今あった出来事には誰も気付かないだろう。

ただ、赤く染まったあたしの頬だけは、ごまかすことができそうもない。

一瞬目があった先生が、少し口角をあげペロリと唇を舐めた。それを見てあたしは、お昼ご飯の時に先生へ仕返しをしてやろうと決意しながら、真っ白なプリントの上に突っ伏した。


秘密の一時


(授業の時はよくもキスしてくれましたね。バレたらどうするんですか)
(名前が物欲しそうな顔で僕を見るからだろう)
(そんなわけないでしょう!まったく、もし誰かに見られて困るのは先生なんですからね)
(…ねぇ、今は名前と僕だけなんだから名前で呼びなよ)
(ここは学校です。生徒と教師なんですから)
(…ふーん、じゃあ聞き分けの悪い生徒には先生がお仕置しないといけないね)
(は?…いやいや。も、もうお昼休みも終わりますし)
(次の授業は自習らしいよ。どうせ君は友達と喋って無駄な時間を過ごすだろうから、僕が名前だけに特別授業を設けてあげる)
(けけけ結構です!)
(これはお仕置なんだから君に拒否権はない)
(職権濫用よくない!体罰よくない!)
(これは立派な教育の一環だ。それに別に苦痛は与えないよ。まぁ後から腰には響くかもしれないけど)
(なっ!あたし悪くないのにィィィ!)


→謝罪



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