リク

□BABY!BABY!BABY!
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『ベルー、おーいベルー』
「……」
『おいおい、目だけじゃなく耳まで隠さなくても…』
「……」
『……。お話をしよーうー。耳の手をはずせー』
「……」
『わかったよー…』

ここまでのくだりを清々しいほどに無視である。ベルは頑なに耳を覆っている手を外さない。何が彼をこんな風にさせているのだろうか。せっかく昔流行った某映画の雪だるま云々の歌にのせて、話がしたい意思を伝えたと言うのに。何が不服なのだ。まぁでもあの映画見てないと分からないよね!そういうわたしも見てないけども。歌だけは、ルッス姐がよく口ずさんでいたから覚えたんだよ!戦闘中も隣で口ずさむんだからシリアスムード台無しだよ。倒された相手も報われないでしょうに…。
閑話休題、ベルは何故わたしの話を聞こうとしないのか。わたし、何かしたかな…とも考えたのだが、全くと言っていいほど覚えがない。
今朝一緒にごはんを食べた時はいつも通りだった。そう、いつも通りしししと笑いながら、レヴィをターゲットロックオン。かわいそうな標的レヴィはナイフまみれ。で、それからわたしはベルに会うことなく、たまの休日をマーモンとイチャイチャして過ごしていただけだ。イチャイチャと言ってもふよふよ浮いているマーモンを捕まえて談話室でずっと一方的に抱きしめていただけだけど。
いやでもまさか、マーモントラップに本当に引っかかるとは思ってなかったよ。トラップといっても大したものではなく、マーモンが来る前に廊下にお金を置いて、柱の影で網を構えて待つという古典的なものである。マーモンは廊下にあったお金がトラップだとは露知らず、わたしの目論見通りに拾いにいったのだ。飛んで火に入る夏の虫とはこのことよのぉ!!そこでわたしの見事な網さばきによりマーモン捕獲。そこからは逃げられないようしっかりと胸に抱き、談話室でイチャイチャタイムだ。むぎゅーっと抱きしめた時、マーモンからむぎゃっとくぐもった悲鳴が聞こえたような気もするが、恐らく空耳だ。……恋はハリケーンなのである。まぁマーモンも、わたしお手製のレモネードあげたら逃げようともせず、おとなしく腕におさまっててくれたから問題ないだろう。いやあ、わざわざアメリカまで行って教えてもらったかいがあったよ。と言ってもアメリカには任務で行ったんだけども。あの時に行きつけだったバーのママ、ありがとう。おかげでマーモンのハートはガッツリ掴めたよ!!さすが男と女、どっちの気持ちもが分かるママだね!多分ママはルッス姐といい友達になれるよ!!
と、また話がずれた。だからつまり、私はマーモンとじゃれていただけで、ベルに何かした覚えはない。朝会ったあと、次にベルとあったのは私たちのいる談話室にベルが入ってきたとき、つまりほんの少し前の出来事だ。談話室に入ってきた瞬間、ベルは口をあんぐり開け、私たちを凝視した。ベルに気づいた私は手を振ったが、その途端あんぐりあいていた口をへの字に結び、スタスタと私たちの座っているソファとは離れたソファへ向かった。
ということはだ、談話室へ来た瞬間に不機嫌になったのか、それか、もともと不機嫌で今は八つ当たりのような、誰とも話したくないという状態なのだろうか。恐らくは後者だろうな、うん。それならば話は早い。機嫌が直るまでそっとしておけばいいのだ。そういうことなら早速マーモンと遊んでこよーっと。

『マーモンマーモンおいで!……マーモン?』

おや?マーモンのようすが……
もちろん進化するわけではない。様子というより、マーモンの姿が見えない。ソファの上はマーモンにかけていたブランケットだけが残されている。…わたしがベルを構い倒してる間に逃げたなあのやろう……。これだから霧の守護者ってやつぁ!!でもレモネードちゃんと飲み切ってくれてるところは素直に嬉しいよ!かわいいなマーモン!!でもこっそり逃げるなんて無しだよ、寂しいじゃんかよ!!…五円チョコでもばらまいとけば来るかな?…あ、それよりマーモンの部屋から私の部屋まで五円チョコを置いていけば、マーモン私の部屋に誘導できるんじゃね?名案じゃね?
マーモンのいなくなったソファに寝転がって、次のマーモン捕獲作戦を真剣に考える。五円チョコとかネタじゃないからね、やると言ったら私やり通すからね。ということで五円チョコで誘導作戦に決定。善は急げだ、これからチョコを買いに行こう。

『よっ、ぎゃぶっ!』

よっこらしょの掛け声で起きあがろうとしたわたしの背中に、何かがのしかかってきた。
おい、今の聞いたか?ぎゃぶ!だってさ。女の出す声じゃねぇな。…自分で言っといて悲しくなってくるからもう追い詰めるのはやめよう。

『重いよー、つぶれるよー、内臓飛び出るよー』
「そんな簡単にスプラッタになってたまるかよ。第一名前よりは軽いし」
『おいこのマッシュ、ふざけたことをぬかすなよ?』

背中の重しは、わたしのことを心配して退くどころか、憎まれ口を叩いてくる。ベルより重いとかそんな…。まぁでも私は夢と希望が詰まってるから重くてもしょうがないんだけどね!溢れそうなくらい夢と希望でいっぱいだから!!むしろ溢れてるから!!断じて脂肪ではない。
まぁそれはいい。そんなことよりもこのベルことマッシュ、あ、ちがう逆、マッシュことベルの動向がよくわからない。さっきまでは俺に触れると怪我するぜぇ!!!という雰囲気だったのに、今度は構ってくれなきゃ嫌!!と女々しくて女々しくて女々しくて辛いよ状態だ。彼の心境に如何なる変化が訪れた。……多少の脚色はご愛嬌ということで。

「…名前はさ、マーモンのこと好きなわけ?」
『え、好きだよ大好きだよ。それが何か?』
「そうじゃねーっての…。だからさ、どれくらい好きなんだよ」
『食べちゃいたいくらいには好きだよ、うん』
「きっも」
『おいこらマッシュ、喧嘩売ってんのか』

わたしのマーモンへの愛をきっもの一言で一蹴しやがったこのマッシュ、どう料理してやろうか。カレーに入れるてやろうかこのやろう。カレーに入れたらキノコの味なんて消えちゃうんだからね!ざまーみろ!!

「…だからさ、彼氏にしたいくらい好きなのか、って聞いてんだよ」
『えっ、えっ?』

そう言いながら相変わらず上に乗ったままの体制で、ぎゅーっと腰回りに力を入れてきたマッシュことベル。な、なんなんだ、この可愛らしい生き物は…。わたしの知ってる生意気ボーイじゃないぞ…。不覚にもときめいたじゃないか。あ、これが噂のギャップ萌えか…。心臓バクバク鳴ってるけど大丈夫かな、聞こえてないかな…。もう離れてくれないかな…。

「ししっ、名前心臓バクバクいってんじゃん」
『なっ!そんなことはないからほんと!』
「顔真っ赤ー」
『えぇい、うるさいぞ貴様!』
「いいからさ、マーモンとオレ、どっちが好きなわけ?」
『質問がすり替わってる、だと…?!』

甘えん坊ベルからドエス王子にジョブチェンジしたベル。今日はキャラの入れ替わりが激しいんですね。総選挙か何か?

「なぁ、どーなの?」
『まぁマーモンかな』
「……お前そこは普通空気読むとこだろ…」
『わたし赤ん坊とか子供とか大好きだからね食べちゃいたい』
「…あっそ……」
『あ、でもね…ベルとの子供はもっと好きになると思うよ』
「…は?」

何を言われたかイマイチ分かっていないベル。
ポカーンと開いたベルの口に拳でもつっこんでやろうかな。女の子にここまで言わせた罪は重いんだからね!!



BABY!BABY!BABY!

(それじゃあ私、愛しのマーモンのとこ行くから)
(それより一緒に未来の王子と姫作る方がいいんじゃねぇの?)
(ばばばばかじゃないの!何いってんだか!それじゃあまたね!)
(ししし、おもしれぇ)



→謝罪

 
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