『武、今日の晩ご飯何がいいかしら?』 「んー、名前の作るもん全部美味いから何でもいいぜ」 『まあ嬉しい。でも何でもいいが一番困るのよ。知ってんのか』 「はは、名前こえぇな」 『あらやだ私ったら。で、晩ご飯何がいいの』 「んー、じゃあ煮物とか和食がいいのな」 『うふふ、分かったわ』 そんな今朝のやり取りを思い出しながら帰ってきた我が家。 結婚してから半年近くたつが、未だに玄関を開ける時にはドキドキする。プレゼントの包みを開ける時みたいなドキドキだ。 玄関を開けると妻である名前が出迎えてくれた。 『おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも私?』 お決まりのセリフを言いながら。 「んー、じゃあ冷めたら悪いから先に飯にすっか」 『その気遣い嬉しいわ。でも妻が誘ってるんだから飯より先に召し上がれよ』 「はは、名前こえぇな」 『あらやだ私ったら』 そう言いながら両手で頬を包み込む名前の仕草に胸がキューっとなる。 『で、結局何から?』 「ん、やっぱ飯先に食おうぜ」 『は?私よりも飯?食欲優先なの』 「そうじゃねぇって。飯食った後に一緒に風呂入ってから名前にするのな。俺、好きなものは最後に食べる派だからな」 『そういえばそうだったわね。それじゃあご飯にしましょ』 パタパタと台所へ向かう名前の顔が僅かに赤いのが分かり、俺はつい頬が緩んでしまう 「なぁ、名前」 『何かし、』 チュ 『…好きなものは最後に食べる派じゃなかったのかしら?』 「つまみ食いは我慢出来ねぇんだ、俺」 『…そうだったわね』 名前はすました顔してるけど耳まで真っ赤になってる。ああすごく愛しい。 「さ、早く飯にしようぜ」 『ええ。おあずけは辛いんでしょう』 「ああ。好きなものなら特にな」 『ふふ、そうね』 これが名前とよく交わされる会話。 なんでもない普通な会話を交わすだけなんだけど、名前と話すことで特別な時間になる。 これからもこの幸せな時間を、俺は名前とずっと過ごしていきたい。 幸せ時間 2011.08.28 →謝罪 |