リク

□幸せ時間
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『武、今日の晩ご飯何がいいかしら?』

「んー、名前の作るもん全部美味いから何でもいいぜ」

『まあ嬉しい。でも何でもいいが一番困るのよ。知ってんのか』

「はは、名前こえぇな」

『あらやだ私ったら。で、晩ご飯何がいいの』

「んー、じゃあ煮物とか和食がいいのな」

『うふふ、分かったわ』


そんな今朝のやり取りを思い出しながら帰ってきた我が家。
結婚してから半年近くたつが、未だに玄関を開ける時にはドキドキする。プレゼントの包みを開ける時みたいなドキドキだ。

玄関を開けると妻である名前が出迎えてくれた。


『おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも私?』


お決まりのセリフを言いながら。


「んー、じゃあ冷めたら悪いから先に飯にすっか」

『その気遣い嬉しいわ。でも妻が誘ってるんだから飯より先に召し上がれよ』

「はは、名前こえぇな」

『あらやだ私ったら』


そう言いながら両手で頬を包み込む名前の仕草に胸がキューっとなる。


『で、結局何から?』

「ん、やっぱ飯先に食おうぜ」

『は?私よりも飯?食欲優先なの』

「そうじゃねぇって。飯食った後に一緒に風呂入ってから名前にするのな。俺、好きなものは最後に食べる派だからな」

『そういえばそうだったわね。それじゃあご飯にしましょ』


パタパタと台所へ向かう名前の顔が僅かに赤いのが分かり、俺はつい頬が緩んでしまう


「なぁ、名前」

『何かし、』

チュ

『…好きなものは最後に食べる派じゃなかったのかしら?』

「つまみ食いは我慢出来ねぇんだ、俺」

『…そうだったわね』


名前はすました顔してるけど耳まで真っ赤になってる。ああすごく愛しい。


「さ、早く飯にしようぜ」

『ええ。おあずけは辛いんでしょう』

「ああ。好きなものなら特にな」

『ふふ、そうね』



これが名前とよく交わされる会話。
なんでもない普通な会話を交わすだけなんだけど、名前と話すことで特別な時間になる。

これからもこの幸せな時間を、俺は名前とずっと過ごしていきたい。


幸せ時間


2011.08.28

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