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□想いは沈む
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所詮は女だ。そんな見下した目でこちらを見てくるコイツをどう負かしてやろうか。女だからってバカにする輩はどこにでも一人はいるみたいで、今目の前にいる男もそう。ポケモンバトルに女も男も関係ないのに。現にジムリだってチャンピオンだって女性はたくさんいる。それなのにコイツは自分が男であるだけで優位に立ったかのように振る舞ってバカみたい。私の後ろで不安そうな顔でこちらを見ているナマエの方へ振り向き、安心させるよう笑みを浮かべ目の前の男へ向き直る。今私は虫の居所が悪いの。私の大切な人に絡んだのが運のツキだったわね。その精神をボロボロにしてあげる。



廃人施設との異名を持つバトルサブウェイ。そこで勝負を終え暇潰しにライモンシティをブラブラと歩いていたら視界に入ったナマエと男。男は汚い笑みでナマエに近付き腕を掴んだ。私の大切なナマエに何してくれるのよ。私は急いでそちらに駆け寄り男の手を払いどけ睨み付ける。男は怯むどころかお友達も一緒にどう?なんて馬鹿げた言葉を吐くものだから私はどうしようもなく腹が立った。

「トレーナーなら、ポケモンバトルで決めましょう」

もし助けに来たのが私じゃなくトウヤだったら、コイツはすぐに引き下がったのかもしれない。未だ廃人施設で腕を振るっている片割れに少しの嫉妬心を抱いた。



『ありがとうトウコちゃん!トウコちゃんはやっぱり強いね』

純粋に褒めてくれるナマエに嬉しさを感じる。
バトルは私の圧勝。相手の手持ち6匹を私は1匹だけで倒し完全勝利を収めた。見下していた女に負けたからか、全く歯がたたずあっという間に敗北したからか、ただただ呆然と立ち尽くす男。実に滑稽だわ。

「さ、ナマエ。行きましょ」
『うん!』

私の横に並び先程の不安げな顔が嘘みたいに満面の笑みを浮かべるナマエ。この笑顔を作り出したのは誰でもない私。私はナマエを守ることができた。
ポケモンバトルだって、大切な人を守ることだって、男女関係なくできること。女だからと下に見る奴なんかに負けるつもりはさらさらない。でもどうしても一つだけ、私が望んでも手に入らない場所を手に入れる可能性を持っている奴等に嫉妬する。女である事実を疎ましく思うことがある。
いずれナマエの横をかっさらって行くであろう男に憤る自分が酷く惨めに思えた。

想いは沈む

(どんなに優れていようとも)
(私もあなたも女だから)
(あなたの隣りを独占することができない)


―――
おうふっ。暗い。
暗いのは苦手なんですけどね。何故かこうなった。

2012.08.24


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