失礼します。ノボリさん、ってあれ? どうしたのですか すみません、ノボリさん知りませんか ここにいるではないですか え?いやいや、あなたはノボリさんじゃないでしょう。確かにノボリさんと同じ格好してますが。あ、ノボリさんのファンの方ですか? おや、ワタクシをノボリではないと見破ったのはアナタだけですよ。他の者は気付きませんでした えぇ、そんなわけないですよ。だって全然違うじゃないですか。絶対みんな気付いてますよ いいえ。気付いたのはアナタだけです。他の駅員は全員ヘコヘコと挨拶してきましたから でもそれがノボリさんと勘違いした理由にはなりませんよ ではアナタたちは自分の上司と同じ格好をしたパッと見コスプレイヤーの見知らぬ人物に、ヘコヘコと挨拶をするのですか? いや、そうじゃないですけど…… そうでしょう。ですから見破ったのはアナタだけです。ワタクシ、アナタが気に入りました。うちのバトルサブウェイに移動しなさい はい?移動も何もサブウェイはここですけど そうではありません え、どういう…… 「失礼しますー。おー、サクラここにおったんかい!…あっ!お、お疲れ様です!」 「ほら見なさい。コイツも気付いていないじゃないですか」 『……クラウド』 「え、え?なんや、その冷めた目。わし何かしたか?」 『いや、だってあんた……。はぁ…』 「うわ、人の顔見てため息とか感じ悪いなっ!って、そうや。こんなことしとる場合やなくて。サクラ、ノボリボスが探しよったで」 『え?』 「待ちなさい。ノボリならここにいるでしょう」 「はい?いや、インゴさんですよね?あれ、ちゃいました?」 『クラウド、ちゃんと分かってんじゃん』 「何の話や」 「そんなはずありません。ここに来てからずっとヘコヘコと挨拶をされました。みんなワタクシをノボリと間違えているのでしょう?」 「いや、確かにそっくりですけど流石に区別つきますわ」 「それなら何故ワタクシのようなパッと見怪しい人物にヘコヘコと挨拶をするのです」 「そりゃ昨日のうちにノボリボスからインゴさんが来られるの聞いとりますから」 「なんですって」 『あたし聞いてない』 「休みやったからやろ。多分ノボリボスが呼んどるのはこの内容について話すためやで」 『あ、そうなんだ』 「ではワタクシは勘違いを……」 『インゴ、さん?みんな見破ってたので、あなたの言うサブウェイとやらにみんな移動させてはどうですか』 「う、うるさいですよ!ニヤニヤしながら言うんじゃありません!このアマが!」 『なっ!アマって!こんの自意識過剰男が!』 「ばっ!サクラ!何言うとんや!」 「そうですよこのアマ!自分の立場をわきまえなさい!」 『またアマって!腹立つ!』 「せやからサクラ、その態度はまずいって!」 「おや、皆様おそろいで。何やら賑やかでございますね」 『あ、ノボリさん!この人いったい何者なんですか!』 「インゴ、こんなところにいらしたのですか。サクラ、こちらはバトルサブウェイアメリカ支部のボス、インゴでございます」 『…え?』 「つまりノボリと同じ役職です。アナタよりも上の立場ですよ。その乏しい頭でも分かりましたか」 『ノボリさんと同じ役職…?しっ、失礼しました!知らなかったとはいえ立場を弁えず失礼なことを申し上げてすみません!!』 「フン、やっと分かりましたか」 『本当に申し訳ありません!…クラウドも知ってたなら言ってくれたら良かったのに!』 「いや、わし何度も言うたで!」 「そうですよ。アナタが聞く耳を持たなかっただけです。まったく、こんなちんちくりんが鉄道員だなんて」 『くっ、本当に申し訳ありませんでした!』 「インゴ、うちの鉄道員を苛めないでくださいまし。サクラはよくできた立派な鉄道員でございます」 『ノボリさん…!』 「ほう…。ノボリが褒めるのですからそれなりにはできるのでしょう…。しかし、言葉遣いがなってませんね。そうですね、ノボリが褒めるほどの腕前も気になりますし、言葉遣いもワタクシが正してさしあげますので、うちのサブウェイに移動しなさい」 「インゴ、うちの鉄道員を勝手に引き抜こうとされては困ります」 「日本の奥ゆかしい言葉遣いを乱すような鉄道員がここでやっていけるとは思いませんが」 「サクラの悪口はやめてくださいまし。言葉遣いで言うのなら、インゴのほうが悪いのではないでしょうか」 「ワタクシは日本で仕事をしているわけじゃないですからね。オマエとは環境が違います。なので比較するのはどうかと」 「それはただの屁理屈でございます。いい大人がそのようなみっともないことをするとは、恥ずかしいですね」 「フン。屁理屈も立派な理屈ですよ」 「立派な?いいえ、屁のような理屈でございますが」 「さっきから聞いてればオマエ、喧嘩を売ってるんですか。いいでしょう、特別に買ってやりましょう」 「喧嘩を売ってるつもりはございません。しかし、インゴがけしかけてくるのでしたらこちらもそれ相応の態度で示しましょう」 「バトルのできるところへ移動しますよ。オマエのみっともない姿をこの目でおさめてやります」 「バトルに負けるつもりはございませんので」 「フン、言ってなさい。では行きますよ」 「えぇ」 「…えらいことになったなぁ」 『あたしのせいじゃないよね?』 (ねぇ、ノボリ知らない?) (あとインゴも。あの愚兄は仕事サボってどこに行ったんだろ) (ノ、ノボリさんならトレインに戻りましたよ) (インゴさんもや。なぁサクラ) (うんうん。御二方とも仕事に戻られてると思います) (ふーん。ところでクラウドもサクラも顔色悪いよ) (そうだね。何か僕たちに隠し事でもしてるんじゃないの?例えばうちの愚兄のこととか) (んな!し、知りませんよ!ね、クラウド!) (そや!隠し事なんてせぇへん!あ、サクラ、もうこんな時間やで!わしらも仕事戻らんと!) (わっ、本当だ!それでは失礼します!) (……エメット、どう思う?) (クダリの部下って嘘下手だね。あからさますぎて笑っちゃったよ) ――― インゴさん好きです。口の悪い感じが好きです。笑 てか長いね。 2012.12.16 |