その他

□終わりよければ全て良し
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現パロ 高校生
シンは生徒会長、ジャーファルは副会長


「シーン!」
「ナマエか。なんだ、また来たのか」
「またって何よ、幼馴染に対して冷たいなぁ」

放課後、生徒会室に必ず毎日やってくる、友人であるシンの幼馴染、ナマエ。彼女は帰宅部であるため、よく暇を潰しに生徒会室へ遊びに来る。恐らくそれは建前だろうが。私の憶測では、彼女は幼馴染のシンに会いに来ていると思う。暇つぶし的な意味ではなく、だ。
彼女の想いはあからさまなものであった。まず放課後は健気にも毎日シンのいる生徒会室へ足を運ぶ。来たのはいいが別段構ってもらえるわけではないので、大人しく空いている椅子に座り、飽きもせずジーっとシンを見つめている。これについては隣で作業している私が気まずいので遠慮してほしい。そして作業を終えたシンと、私と、そしてナマエの3人で帰路につく。私がこの場にいていいのか分からず、遠慮して二人で帰れと何度か促したのだが、どうもナマエが頑なに拒む。幼馴染だから別に今更二人きりが恥ずかしいわけでもないでしょうに。乙女心とは複雑だ。
そんな彼女が生活の一部に組まれている毎日を繰り返していると、自然と彼女のことを考える時間が増えてくる。初めは毎日よく飽きもせず来るな、それならいっそ生徒会に入ればよかったのに。と呆れていたが、日を重ねるにつれ、彼女の髪型が気になったり(因みに今日はゆるめの三つ編みで、結ばれている赤いリボンはナマエによく合っている)、彼女のスカートの長さに目がいったり(膝より少し上で、座ると太ももがチラリと見えてドキリとする)、彼女の口元に目を奪われたり(ぷるんとした赤い唇はとても柔らかそうな上、美味しそうだ)。つまるところ、私は彼女のことを好きになってしまったのだ。このことは今のところ、だれにも言っていないし、これからも言うつもりはない。ナマエの想い人はシンであるから、私の想いが叶わないことは明白だ。だったら別にこの想いを言葉にする必要はない。

「ん?どうしたジャーファル。暗い顔をして」
「え、いえ。そんなことは…」
「わかったぞ、恋煩いだろう」
「はっ?!」
「えっ、ジャ、ジャーファルさんいったい誰に?!!」

シンの適当な一言に、身を乗り出して食いついてくるナマエ。誰にって、あなたですよ。なんて正直に言えるはずもないのに。女性は恋愛話が好きだと言うから当然と言えば当然なのだろうが、ナマエが私の恋愛話に興味を持ってくれることが嬉しい。ただ、その一方で、私が他の女の子の名前を紡いでも笑顔で応援してくれそうで、切ない。

「はぁ」
「そんなに悩むなら告白してみればどうだ?」
「待って、誰に?誰に告白?!」
「シン、適当なことを言わないでください。今のため息はシンが見当はずれなことを言ったことに対してです」
「あ、そうなの?なーんだ、よかった」
「んー?いや、俺の言うことはあながち間違ってないと思うけどな」
「えっ!」
「ははは!早くしないとジャーファルはどこかの女と愛を築くかもしれないな」
「そんなっ!」
「あんたはまた適当なことを…!」

顔が真っ青なナマエと、ニヤニヤ笑っているシンと、恐らく顔が真っ赤であろう私。はたから見れば何が起きているのかさっぱりわからない。当事者の私だってわかりかねているのだから。
そう、シンがニヤニヤしているのはまぁからかっているからだろうと分かる。だが、こんなにもナマエが取り乱すのはなぜだろう。私に女ができると、3人で帰るという関係が壊れてしまい、物寂しいからだろうか。それとも…。
もう1つの自分に都合の良い考えをすると、自然と顔が熱くなる。いや、しかし、彼女はシンが好きなはず。毎日シンに会いにきているし、シンを見つめているし、帰りも一緒だし。けど、毎日シンと共に私もここにいる、シンの隣では私が作業をしている、帰りも遠慮する私を引き止めてくれる。
そういうことだと捉えても良いのだろうか。

「はやくしないと、ジャーファルは誰かのものに、」
「ナマエ!」
「え、はっ、はい!」
「私はあなたが好きです」
「なっ!」
「わわ、私?!え、私も好きです!え、待って、そういうこと?そういう解釈であってる?!」
「はい。ではこれからはシンではなく、私に会いにきてくださいね」
「えっ、うん!信じられない…!けど、喜んで!!」

ポカンと口を開けるシンと、ものの数秒で手に入った顔を真っ赤にして喜んだり慌てたりするナマエ。
冷静さに欠けていたと自分でも思うが、結果オーライということでいいだろう。


終わりよければ全て良し


(シン、ありがとうございます)
(ん、ああ。(俺はナマエを鼓舞しようとしたんだが…まぁ、結果オーライだな。うん))


ーーー
ジャーファルさんと恋に落ちたい。

2016.05.04


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