「出てこい、俺の友達!バクロ、」 「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!ご主人様〜」 「えっ、ナマエちゃん?!」 「ハックション大魔王だよ」 「こんなところでどうしたのナマエちゃん」 「相変わらずだねケータきゅん、、」 背後からドドーンと飛び出した私の攻撃を無効化する、恐ろしい男、その名も天野景太。通称ケータきゅん。彼は特に特徴もない普通すぎることで有名な男である。例え自分の家の前で一人ぼっちで宙に「出てこい俺の友達」と叫んでいてもあくまで普通な男の子なのである。大人の事情で。そう、マンホールに落ちて死に、妖怪になるという、全く普通とはかけ離れた壮絶な人生を普通だと押し通すくらいには大人というのはご都合主義で動いているのだ。補足として彼は生き返っている。おい、本当にこいつのどこが普通なんだよ、なんだよフウ2って。おっとこれ以上こんな発言をするとこれからの話の辻褄が合わなくなってくる、私は何も知らない、妖怪なんてそんなものこのご時世にいるかよ。 「あー!バクロバア呼ぶの妨害されたからその隙にナマエちゃんのほうに妖怪が!!」 「ちょっと、誰が妖怪だって?」 「ちがうんだ!なんていうか、あーもう!出てこい、俺の友達、バクロバ、」 「ご主人様〜」 「ちょっと静かにしててくれない?」 「これだからケータきゅんは、、」 まったく、ノリが悪いぞ少年。お前これがフミちゃんでも同じ対応するのか?違うだろ、フミちゃんだったらもっと懇切丁寧に接するだろ??その優しさを少しは私に向けて欲しいものである。少しと言わず全面的に。いいか、私だってフミちゃんと同じ性別だし、フミちゃんと同じように目と鼻と口と眉毛ついてるからな!!ちょっと配置がずれてるだけでほとんどおなじだから。なんなら手も足もお揃いだわ!ちょっと太さが違うだけで。でもそんなのキュウリだってトマトだって、太いのや細いの、丸いのやスマートなの、いろいろあるだろ。それと一緒だよ。誤差だよ誤差。 ところで目の前の彼、「いけ、バクロバア!あいつの弱点をはかせろ!」って私に向かって言ってるんだけどなに?私の弱点教えて欲しいの?あなた私にそんな恨み持ってたの?ちょっとハックション大魔王ネタ使いすぎたかな。そうだよね、きっとケータきゅん世代知らないもんね。いや、私も同い年だけど。 「ケータくんたらフミちゃんフミちゃんって、私のほうがケータくんのこと好きなのに。ケータくん分からず屋なんだから。意味わからない行動も、バタバタ騒がしいところも、ちょっと冷めてるところも、全部全部好きなのに」 「えっ、、えええええ!!!!」 「えええええ!!はこっちのセリフよ待って何いまの待って!」 突然自分の口が私の意に反してペラペラと言葉を紡いだ。しかもその言葉たちは、言いたくないこと、知られたくないこと、つまりは心のうちに秘めていた言葉たちである。しのぶれど色に出でにけり我が恋は、とあるが、顔に出る前に言葉に出ちゃったよね。なんたる失態。妖怪のせいなのね、そうなのね。 いや、本当に妖怪の仕業なんじゃないだろうか。だって無意識のうちに口が開いて、知られたくないことをペラペラペラペラ話すなんておかしい。それとも、自律神経とかなんらかの神経系に何かあったんだろうか。どちらにしても大丈夫?わたし。 「妖怪が避けたからバクロバアがナマエちゃんにひっついちゃったんだ!」 「さよなら三角またきて四角」 「えっ」 「ばいばい」 逃げるが勝ち。私の長所は潔いことと逃げ足が速いこと。言葉に出ちまったもんはしょうがない。次に取る行動を考えれば逃げてしまうのが一番よろしい。 第一普通に好きというだけならまだいいが、なぜフミちゃんを引き合いに出した。そりゃあんだけかわいいフミちゃんだったらみんなが大好きにきまってるだろ。なんだかんだ言って、私だってフミちゃんフミちゃん言ってるじゃん。女の私がフミちゃんフミちゃん言うんだから、健全な男の子のケータくんが言うのは当然でしょう。 「まってよナマエちゃん!!俺の話も聞いて!」 「いやいいよ、遠慮しとく、ってケータくん速くね??まっ、ぶつかる、ひいいいんぎゃ!」 「わっ、ご、ごめん!」 小学生の脚力とは思えないスピードで突進してきたケータきゅん。厳密に言うと脚力は間違いであるが。あいつ浮いてたぞ。走ったっていうか、何かに掴まれてこっちに向かってきたというか投げ飛ばされてきたというか。え?妖怪?そんなものいるわけないさ。 ところで私の背中にケータきゅんが乗ってる、なんて美味しい状況なの、、。って言ってる場合か。重いわ。同じ体格の男の子がのしかかっていて平気な顔が出来るほど強くないんだ、私。ポケモンでいうとカビゴンののしかかりだろ、死ぬわ。攻撃力抜群だわこのやろう。、、この話題まずい?いまの無しで。カ、カビゴンとか知らね。 「ケータきゅん、臓器破裂する、、」 「え、ああ!ごめんっ!!」 「まったく、どうしたよケータきゅん、、そんなに一生懸命わたしを追いかけて。なに、ファンなの?」 「うん、、俺、ナマエちゃんのことが好きなんだ」 「そ、ん?え、ケータくん大丈夫?妖怪のせい??」 よっ、うっ、かっ、いっ、のー!せいなのね、そうなのね!!ウォッーチ!!いま何時??一大事!!!!ウィースッ!! いや、本当にピンチでしょ、一大事でしょ。都合のいいことも悪いことも全部妖怪のせいなんじゃないかな。妖怪も全ての事象をなすりつけられてたまったもんじゃないだろうな。すまんの。 「ううん、これは俺の本心なんだ」 「そ、それはどうも」 「だからナマエちゃん、俺と、付き合ってください!!」 「えっ、あ、お、お友達からお願いします!!」 「ズコーッ!!なんで!!ていうか俺たちもう友達だし!」 「乙女心は複雑なんだよ!!じゃあね!!」 あっさり付き合うかと思った?わたしもそうしたかったけどね!!自分の思い通りにいきすぎると人間ってやつはこわくなるものなんだよ。ドッキリだったらどうしようとかね。 でも結局はご都合主義だから、明日にはハッピーエンドを迎える自分の姿が見える。一晩置いたら落ち着いて返事ができる。それまで待っててね、愛しのケータきゅん。 景太に告白されるも承諾しなかったナマエ。それでも明日には受け入れる思いで家に帰るのであった。つづく。 to be continued おっと、この終わり方もまずいかもしれない。 2017.10.01 |