冬はやばい。それはもう本当にやばい。やばいぞやばい。やばいだけで会話ができるのは学生の特権だと思う。 そんなことより何がやばいって、無性に甘いものが食べたくなること。寒いから外で運動はしたくない。というかこたつから出たくない。だから動かない。それなのに甘いものの誘惑に負けて食べちゃうからそれに比例して体重も増えていく。いや、もしかしたら重力が強くなっててあたしの体重は変わってないのかも。そうであってほしい。冬になってから乗った体重計はきっと壊れてたんだ。きっとそうだ、そうに違いない。 「んなわけねぇだろ」 『……』 現実から目を背けてたあたしを呼び戻すような一言を言ったのは、不良で10代目バカな獄寺である。一応彼氏だ。 この10代目バカは、ことあるごとにあたしに喧嘩を売ってくるのだ。でも大人なあたしは華麗にかわすけどね。 「てめぇは大人の面影もねぇだろ。ガキが」 ……。イラっ。 え、ガキ?誰がガキだって?ガッキーの間違いかな?ああそれなら納得。いや、こんなこと言ってたらファンに殺される。から、ガキでいいよガキで。…よくねぇわ! 『はん、煙草吸って不良ぶってる若僧に言われたくないね』 「なっ!煙草吸ってんのは不良ぶってるからじゃねぇ、戦闘に使うためにだ!」 『そんなのライターでもマッチでもいいじゃないか』 「ライターもマッチも点火してる間に殺られるだろうが!」 『そんなことは慣れと気合いでカバーできるって』 それに点火するまで敵が待ってくれるかもよ。ヒーローもの見てると変身するまで敵は待っててくれてるし。まじ敵が優しすぎる件。 いや、でも最近は変身の最中でも容赦なく攻撃してくる敵もいるからな。やっぱり慣れと気合でカバーするしかないな。 「できるか、馬鹿」 『馬鹿はどっちだ、10代目バカ』 「赤点ばっかとってるてめぇに言われたかねぇ。その頭は飾りか?」 『それツナに対しても言えるよね』 「そ、そんなわけねぇだろ!10代目は偉大なお方だ、てめぇとは違う!」 何が違うって言うんだ。赤点取ってることに変わりはないじゃないか。ちょっとツナのこと過大評価しすぎじゃね? 『10代目10代目ってそんなにツナが好きか!』 「ったりめぇだ!!」 『おい、彼女の前で浮気宣言かよ。わかったよ、2人でイチャコラしてくるがいいよ』 「…!10代目と…」 『え、ガチで?冗談だったんだけど』 ちょ、ほんのり頬を赤くしないで。そんなフラグはいらない。誰も求めてないよ、やめて。ゾワってする、ゾワって! ていうかお前は何を想像してるんだ。とりあえずごめんツナ。全力で逃げろ。 「おおおおオレだって冗談にきま、決まってんだろ!」 『吃りまくりで説得力無いんですけど』 しかも、おの羅列って言いにくくないか?よくそこまで連呼できたな。逆にすごいよ、感心したよ。 「別に10代目とデートしたりとか、ご飯を食べさせあったりとか、夜の営、」 『落ち着け、そして黙れ、自重しろ』 誰もそこまで言ってないし。夜の件についてはアウトだろ。…アウトだろ! 彼氏がバイ疑惑であたし困惑。そういうことに偏見はないけど、浮気は許さんぞ。 「……」 『獄寺の考えてることはよーく分かった。陰ながら応援しといてやるよ。だから、すっぱり別れよう』 「なっ…!」 『いやはや、まさか別れる原因が獄寺の移りゆく恋、しかも禁断の恋とはね』 「いや、だから、」 『でも獄寺とツナお似合いだと思うよ』 主人と犬の関係が。うん、お似合だ。獄寺の忠誠心は見上げたものである。 ツナも初めは戸惑うかもしれないけど、暫くすれば愛着が湧くよ。自分を好きになってくれる人に嫌悪感はそうそう抱かないしね。例外もあるが。 「おい、」 『じゃあ頑張ってね』 「だから…。…っ、オレが好きなのは、なまえだ!!」 『…えー、うん、知ってる』 いやん、ばかん、照れる。 でも獄寺があたしを好いてくれてることは知ってるよ。いや、自意識過剰ではなくね。そりゃまぁ付き合ってもいるわけだし。もちろんそれがツナに向ける愛情とも違うことは承知している。いや、今日の獄寺の吃り方でちょっと見直そうかと一瞬考えたが。 「…は?どういう、」 「上手くいったな」 「リボーンさん!」 『うん、作戦通りだよ』 「どういうことだ?」 『いやね、獄寺があまりにもツンツンするから、たまには好きとか言ってほしくなったのだよ』 「それでオレが手伝ってやったんだ」 流石リボーンくん。獄寺のことをよく分かってる。伊達に家庭教師してないね。 『ありがとね、リボーンくん』 「いいぞ。そのかわり今度エスプレッソ一緒に飲む約束な」 『おけー』 「じゃあオレはまんまと作戦にハマって。…っ!」 顔を手で覆いしゃがみこんだ獄寺。隠しきれてない耳が赤いぞ少年。若いな少年。青春だな少年。…いかんいかん、高笑いしそうだ。 『あらあら、真っ赤になっちゃって』 「フッ…まだまだガキだな」 「だあぁぁ!オレはもう帰る!リボーンさん失礼します!」 もうダッシュで帰った獄寺。あんにゃろ、あたしには挨拶なしか。それにしてもあそこまで恥ずかしがるなんて。 『リボーンくん』 「なんだ」 『レアな獄寺が見れたからケーキも奢るよ』 「フッ…」 デレるがいいよ (デレて照れまくった獄寺なんてもう当分見れないね) (そうだな) (あー、また見たいな) (そういうと思って写真撮っといたぞ) (…焼増しお願い) (そのかわりツナのファミリーに入ってもらうぞ) (いいともさ) (ファミリーゲットだな) |