02/07の日記
09:01
仔猫番外〜4〜
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カチャ
長いドレスの裾を揺らめかせながら部屋に入ってきた
と、同時にこの部屋に置いていったはずの存在の気配が消えていることにも気づく
いや・・・消えている
という言い方は正しくないかもしれない。
気配はあるのだ。
小さな仔猫の気配は。
その気配の持ち主の存在感が感じられない
自分の入ってきた扉を閉めジュリアは小首を傾げた
この部屋中に立ち込めている臭気
自分が持ってきたコンラートへの手土産に間違いない・・・・けど・・・何故この匂いがこんなに立ち上っているのかしら?
ゆっくりと慎重に部屋を進むジュリアの足元に何かが引っかかった。
腰を折り拾ってみると転がっていたのは酒瓶のようだった。
振ってみると中身は大半零れてしまったようで僅かな水音しかしない。
小さくため息を零しその瓶に貼り付けてあるラベルを手のひらで撫でて見た
微かな凹凸に感じる文字にジュリアの眉が小さく歪んだ。
地場の名産である果実の酒の銘柄
地元ではさほど珍しくはないものだが領内以外流通しているものでもなく特にこの王都では高値で取引されているような酒である
その酒の芳香が部屋中に立ち込めているのだ。
僅かだと芳しいともいえる匂いでもコレほどひどければ悪臭にも近い
その上・・・・
この酒の原料になっている果実の効能をふと思い出しジュリアは頭痛すら覚えた
「ユーリ?ユーリ??どこへ行っちゃったの?」
とにかく部屋に置いていった小さな仔猫を探そうと手にしていた酒瓶をテーブルの上に置き直し、名を呼びかけてみた。
その声に応えるように何処かで小さな動きを感じる
部屋にいるのは間違いないようだ。
その事だけは安心し頭をゆっくりと振り被りながらジュリアはユーリの気配を探す。
「どこなのかしら?かくれんぼしているのかしら?ユーリ?」
いつもなら彼女の呼び掛けに応え愛らしく啼きながら擦り寄ってくる仔猫なのだが・・・今日はそんな様子もない。
ジュリアの動きを読み部屋中を動き回っている・・・そんな感じなのだ。
ただ通常猫でも存在しないであろう場所を素晴らしく早いスピードで移動している・・・様子は感じられる
いつも元気に動き回ることが大好きな仔猫ではあるけど・・・にしてもこの動きは尋常ではなく。
そのからかっている様な気配にジュリアは苦笑するしかなかった。
どうしてそういうことになったのかはわからないけど・・・・
どうやらユーリはこの部屋中に立ち込めている匂いの元にやられてしまっているらしい
さてどうしたものかしら?
う〜ん・・・と考え込むジュリアの背後で扉が開いた
「どうしたんだ?ジュリア・・・・・ッゲ?!」
後頭部に突如襲い掛かってきた衝撃にジュリアよりも僅かに遅れ部屋に入ってきたアーダルベルトは驚いた
自分の後頭部に手を廻すとそこに張り付いたものをむんずと掴みかかる
「ミメェッ!!!!」
小さな抗いの訴えも含まれた悲鳴が上がる
「ユーリ?!おっめぇ何してるんだ???」
「メッメッッメェ〜〜〜!!!こらっ!そんなに暴れるな!!いってぇ!!痛いって!!お前の爪は薄くて鋭いから痛いんだよっ!!」
「メェ!!メェェ!!〜〜」
『放せ!!放してよぉ!!バカアーダルトォ〜〜〜!!バカマチョ!はぁなぁせぇ〜〜〜〜!!!』
そんな意味で喚いているかどうかは知らないが・・・・
自分の手の中で暴れ捲くっている小さな漆黒の存在を雑に扱うわけにも行かず躊躇いつつ情けない表情で自分の方に助けを求めるアーダルベルトの視線を感じつつ
ジュリアはジュリアで苦笑するしかなかった
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