02/16の日記

21:53
贈り物〜ヴァレンタインSS〜
---------------
本命チョコの一つも貰ったこともない立場なの癖に
なんとも大それた一大決心を自らに下しちゃっている辺り
なんだかんだなんていってもなんていっちゃっても
もはや後戻りの出来ないところに来ちゃってたりなんかしちゃったりするんだよなぁ

って一体何を言いたいんだぁ〜〜〜〜〜!!!俺?!




脳内トルコ行進曲状態に悶えつつ頭を抱えているユーリは手にしっかりと握られているのは艶やかな光沢眩しい包装紙の包み

実はつい先ほど狂気なほどの熱気に包まれた“ヴァレンタイン特設会場”という名の修羅場をくぐり抜けてゲットした戦利品だったりする。


女の子でごった返す会場内に紛れ込みなんとか手に入れた某高級チョコ
もっとも・・・彼のお小遣いで買えるようなチョコはほんの知れたもの。
宝石の如く扱われた一口大のチョコ粒が3個ほどお行儀よく並んでいる小さな小箱

彼の好みに合うであろう少しビター気味なそれの存在を知って手に入れるまでどれほど悩み苦しみ恥も外聞もかなぐり捨てたか・・・・
(というほどのものでもないが)


何はともあれ・・・ようやく手に入れたそれを手にしたのはいいが・・・どうやって渡すべきか・・・
かの君は水面の向こうの世界の彼方

自らの意思でどうこうなるというものでもない
(いや・・・・今や自らの意思である程度自由に行き来することは可能なのだが・・・・
如何せん現在此方の世界の学年末テストの真っ最中。とにかくコレだけはクリアしないことには



「あっちへは行くに行かれないというのが君の今の現状・・・ってのは判ってるよね?渋谷?」

「判ってるよぉ・・・だから毎日村田さまにはお世話になってますってことも」


「判っていて抜け出してしっかりバレンタインチョコをゲットしているなんて・・・余裕のよっちゃんだね?君も」

「なんだよ?それ・・・・よっちゃんって誰のことだよ?」

「昔の魔法使いの少女の友人だった子のこと・・・じゃないってことは確かだね?」

「・・・だから誰だよ?」


んなことはどうでもいいが・・・・・

「決死の思いで手に入れたソレを早く届けたいのならば明日の試験ももう一踏ん張り頑張って
何とか合格ライン突破でクリアするしかないってこともわかってるよね?」

「判ってはいますって・・・・ば」

はぁ・・・・

肌寒い公園の池の辺に佇み小さく吐息を零したユーリの目の前に・・・・


ふわり・・・・・
池の中から白い花が一輪・・・・浮かび上がってきた


「え?」
驚き瞠目するユーリの目の前でもう一輪・・・・
池の底から浮かび上がるようにふわり・・・・・

「おや?」

村田も驚いたように身を乗り出す

気づけば二人の佇む池の水面に浮かぶ数輪の白い花弁・・・・
それはバラの花にも似ていて・・・だが否なるもの

でも・・・その花をユーリは知っていた
自分の帰るべき城(ばしょ)に咲き誇っている・・・・麗しい人に相応しき名を持つ華

そして・・・それらの華にそっと混じるようにひっそり浮かぶのは・・・
蒼き小さな花


「コンラッド!!」

思わず端に縋るように池の中を覗きこむと・・・

揺らめく水面の向こうに浮かぶ今一番逢いたい人の姿



「コンラッド!!コンラッド!!」

思わず叫ぶが・・・此方の声はあちらには届かないらしい

いや・・・覗くユーリの姿もコンラッドの方からは見えてはいないようだ

だが・・・少し寂しそうな笑みを浮かべる水面の向こうの彼は愛しげに華を捧げている




「コンラッドぉ・・・・・」

どうしてそんなに切なそうなの?
一体誰にそんな顔で華を捧げているの?



「君に決まってるじゃないか?」

何を今更言ってるんだ?

大げさなほどのため息を吐いた村田は軽くメガネのブリッジを指先で直す

「欧米ではヴァレンタインには自分の大切な人に花を贈る習慣があるんだよ。ウェラー卿の地球情報は大まか欧米仕様だから
きっとヴァレンタインの贈り物を贈るつもりで此方の世界に花を贈ろうと考えたんじゃないかな?・・・もちろん」



見下ろす眼鏡越しの視線が傍らで跪き不安げな眼差しで見上げてくるユーリの視線に優しく絡まる

「此方の世界の・・・君にね」

「花?」

「そう」

「・・・・・チョコじゃないのか?」


「・・・・・チョコを武器に女の子が告白大会を繰り広げるのは菓子メーカーの戦略にわざわざ引っかかってる日本人だけ!
基本ヴァレンタインは男女関係なく恋人や大切な人に愛を誓う日なんだよ?」


友人の言葉にユーリは自分の足元にたどり着いた花を一輪拾い上げるとそっと唇に触れた

甘く芳しい・・・それでいて爽やかな香りが鼻を擽る
それはどこか彼の人の胸に包まれているときに感じる匂いにも似ていて・・・・

鼻の奥がつんと痛くなる


「なぁ・・・村田。今ここからコレ・・・あちらに贈れるかな?」
元々いつあちらに流されてもいいように包みは防水仕様にしてある

「・・・・そうだね・・・今なら眞王の魔力であちらとつながってることだし・・・・問題はないんじゃないかな?」

ニッコリと微笑み返されユーリは大きく頷くと水面の向こうへと包みを送り出した





突然現れた贈り物に驚く最愛の獅子の姿を想像しながら・・・・・。

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ