long story

□光の魂<第一章>
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「よぉ!!ひっさしぶり!!」

横開きの自動ドアが開いた瞬間に会場に声が響いた。
その声に会場にひしめいていた
(といっても居酒屋の和室の一室なのだから差ほどは広くもないのだが)
人々は・・・・
声の主を認めると会場を包んでいたざわめきが一瞬静まりかえった。

俺、渋谷有利 村田健両名はその沈黙に一瞬たじろいだ・・・が、俺は引きつった顔のまま・・・・もう一人は至って冷静な表情のままともに右手を挙げ「やぁ」と言葉をこぼす。

「渋谷ぁ〜!!村田ぁ〜!!」
次の瞬間ドワッと湧いた。

「お前らぁ!一体どこに雲隠れしていたんだよぉ」「連絡も全然取れないし・・・マジに心配していたんだぞ」
などという声とともに俺たちはあっという間にもみくちゃにされた。

近くにいた人物が「まぁ駆けつけいっぱい」と俺たち二人にグラスを手渡してくれてビールを注ぐ。

「二人ともどこかに留学したッて噂は聞いたけどさ・・・・全然行方知れず状態だったし・・・・実家経由で今回のクラス会の連絡を送っておいたけど・・・・無事にお前らに届くのか本当に心配していたんだぜ」

「ごめんな・・・・」

俺は首をすくめすまなそうに微笑んだ。

『留学』というのは・・・この世界から留守しがちな俺たちのために親父達や地球の魔王陛下・・・ボブさんたちが
でっち上げてくれた言い訳で・・・・世間ではそういうことで通っていた。

優秀だった村田ならイザ知らず・・・・ごく平均的(加えて勉学嫌い)な高校生だった俺が一緒の地に留学した・・・という話題は、当時友人内でかなり疑問を持って迎えられたらしい・・・・がそれを確かめる術など当然ない。

『留学した』と語る親達の言葉だけが現実なものとなって存在する形になっていた。


「ちょっと遠くの国に行っていたんだよ・・・・でもちゃんとこうして来たんだし・・・・文句ないだろう?」

「しかし・・・本当にベタだねぇ〜・・・・成人記念のクラス会かい?」

中学時代と変わらず口が悪いというか・・・・冷めた口調の村田に周りの連中は「相変わらずなヤツ」と苦笑する

「ベタって言ったってな・・・こういう機会くらいしか集まれやしないだろ?就職している奴らや短大をこの春卒業って連中はちょっとやそっとではやっぱり集まり難くなるしさ・・・・」
「そうだね・・・・うん・・・・こういう機会しかない・・・か・・・」

少し俯きクスッと笑う村田に周りのほうが「なんなんだよ?」と一瞬引く

「しかし・・・・」

気づけば俺たちの回りには人だかりが出来ていた
そりゃまぁ・・・・こっちは本当に久しぶりだし・・・・中学時代の友達に逢うのなんか・・・数年ぶりだからなぁ
が、次の瞬間

「渋谷は相変わらずというか・・・・ちっこいなぁ〜」
の言葉に思いっきり打ちのめされた。
「ちっこいっつぅな!!俺だって・・・気にしてるんだからな」

思わず頬が膨らむことが、子供っぽい癖・・・というか表情になるとわかっていても・・・・ついやってしまうのは・・・・
いつも一緒にいることの多いヤツの所為だと思う・・・・・。
あいつの口調に思わず膨れてしまう・・・・のが原因で幾つになってもこの癖が直りきらない。


哀しいことに・・・・・俺の体格は15歳で中学卒業時よりとさほど変わってはいない。
まずは身長は多少伸びたのだが・・・・
それでも165あるくらいか?
下手な女の子より背が低いのは哀しいぞ?かなり・・・

その上身体の線も確実に他の同年代平均的男達よりも確実に華奢で・・・・腰など情けないほどに細い・・・・
俺を護ってくれるヤツはいつも「抱きかかえると折れてしまいそうで恐いくらいですよ?」と苦笑してくれる。

確かに高校にはいって草野球チームを設立しせっせと体力増強を兼ねてトレーニングに励んできたのだけど・・・
同年代の男たちに比べあまりに筋肉が乏しい。
これでも一応・・・・筋肉増強を目論んでいたわけなのだが・・・・その結果が伴っていないという哀しい状態
何とかウェイトだけでも増やそうと試みたこともあるんだけど・・・・徒労に終って・・・・

顔が童顔なだけに・・・・貧弱な体格に情けない思いをしているのが実情である。
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