long story

□光の魂<第7章>
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薄暗さばかり目立つ室内・・・・・




濃緑の深い色合いの厚い生地に一面金糸で刺繍を施された重々しいカーテンに隠された
暗い空間に何者かの息遣いが感じ取られる
それを護るようにカーテンの傍らに立つ仰々しいなりをした・・・・視線の鋭い男が一段下を見下ろしている。

視線の先には・・・こちらも仰々しい・・・高貴な衣装を身に纏った・・・・男が床にひれ伏していた。

顔に刻まれた皺が深く幾重にも重なってる・・・・一見初老の域に達していそうなその容貌・・・・
髪にも白いものが目立つ。

苦悩に満ちたその様子を見るともしかしたら・・・
見た目ほど年齢を経ていないのかもしれない。


「・・・・・わかったか・・・・」

と蔑むような視線を受け止める男の顔は緊張からか・・・
顔は硬直し血色も優れない。

床に頭を垂れひれ伏し身体を蹲らせたまま
ただ・・・視線も上げることも声を出すことも出来ず
額から噴出すほどの冷や汗を拭うことすら忘れた身体は小刻みに震え続けている。

カーテンの傍らに立っていた男はゆっくりと足を進めて壇を下りてゆき・・・床にひれ伏す男のすぐ眼前に膝を落とし・・・・・
静かに・・・・だが相手を威圧するような低い声で囁いた。

「そんなに震えずとも好い・・・・我が国と貴公の国は密約にて結ばれた・・・いわば同盟国だ。
それほどかしこばらなくとも・・・・貴公と我らは一蓮托生・・・・ともに手を取り合った仲だ」



闇がかる・・・・・カーテンの陰が僅かに揺れ相手がクスリと笑った気配を感じ
男は一層震え上がる。



目の前の・・・・カーテンの陰に君臨する相手が微笑むときほど恐ろしいものはない・・・ということを
男は知っていた。

カーテンの陰の誰かと男は僅かに目配せあい・・・・再び床にひれ伏す男へと視線を移す


「貴公の大切なご家族は我が国で賓客として丁重にもてなさせていただくから安心するがよい・・・・
と、陛下はおっしゃられてる・・・・よかったな・・・・貴公の働き次第では貴公の国の未来が補償されたも同然ではないか」

大げさに・・・両手を広げる男に答えることもできず・・・・
床にひれ伏したまま男はただ・・・床についたままの両手の拳が真っ白になるまできつく握り締めた。


そのとき・・・・
カーテンが僅かに動き、絹擦れの音が零れた。
カーテンの影に白く細い繊細な指先に・・・真っ白な多弁な花が彩られている



「・・・・・花は露を湛えている方が美しいよ?特に絶望に満ち満ちたほうが美しさが増す・・・・
その美しい花を手折るとき・・・・・・どんなにか可憐だろうね?」




グシャ・・・・・・・・


可憐な花びらが床に舞い散った・・・・・・・。
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