01/18の日記

01:00
仔猫物語〜番外編2〜<−1−は昨日日付
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軽く響く扉の音に耳をピクリと蠢かしたユーリはそのままクイッと首を伸ばすように身を起こす


『コンラッドいないのに・・・何かな?』

この部屋の主が不在の今
この部屋を護るのは自分だ・・・とばかりにユーリは警戒心むき出しに耳をそばだてる。

軽く響く扉を叩く音は数度続いたかと思うと、カチャリという音と共に開け放たれた



シャァッ!

小さな獣が威嚇しようと漆黒の毛並みを逆立てた

が、次の瞬間

「ユーリ?いるのかしら?」




めぇぁ?!


『ジュリアさん?!』

ひょっこりと扉の影から覗き込み室内に滑り込んできた女性の姿にユーリの気迫は削がれてしまった。

いや・・・
むしろ歓迎の意を持って迎え入れたのだ


『ジュリアさん、ジュリアさん!いらっしゃい!!どうしたの?なんでここにいるの?アーダルベルトは??』


めぇめぇめぇめぇ!!

ふわふわで心地のいい寝台から飛び出してきたユーリは入ってきたジュリアの足元を鞠のように跳ねながら纏わりつき始めた



「ユーリ、ユーリ元気なのはいいけど少し落ち着いてくれない?さぁ・・・私の手に来てくれないかしら?」

主であるコンラートを除きユーリにとって尤も信頼のできる人の一人であるジュリアは足元を跳ね回る元気な仔猫の様子に苦笑しながら膝を折り手を差し伸べた。

ジュリアの空色の瞳は光と影しか映さない


あ・・・
とその事に想い至ったのか・・・元気に飛び跳ねていた仔猫は一瞬その黒曜石のように煌めく丸い瞳を見開いたかと思うと罰が悪そうに尻尾を竦めながら
ジュリアの手に近づくと『ごめんなさい』とでも言いたげにペロリ・・・
その白魚の如き細い手のひらを小さなピンク色の舌先で舐めた


「いいのよ?そんなに気遣わなくても・・・」

ニッコリと笑ったジュリアはいたたまれなさそうに足元に蹲ったユーリの小さな身体をひょいっと抱き上げてそっと頬を摺り寄せた

「アーダルベルトがコンラートに用事があるからってここに来るからって聞いて便乗して付いてきちゃったの。
だって・・・グランツ領ってここよりもずっと雪深くってつまらないんですもの。ここなら貴方だっているからちっとも退屈しないわ。ね?ユーリ?」

めぇぁ〜〜〜〜♪
トロン・・としてしまいようになるジュリアの温もりに包まれながらユーリは嬉しそうに一啼きするとジュリアもまた嬉しげに微笑む

甘い・・・春のようなジュリアの香りの中に微かに魅惑的な何かの匂いが混じっていることに気づきユーリは鼻をひくつかせた



めっめっめぇ〜〜〜

「あら?気づいたの?」

何かに気づいたように腕の中でジタバタするユーリをそっと傍らに下ろしたジュリアが腕にかけたままだった小さなバスケットをテーブルの上に置くと
ユーリもまた興味深げにトンとテーブルの上に飛び乗り中を覗きこもうと首を伸ばす

その様子の気配にクスリと微笑みながらジュリアが開いたバスケットの中から零れだしてきた蟲惑的な芳香

ユーリの視線の先には・・・
バスケットのそこにチンマリと収められた琥珀色の液体を湛えた瓶

その瓶の封印から零れるように香る匂いにユーリの五感は蕩けるようにクラクラする



「それはコンラートへのお土産よ?
こちらがあなたへのお土産。この焼き菓子でお茶をしながら二人を待っていましょうね?」



トロンとした瞳で覗き込んでいたユーリの目の前でバスケットのふたはしっかりと閉じられてしまった。

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