人外と人界

□第二話
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「―と言う訳だ、世話になる」

「ふむ……帰れんとは不便な話じゃの」

「俺は別に困らねえ」

「おぬし以外の誰かは困らんのか?」

「そういった意味を含めて困らねえのさ」


場所は安倍邸。あれから仕方なく邸に連れて行く事にした昌浩は、帰邸して早々に祖父の部屋を訪れ、事の経緯を説明し現在に至る。

昌浩の祖父は稀代の大陰陽師と称される安倍晴明で、彼は少々難しい表情で目の前に座っているアビスと話をしていた。

別次元に住んでいて、争いの最中に生じた歪みによってこの世界へ飛ばされたと言うアビス。俄には信じがたい話だが、彼が可愛がっていると言うクレイがキメラと呼ばれる合成獣だという話は、耳を疑いそうになるけれど確かに晴明達の知る生き物ではない。

それはアビスにも言えることだが。


「案ずるな、世話になるからには迷惑もかけねえからよ」

「うーむ…そんな心配はしておらんが……まあ、帰れるまで居れば良い」

「恩に着る」


そう言って頭を下げるアビスに気にするなと笑う晴明。
しかし、アビスには言っておきたい事があるのだ。


「さっきも言ったが、必ずしも帰れる訳じゃない。それに、俺が居なくとも誰も困りゃしねえよ」

「おぬしがそう思っておるだけではないのか?」

「そうさな……私利私欲に俺を宛てにする様な連中なら腐るほど居るが」


うんざりしている様子から本当にそうなのかもしれない。

だが疑問もある。


「宛てにするって、アビス偉い人?」

「さあ?どうだったか」

「……でも、今の言い方だとそれなりに偉い様に聞こえるけど…」


はぐらかされるのが嫌なのだろう。不服そうな昌浩を見てアビスは小さなため息を吐いた。


「少なくとも、利用される程度の位置には居たがな」

「利用されてたの?」

「俺が利用されるように見えるか?」

「見えない」


この返答を聞いてアビスは当たり前だと不敵な笑みを浮かべた。


「色々と気になるのは解るが、いい加減に寝ないと明日に響くぞ」

「あ…」


この言葉を受けた昌浩は祖父の部屋から退室し、茵に入って寝ることにした。
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