一話物語
□拍手ログ
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―それは今よりも昔の話。
木々生い茂り、穏やかに流れる風。
静かに流れる川、暖かく降り注ぐ陽射し。
大きく聳える山。
その山にある深い森。
その奥地、誰も足を踏み入れることのできない、奥深い小さく拓けた木々に囲われた空間。
そこには人が二〜三人座れるくらいの岩が一つあり、長く伸びた草が茂り、色鮮やかに咲き誇る花と優しく照らす太陽の光があった。
生き物達も訪れる、この暖かな空間。
中央にある岩の上で、陽射しを受けて眠る小さな存在があった。
淡い茶色の髪、白い肌。
長い睫毛、形の良い唇。
華奢な体付きに、幼さを感じる寝顔。
この山に唯一いる人。
否
子供。
安心しきったように眠る、小さな子供の周りには、生き物達も安心しているように眠っていた。
この穏やかな時間が崩れるのは、平安時代のお話。
―それは今よりも昔の話。