己の道を突き進め
□過去三話
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「嫌に決まってるだろう。」
晴明の申し出に壊人は見て分かるほどの嫌悪を顕にしていた。
それもそうだろう。壊人は集落跡へ入ると拒絶され、奥まで踏み入ることが出来ないのだ。
それなのに目の前にいる陰陽師は同行しろと言いだしたのだ。壊人にしてみれば嫌なことこの上ない。
「しかし先程も言ったように一筋縄ではいきそうにないのだ、山を守り続けてきた貴殿の助力なくして邪気を祓うことは不可能なのだよ。」
「不可能だと?」
はっきりと断言した晴明に訝しげな眼差しを向けた壊人。
晴明は真剣な表情で首肯した。
「強い霊力を有する者を拒むのではなく、貴殿だけを拒んでいる邪気の根源。察するに、あれを完全に滅し浄化できるのは貴殿のみ。故に貴殿だけを拒んでいるのではないか、と私は考えている。」
自分を消し去ってしまうような者を恐れるが故の拒絶。
晴明はそう考えていた。そしておそらくその考えは間違ってはいないはずだ。
壊人はしばし黙考した。
自分がこの山を穢している邪気の根源を浄化できるなど突然告げられて、戸惑わないわけが無かった。
第一、浄化云々以前に自分は集落跡の奥にすら踏み入れないのだ。どうやって浄化など出来るというのか?
そんな壊人の考えを見透かしたかのように晴明が告げたのは、他人事にも聞こえるような事だった。
「――気を確かに持っていれば奥まで踏み入ることくらい出来るだろう?」
それは暗に、早く済ませたいからしっかり気を張れ。
そう言っているも同じだった。