己の道を突き進め

□過去四話
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奥へと進むにつれて壊人は口数が減っていた。
神将や晴明が声を掛ければ答えるが、必要以上の事は話さなくなった。

おそらく邪気のせいなのだろう。口にこそ出さないが表情は険しく苦しそうだ。

それでも歩けているのは、此処へ入る前に晴明が施した何らかの術のおかげだと言えるだろう。
それと壊人自身も気を張っている証拠でもある。


集落跡の中央付近を過ぎた辺りで、不意に壊人が足を止めた。
少し前を歩いていた三人が気付いて振り返れば、鋭い眼差しを向けてきていた。

晴明達にではない、彼らの背後を見据えているのだ。その先にあるのは邪気の根源たるものが在る小屋。

何を思って足を止め、先を見据えるのか晴明や神将にはわからなかった。



「如何された?」

「…………いや、気にしないでくれ。」


視線を外した壊人はそう言って晴明を見上げた。
行きたくないと言い出すのではないかと思っていたが、目を見ればそうではないことがわかった。

おそらく此処まで来たので腹を括ったか何かなのだろう。
晴明は何も言わずに頷いて前を向くと再び歩きだした。



壊人は向かう先の小屋から強く濃い邪気を感じていた。あそこが根源なのは間違いない。

晴明が自分にしか出来ないと言っていたが、果たして本当なのだろうか?
もし、自分が出来なかったら?
そこまで考えて思考を中断させた。

何もせずに出来ないと思うのはやめだと決めたばかりではないか。
それに、晴明や神将が居るのだから自分の不足くらい容易く補ってくれるはず。

余計な事は考えず、自分の出来ることを自分なりにやろう。
そう改めて決意すると壊人は今以上に気を引き締めた。
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