gift

□A HAPPY NEW YEAR!
1ページ/2ページ

ふっ、と顔を上げた。暗くなった室内、飲みかけのグラス。どうやらいつの間にか寝ていたらしい。


「やば」


時計を見ればすでに短い針が2の数字を回ろうとしていた。年は既に変わっていた。
覚醒した身体が部屋の寒さに震える。やってしまった、と髪をかきあげる仕草は苛々した時の彼女の癖。セーターにジーパンという出で立ちに、コートを引っつかんで家を出た。



***




「は、はろぅ、シリウス」


目の前の整いすぎている顔が呆れたように彼女を見た。鼻の頭を真っ赤にして、肩や頭にはうっすらと雪が積もっている。


「何時間待ったと思ってる」


ガチガチと歯をならして彼、シリウスは言う。


「うーん、30分くらい?」

「4時間だ馬鹿」


冷えきった手を擦りあわせて息を吹きかけるが、最早意味をなしていない。その姿に思わず笑みがこぼれた。


「何笑ってんだ。俺は4時間も此処でお前を待ってたんだぞ」

「諦めて帰ればよかったのに。そこら辺の開いてるカフェに入ることだってできたのに。むしろ魔法を使えよ魔法使い」

「カフェなんて1人じゃ入れねぇよ。てか杖忘れた」


阿呆でヘタレな彼が眉間を寄せたことで、やっと彼女は眉じりを下げて謝った。


「ごめんね」

「できれば魔法で暖めてほしい」

「うん。でも私も急いで出てきて杖忘れたの」

「…」


にっこりと笑う。しかしその彼女を見てふと気づく。明らかに自分より薄着で、寒さが厳しいイギリスで死に急いでいるようにしか見えない。


「っくしゅ」


案の定寒そうにくしゃみを1つ。今度はシリウスが頬の筋肉をふっと緩めて笑った。


「これでどうだ?」

「む、」


シリウス自らコートの前を開き、その中に彼女を納める。寒い、けれど心地好い。


「…歩きづらい」

「うん」

「…ありがと」

「おう」


白く一面に積もった雪に、誰もいない通りに2人分の足跡をつけた。


「そういえば、シリウス、」




A HAPPY NEW YEAR!





(今年もよろしく!!)
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ