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□A HAPPY NEW YEAR!
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ふっ、と顔を上げた。暗くなった室内、飲みかけのグラス。どうやらいつの間にか寝ていたらしい。
「やば」
時計を見ればすでに短い針が2の数字を回ろうとしていた。年は既に変わっていた。
覚醒した身体が部屋の寒さに震える。やってしまった、と髪をかきあげる仕草は苛々した時の彼女の癖。セーターにジーパンという出で立ちに、コートを引っつかんで家を出た。
***
「は、はろぅ、シリウス」
目の前の整いすぎている顔が呆れたように彼女を見た。鼻の頭を真っ赤にして、肩や頭にはうっすらと雪が積もっている。
「何時間待ったと思ってる」
ガチガチと歯をならして彼、シリウスは言う。
「うーん、30分くらい?」
「4時間だ馬鹿」
冷えきった手を擦りあわせて息を吹きかけるが、最早意味をなしていない。その姿に思わず笑みがこぼれた。
「何笑ってんだ。俺は4時間も此処でお前を待ってたんだぞ」
「諦めて帰ればよかったのに。そこら辺の開いてるカフェに入ることだってできたのに。むしろ魔法を使えよ魔法使い」
「カフェなんて1人じゃ入れねぇよ。てか杖忘れた」
阿呆でヘタレな彼が眉間を寄せたことで、やっと彼女は眉じりを下げて謝った。
「ごめんね」
「できれば魔法で暖めてほしい」
「うん。でも私も急いで出てきて杖忘れたの」
「…」
にっこりと笑う。しかしその彼女を見てふと気づく。明らかに自分より薄着で、寒さが厳しいイギリスで死に急いでいるようにしか見えない。
「っくしゅ」
案の定寒そうにくしゃみを1つ。今度はシリウスが頬の筋肉をふっと緩めて笑った。
「これでどうだ?」
「む、」
シリウス自らコートの前を開き、その中に彼女を納める。寒い、けれど心地好い。
「…歩きづらい」
「うん」
「…ありがと」
「おう」
白く一面に積もった雪に、誰もいない通りに2人分の足跡をつけた。
「そういえば、シリウス、」
A HAPPY NEW YEAR!
(今年もよろしく!!)