PRESENT

□過保護?
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「おう。珍しいな」

「ブレダ少尉」


外に出て一息ついていると、背後から声をかけられる。
振り返れば、堂々たる体躯の士官がそこに立っていた。
身長差が激しいので、見上げる羽目になるのだが、その顔色はいつも以上に悪いように見える。
いつも倒れそうな顔色だが、それに三割増したような気がした。
そんな顔で振り返られたら、どうしたんだと言いたくもなる。


「うおっ!?何だその死顔は?!」

「…そんなに酷いですか?」

「あの世から帰ってきたような面だ」


ファルマンは壁づたいに背中を預け、蹲るようにしてその場に座り込む。
つられるようにしてブレダも隣に腰を下ろした。
煙草に火をつけると、随分と精神的にも肉体的にも疲れきっているらしい横顔を、じっと眺める。
長い前髪が目元を多い隠し、嫌応なしにやつれた雰囲気をかもし出す。
ここ最近、まともな会話をした覚えがない。
書類整理が得意なこの男。
見る限りで回される書類の量も、他より二倍ほど多いと見えた。同情などは出来ない。
恐らく同情される以上に、この男は労いの言葉を欲しているからだ。


「お疲れ。吸うか?」

「…いえ、遠慮します」


煙草よりは、休息が欲しいのだろう。
睡眠欲がないとすら思えるファルマンだが、さすがにそれも有り得ない。
先ほどからウツラウツラと首を落としている。
陽気は暖かく、眠りを誘うには十分だ。
だが、この場所で眠りに落ちられては、ブレダとしても困るところ。




―――あ…―――


「なあ、ファルマン」

「はい…?」


顔色は青いが、どこか苦しそうにしているファルマンに、ブレダは気が付いたようにして声をかける。
距離を詰めると、前髪を掬い上げて額に手を乗せた。
驚いたようにピクリと反応を返したが、心地良さそうに瞼を伏せる。


「―――微熱、か?」

「少し。あるかもしれません」

「だろーよ。普段の体温よりは高いな」

「―――あー…少尉の手が気持いいです」
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